ー起業して成功する人の共通点ー
― Successful Entrepreneurs Have One Thing in Common ―
「経営はギャンブルだ」
そう言う経営者は意外と多い。
確かに、何が起きるか分からないという意味ではそう見えるかもしれない。
しかし35年間商売をしてきた私は、経営をギャンブルだとは思っていない。
むしろ長く続けてきた経営者には、一つの共通点があると思っている。
それは「当てるのが上手い人」ではない。
何かが起きたときにも、次の一手を残している人である。
■ 35年もやれば「まさか」は必ず起きる
私にも何度もあった。
年商1億円まで育てた1号店を、マイカルグループの倒産によって失った。
本社工場として借りた土地では、市街化調整区域の問題が起き、わずか1年で退去。地権者とは初めて訴訟となり、最終的には示談した。
工場への投資も大きく失った。
1号店を移転した先では、都市公団の委託を受けていた不動産開発会社が倒産。また退去となり、内装への投資を失った。
さらに大丸ピーコックのAEON化、その後の店舗再編によって7店舗を失った。
売上にすれば約5億円である。
こんなことを35年前の事業計画書に書けるはずがない。
では、これは「運が悪かった」で終わる話なのか。
私はそうは思わない。
経営者に必要なのは「まさか」を予言する能力ではない。
「まさか」が起きた翌日にも、まだ打てる手を残しておくことだ。
■ 金が必要になってから銀行へ行くのでは遅い
銀行との付き合い方も、その一つである。
預金は、見方を変えればこちらから銀行への貸付である。銀行は集めた資金を貸すことで商売をしている。
ならば借りることも銀行取引である。
会社の業績が良いと、銀行から「借りてください」と言われる。
皮肉なことに、そのとき会社は金に困っていない。
しかし、私はそこが大事だと思っている。
借りられるときに借りておく。
本当に金が必要になり、売上も利益も落ちてから「貸してください」と言っても、銀行の見る目はもう違う。
昔から、
「銀行は晴れた日に傘を貸し、雨が降れば傘を貸さない」
と言われる。
何年経っても、この原則は大きく変わらない。
だから晴れている日に銀行にも商売をしてもらう。
借り、返し、実績を作る。
銀行にとっても取引先になり、自分も必要なときに使える信用を作っておく。
これが私の考える銀行とのWin-Winである。
■ 一つの備えだけでは会社は守れない
もちろん、銀行だけではない。
取引先の倒産には、有料の倒産防止用保険という手もある。
経営環境が急変した場合には、国や県、信用保証協会のセーフティネット保証や融資制度もある。
大企業だから大丈夫とは限らない。
私は実際に、大きな企業が倒れたり、再編されたりしたことで店や売上を失っている。
だから保険も公的制度も、必要になってから調べるのではなく、平時から「何が使えるのか」を知っておく。
そして、それでも会社そのものの存続が難しい場合には、法的な手続きを踏んだうえで、新会社への事業承継や事業再編という選択肢もある。
一つの会社と心中することだけが経営ではない。
残せる事業、雇用、取引先をどう残すか。
最後まで選択肢を持つことも経営者の仕事だと思う。
■ 成功する人の共通点
ここまで書けば、私が「経営はギャンブルではない」と考える理由が分かってもらえると思う。
成功する人は、未来を100%当てているわけではない。
むしろ外れる。
失敗もする。
想像もしなかった事故にも遭う。
それでも生き残った人を見ると、平穏なときに次の一手を作っている。
金が必要になる前に資金を確保する。
銀行との信用を作る。
倒産への保険を考える。
公的なセーフティネットを知っておく。
一つの会社、一つの取引先、一つの場所だけにすべてを預けない。
そして、本当に危なくなれば「何を守り、何を捨てるか」を決断する。
起業して成功する人には共通点がある。
それは「運がいい人」でも、「失敗しない人」でもない。
何も起きていないときに、何かが起きたときの一手を作っている人である。
成功とは、大当たりを引くことではない。
何度「まさか」が来ても、次の一手を打てる状態を失わないことだ。
35年を振り返り、「まさか」を何度も経験してきた私の感想である。
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☑️これからのAI時代には新しい「まさか」。
怖いのは、AIによる人員削減ではない。
AIによって「その会社を間に挟む必要」がなくなること。
これまで仲介や紹介で手数料を得てきた企業ほど、会社の役割そのものをAIに奪われる可能性がある。
今の大企業が、10年後も大企業とは限らない。
私のように大企業との取引を多く抱えた経営者が、これから考えておくべき「まさか」の一つだ。
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