【古典邦画】「人情紙風船」

早逝の山中貞雄監督の、1937(昭和12)年の東宝作品「人情紙風船」。Amazonプライムにて。

当時、天才といわれた山中監督は、この映画の撮影中に召集令状が届き、日中戦争に出征、現地で病気に罹って28歳で死去した。従ってこの作品は遺作。同監督の現存するフィルムは3本だけでその1本。

88年も前の作品であり、江戸の貧乏長屋の人々の日常生活を描くのだが、人情喜劇かと思ったら、何とも暗くて哀しい結末の悲劇であった。まさに人情なんて紙風船のごとく軽くて嘘っぱちで、非人情な話が展開する。

貧乏長屋である男の首括りがあり、長屋の住民はお通夜を計画して、大家を説き伏せて酒を用意させる。長屋の連中はタダ酒が呑めると集まって陽気な馬鹿騒ぎに興じるところから始まる。
長屋に住む落ちぶれた浪人は、死んだ父の友人に仕事の口を頼みに行くが、父の友人は恩知らずで邪険に扱われて相手にもしてもらえない…。

貧乏に苦しむ長屋の人々…侍、町人、金魚売り、盲目坊主、髪結い、ヤクザもんなど、一人一人の悲喜交々のストーリーを演出する技法は、28歳の若さとは思えない秀逸さである。

江戸っ子の人情🟰非人情であるが、山中監督の長屋の連中を見る目はとても優しい。しかし、現実は厳しいよということだろう。

仕事の口のことで、妻にも「大丈夫、心配するな」と嘘を付いて苦悩してた浪人が、どうにもいかなくなって絶望、妻共々首を吊って心中するラストはとても衝撃的だった。召集が決まって山中監督はある意味、自暴自棄になったのだろうか?

ドブにフワフワと紙風船が転がってる様のなんとも言えぬ感慨深さよ。


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TOMOKI 脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。