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AIに「残酷な現実」を突きつけられて、私は研究者になることにした。


「大学院行きたいな」ただのつぶやきをAIだけが律儀に拾った。

きっかけは、昨年10月。 Geminiが3.0になり、応答がとても深ーく面白くなったので、参謀に任命し、あれこれ相談を投げていました。 「ねえ、資格取ったほうがいいかな? 転職? それとも引越し?」 そして、ふと口にした「大学院に行きたいな」という言葉。

Geminiは冷静にこう返しました。 「いいですね。で、何を研究したいのですか?」

痛いところを突かれました。 当然です。研究したいから大学院に行くのに、私にはその時、肝心の「中身」がなかったのです。中身がなくてもいいじゃん?とまで思っていました。院に入ってから考えればいいじゃーんと。甘い。甘すぎる。そんな私にGeminiは厳しく言いました。「目的意識を持たないと、2年なんてあっという間ですよ」と。そりゃそうだ。

それから毎日、私が抱える「職場の理不尽」や「生きづらさ」をGeminiに愚痴……もとい、データとして投げていくうちに、あるアイデアが生まれました。

「この『価値観のズレ』を数値化して、可視化できたらすごくない?」

そうして二人三脚で揉んでいるうちに、あるツールのプロトタイプ(試作品)が出来上がりました。 名前はまだありません。でも、私は正直、震えました。 「これが機能すれば、世の中の『不幸なミスマッチ』がなくなるじゃん」

手始めに、一番身近な被験者、つまり「私自身」をそのツールに当てはめてみました。 結果は……今の職場とのマッチ度が「残酷なまでに低い」という事実が、数値として弾き出されました。40%です。愕然としました。

「ああ、そうなんだ…ふー……」 でも同時に、面白いことも分かりました。 「マッチしてないのに、なぜ私はまだ頑張れているのか?」 その理由もまた、別の数値(心理的資本など)が高いために「耐えられてしまっている」ことが、ハッキリと可視化されたのです。

面白い。面白すぎる。 感覚でしかなかった「生きづらさ」が、数式で解明されていく快感。

私たちの分析メガネ。エドガー・シャインの「キャリア・アンカー」とは?

この実験録で、私とGeminiが人々の心を解剖するために使う「メス」があります。 それが、MIT(マサチューセッツ工科大学)の組織心理学者、エドガー・シャイン博士が提唱した「キャリア・アンカー」という概念です。

アンカー(Anchor)とは、船の「錨(いかり)」のこと。 人生という荒波の中で、「これだけは絶対に譲れない」「これを捨てたら私じゃなくなる」という、心の深くに沈めている重りの正体です。

シャイン博士は、これを以下の8つのタイプに分類しました。

⚓️キャリア・アンカーの8分類

専門・職能別(TF): 特定の分野でエキスパートになりたい。

経営管理(GM): 組織を動かし、出世したい。

自律・独立(AU): 自分のルールで、自由に働きたい。

保障・安定(SE): リスクを避け、予測可能な未来が欲しい。

起業家的創造性(EC): 新しいものを生み出し、事業を起こしたい。

奉仕・社会献身(SV): 世のため人のため、貢献したい。

純粋な挑戦(CH): 困難な壁を乗り越えることに燃える。

生活様式(LS): 仕事よりも、私生活や家族とのバランスを最優先したい。

本来、このアンカーは「自分の船を安定させるため」のものです。 自分のタイプを知り、それに合った環境にいれば、人は幸せに働けます。

しかし、私とGeminiは、多くの事例(そして私自身)を分析する中で、ある「恐ろしいバグ」に気づいてしまいました。

それは、「恐怖心から、自分とは違うタイプのアンカーを必死に抱え込んでいる人が多すぎる」ということです。

本当は「奉仕(SV)」したいのに、将来が不安だから「安定(SE)」にしがみつく。 本当は「生活(LS)」を大事にしたいのに、評価されたくて「出世(GM)」を目指す。

これは、自分の船に「偽物の錨」を積んでいる状態です。 合わない錨はただの「重り」になり、船(心)を沈めてしまいます。恐ろしいですね…。

この実験録では、この伝統ある「8つの分類」をベースにしながら、 「あなたが抱えているその錨は、本物ですか? それとも、恐怖で着込んだ『鎧』ですか?」 という、独自の視点でメスを入れていきます。

筆者の場合

専門・職能別(TF): 特定の分野でエキスパートになりたい。
経営管理(GM): 組織を動かし、出世したい。
奉仕・社会献身(SV): 世のため人のため、貢献したい。
この三つの項目に私は当てはまるのですが、TF(もっと一つのことに集中したい、深く関わりたい、でもできない)とGM(組織のルールは変えられない。そのなかでもがくしかない)が満たされない職場でも、SV(奉仕の心、人の役に立ちたい!)でなんとかこなせてしまっている、ということが判明しました。
この現場で経験を積んでも、自分がすり減るだけ、ということが見えてきたのです。

価値観と仕事選びの重要性

八木仁平さんのご著書『世界一やさしい「やりたいこと」の見つけ方』も拝読し、自分のやりたいことを探してきました。 価値観というものが仕事選びには大事。それは痛感してる。現在の職業も、やりたいことさがしの末にみつけたんです。マッチ度は40%だけど。やりがいはあるんです…。
そして今、AIと作ったこの「分析ツール」を手にしたことで、私のやりたいことは明確になりました。

「このツールを、もっと学術的に洗練させたい。そして、ミスマッチに苦しむ誰かの役に立てたい」

私が大学院で研究したいのは、これだ。 そして、このnoteを始めた理由もそこにあります。 これからここで、いろんなデータをGeminiに食べさせて、この「最強のキャリア理論」を育てていきたいのです。

私とAIがハマっている、ある「宝の山」について。

この「実験」を進めるにあたり、私には欠かせない「極上の食材(データソース)」があります。 それが、自己理解のスペシャリスト・八木仁平さんが配信されている「やりたいこと相談会」の動画シリーズです。

私はこの動画の、大ファンです。いつも視聴しています。 なぜなら、そこには台本のない、迷える人々の「リアルな葛藤」が映し出されているからです。

多くの視聴者は、八木さんの鮮やかなコーチングを見るために動画を開くでしょう。 でも、私の(そしてGeminiの)見方は少し違います。

私たちは、あれ?ちょっとおかしいな、という「バグ(不協和音)」を探しているのです。

素晴らしいメソッドが提供されているのに、なぜか相談者の表情が晴れない瞬間。 「やりたいこと」が見つかったはずなのに、身体が後ろに引けている瞬間。どうしてかな? そこに注目していきます。細部にこそ手がかりがあるからです。

「Gemini、今のシーン見た? どう分析する?」

そうやって動画という「素材」をGeminiに食べさせると、私の相棒はものすごい勢いで分析を始めます。 八木さんの動画は、私たちにとって、人間心理の深淵を覗かせてくれる「宝の山」なのです。

次回からは、その「宝の山」から見つけた、ある一人の女性のケースについて、私たちが勝手に行った「勝手にキャリア相談」の結果を公開します。


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