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メルカリで買った8,000円のルーフボックスが、山梨で「危機」を招いた話。

今日という一日は、私のDIY精神と執念が試される、長く、そして最高にエキサイティングなドキュメンタリーとなった。
すべての始まりは、メルカリで見つけた「TEAM TERZO」のルーフボックスだった。今の製品にはない無骨なフォルム、そして8,000円という破格の値段。山梨での直接引き取りが条件だったが、妻と1歳の子供を連れて、ちょっとした家族ドライブのつもりで中央道を西へとひた走った。
これから待ち受ける「積載の危機」のことなど、この時の私はまだ知る由もなかった。

1. 山梨で直面した、絶望的な「穴」のなさ
山梨の指定場所でついに出品者と対面し、実物のボックスを受け取った。写真以上に格好いい。しかし、喜びも束の間、いざ車に載せようとした瞬間に血の気が引いた。
あまりに型式が古く、専用のクランプ(取付金具)が一つも付いていなかったのだ。
もちろん、事前の想定はしていた。最悪、結束バンドでガチガチに縛り上げれば、東京までの100km超の道程はしのげるだろう――そう高を括っていた。
しかし、ボックスの底面を覗き込んだ瞬間、絶望が私を襲った。なんと、結束バンドを通せるような穴一つ、どこにも存在しなかったのだ。
「積めない。このままでは東京へ帰れない。」
8,000円の宝物が、一瞬にして巨大な粗大ゴミに見えそうになった瞬間、私は即座に近隣のプロ向けホームセンター「コメリプロ」へと車を走らせた。



2. コメリプロでの死闘、そして救世主との出会い
コメリプロの資材コーナーで、私の思考はフル回転していた。結束バンドが封じられた以上、金属のパーツを組み合わせてゼロから「マウント」を錬成するしかない。
私は店内の棚と、駐車場に停めた車の間を、何度も往復した。キャリアのバーの幅を手のひらで記憶し、ボックスの底面の厚みを計測し、再び売り場に戻ってボルトの長さを吟味する。1mmの誤差も許されない現場設計だ。
そこで出会ったのが、運命のパーツ――**「パイプバンド クローム 32φ用」**だった。さらにそれに合わせるべく、M6の六角ボルト、対応するナット、そして荷重を分散させるための20mmワッシャーをかき集めた。本来は建築や配管用のバラパーツだが、今の私には救世主の光を纏っているように見えた。
駐車場でボックスの下に潜り込み、冷たいアスファルトの上で、この即席クランプの試作と修正を繰り返す。指先が寒さでかじかんでいくが、ようやく「カチリ」と手応えがあった。
20mmの大きなワッシャーがボックスの底をしっかり面で支え、M6のボルトがパイプバンドを引き寄せてキャリアを抱き込んだ。揺らしてもびくともしない。その瞬間、私はこの危機を脱したことを確信した。


3. 家族で囲んだ「小作のほうとう」が教えてくれたこと
そんな張り詰めた空気の後、私たちを癒してくれたのは山梨名物「小作」のほうとうだった。
店内に漂う出汁の香りに包まれ、運ばれてきた熱々のほうとうを家族で囲む。かぼちゃの甘みが溶け出した優しいスープが、作業で冷え切った身体の芯まで染み渡っていく。
1歳になる我が子は、広い店内の畳の上を楽しそうに、そして力強く歩き回っていた。その無邪気な姿を見ていると、先ほどまでの焦燥感が嘘のように消えていった。
「パパ、頑張ったね」と言われているような気がして、美味しいほうとうを啜りながら、心の底から「来てよかった」と思えた。この団らんの時間があったからこそ、あの苦労も「良い思い出」に変わったのだ。

4. 帰り道に見つけた、さらなる「最適解」
帰りの中央道、バックミラーに映るルーフボックスの影は、もはや単なる中古品ではなく、家族の旅を見守ってくれる頼もしい相棒のように見えた。
そして道中、私の脳内はさらなるブラッシュアップ案で満たされていた。
「今は六角ボルトだが、キャリアの溝(Tスロット)を活かすなら、AmazonでT字ボルトを注文すれば、もっと完璧に、もっと美しく固定できるはずだ。」
危機を脱した安心感は、すでに次なる創造への渇望へと変わっていた。帰宅後、すぐにAmazonを開き、理想的なサイズのステンレス製T字ボルトを検索してカートに放り込んだ。

5. 不便を楽しむ、ということ
8,000円で手に入れた古いボックス。しかし、今日一日の間に費やした時間、コメリプロでの試行錯誤の汗、小作での家族の笑顔。それらすべてが、この道具に新品の高級モデルを凌駕する「自分だけの価値」を吹き込んでくれた。
ダッシュボードに置かれた銀色のパイプバンドが、街灯の光を反射して、今日という激闘の一日を象徴するトロフィーのように輝いている。
明日はAmazonからボルトが届く。
不便を愛し、危機を愉しみ、工夫で壁を乗り越える。
これこそが、大人の遊びの真髄なのだ。私は今、心地よい疲労感と、最高の充足感の中にいる。

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