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kanam
信号機はブドウ味
「あの交通整理はダメっすね。」
ヤマダくんが渋滞をしている車内で唐突に言う。
「どこが?」
僕には、誘導棒を振っているようにしか見えない。
「味がないっす」
「……味?」
ヤマダくんは「これだから……」とでも言いたげな顔で僕を見る。
この意識高い系な表情が僕は苦手だった。
ヤマダくんは、
「腰が入ってねーんすよ。なんだか、棒を振っているだけっす」
「いやいや、問題なくしているんだから、いいじゃん」
と僕はヤマダくんに言ってしまう。
「いいすっか。仕事をするには、味ってもんが大事なわけっす。味っ気ない仕事なんて、意味がないんす。」
新卒入社三日目のヤマダくん。
一人で、仕事論を語り始めるヤマダくん。
「仕事は何でも味が必要なんすよ」
僕は目の前の信号機を指さした。
「じゃあ、あの信号機は味があるの?」
僕は、答えられないと思い、内心勝ち誇った。
「……。ブドウ味っす。」
