読書リハビリ:ベスト・エッセイ2025
ベスト・エッセイという本をご存知だろうか。
日本文藝家協会が編纂している、前年に発表されたエッセイを厳選して収録した単行本である。
文芸誌や新聞などに掲載されたエッセイから厳選されているので、それはもう良い作品ばかりである。
好みもあるけど、2024、2025と通して読んでみて満足感があるので間違いなくおすすめの本である。
新宿の紀伊國屋書店にはベスト・エッセイコーナーがあり過去のものも並んでいたので、これまたお薦めです。
そんなベスト・エッセイの中で特に好みの作品をいくつか挙げてみたい。
読書ということ / 原田宗典
高校時代からの友人二人と久しぶりにあう、煙草の吸える喫茶店に行きモクモクと煙をあげながら昔の文芸家と煙草について話す。
昔の文豪たちの写真にはよく煙草が写っている。
煙草と文学の繋がりが深かったという話から、以下の共通点を挙げる。
文学と煙草は似ている、と私は思っている。どこが似ているか?まず、どちらも嗜好の賜出あること。そして、どちらにも毒であり薬でもある何かが含まれていること。
それから、時代に取り残されているという点も共通している。
確かに文学には何かが含まれているという表現が似合う。
その何かは人によって違うかもしれないが、それを求めて読書を続けてしまう。
また、英文学者の福原麟太郎の言葉も引用される。
一応読み始めて、面白くなくなったらすぐに放り出して、別の一冊を読むことにしている。一冊の本を読み終えることが読書ではない。
本を読んでいる時間を指して、読書というのだ。
積読が増える、なんてことをよく言うけれど、解消するには読むしかなくて、その中でこうして面白くなくなったら他を読めば良いと言う、言ってみれば当たり前のことをすれば良いのである。
何も最後まで読まなくてはいけないと言うこともない。
特に購入した本であれば、それはどう扱おうとあなたの自由である。
映画なんかもそうだけど、最後まで観ないとと言う固定観念を捨てて、「もういいな」と区切りをつけられた方が自分にとって良いことだと、最近は思う。
小さきものへの慈しみ / 川村湊
文芸評論家、川村湊が、恩師である三木卓との思い出を綴る。
エッセイからは恩師、三木卓が温厚な紳士であった印象が伝わってきて、作家である前に人としての魅力を感じることができた。
そして、三木卓が幼い頃に過ごした満州を題材にした小説を多数書いていることなどから、「満州文学」と言う言葉が出てきた。
戦争体験の話とか、満州であれば引き揚げの話であるとかは、それなりに読んだ記憶があるのだけど、「満州文学」と言う括りは考えたことがなかった。
このエッセイの中で少しだけ触れられた作品名を拾って、三木卓の作品に触れてみたいなと思わされた。
呪詛♡ / 岸本佐知子
岸本佐知子は面白い、それは十分に認識している上で、この「呪詛♡」はとても好きな一編だった。
古着屋で見つけてしまった一枚のTシャツに惹かれて購入する。
May you grow like an Onion with your head in the ground!
(お前が頭を地面にめりこませて、タマネギみたいに逆さに生えますように!)
調べてみたら、これはイディッシュ語の有名なののしり文句で、一言で言えば「くたばれ」となるところを、わざわざこういう回りくどい、ちょっと笑える言い方をしているところがいかにもユダヤ流だ。
調べてみるとイディッシュ語はこの手のフレーズがたくさんあるらしい。もちろん英語にもある、では日本語はどうであろうかと疑問に思う。
日本語にはあまりこう言う気の利いたののしり言葉がない、ないなら作ろう、私がとなるのが岸本佐知子である。最高だ。
題材との出会い方も良ければ、そこからの展開も素晴らしくて、感服せざるを得ない。
チェーン店が描く地図 / 最果タヒ
私は幼いころ外食に行くような家庭ではなかったので、外食チェーン店にとても憧れていた。
「外食に行く」というのが非常に稀だったので、家族でそういった店に入った記憶が全くない。
正確に言うと、父が外食を拒否する人だったので家族で出かけても、必ず夕食前には帰宅していた。
チェーン店に気軽に入るようになったのは、自分でアルバイトをしてから、特に大学生になってから以降だった。
だから家族でファミリーレストランに行った話とか、そう言うものに憧れがあった。
自分と相手の人生が全く異なると言う、どうしようもない現実においても、互いを見ることを可能にするのだろう。
昭和の時代、平成の前半とかであれば、見ていたテレビ番組とかになるのだろうけど、多様化した社会において、共通の語彙となりうるのはチェーン店の味なのかもしれない。
そしてそれにまつわる思い出は地域を易々と超えて、世代も超えてくれるのかもしれない。
できればいつまでも味が変わらないといいよね。
メーメー教に入信する / 河崎秋子
ジンギスカンの魅力を私はまだ知らない。
一時期、ジンギスカンが流行った時に会社の飲み会で行ったりしたのだけど、どうせ肉を食うなら普通の焼肉でよくない?と思ってしまう。
そもそも焼肉にそこまでの魅力を感じていないので、それこそチェーンの焼肉店であっても、みんなでワイワイやれば満足できるのではと思ってしまう。
そんなジンギスカンから始まる物語もある。
著者はたまたま食べたジンギスカンでの肉が美味すぎて、羊牧場を営むことを考える。そこまでならあるかもしれない。
が、さらに羊を学ぶためにニュージーランドへワーキングホリデーで向かうことになる。
そうなると、人をそこまで動かした肉もすごいのではとも思う。
そんなニュージーランドでの羊について学ぶ日々は、文章としても読み応えがあり、学びがあった。
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そんな日が来るとは思わずにいた。
終わらないPsychedelic Dreamが明けるかもしれません。