第四章:舞台裏の猫たちと、灯のカフェ
静かな屋根裏、湯気と毛並みと記憶のあいだで、猫たちは灯をともす。
舞台の幕が下りたその向こう側、小さなカフェには、旅立った猫たちが静かに集う。
忘れられた約束、こぼれた涙、そしてまだ言葉にならない祈り。
この世界の片隅で、猫たちは今日も、見守り、灯し、やさしく呼びかけている。
ナレーション(舞台袖の闇より):
舞台がドタバタと騒がしくなるほど、裏方は静かになるものです。
神々のコントが絶頂に達するとき、舞台裏にほんのりと明かりが灯る。
そこには観客でも役者でもない存在が、ふわりと座っているのです。
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黒兵衛(長毛黒猫、鍵開け担当):
「……また人間、台詞忘れてるにゃ。いつものことだけど。」
かつて屋根裏で暮らしていた黒猫は、舞台の構造を誰よりも理解している。
ドアの鍵を開けることも、人の心の扉をこっそり開けることも得意だった。
彼は静かに見守る。アドリブが迷走しすぎないように。
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ポンちゃん(小柄な肩乗り姫):
「どんな脚本でも、美しく生きるって決めてるから。」
病弱ながらも誇り高く、肩の上から世界を見ていたポンちゃん。
彼女は舞台の照明にそっと光を足す。光が強すぎて、誰かが傷つかないように。
ときには猫の姿をして、ときには風のように、観客の涙を拭っている。
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ジャック(片目の見守り番):
「……飼われなかったって、見放されたって思ってないにゃ。
だって、見てたもん。毎日、君が気にかけてくれてたこと。」
舞台裏の最奥、ちょっとだけ影の濃い場所にジャックはいる。
目はひとつだけでも、彼はちゃんと見ていた。愛を、やさしさを、ためらいを。
彼の瞳は「赦す」という行為の意味を、無言で語ってくれる。
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猫たちのひそひそ会議(灯のカフェにて):
黒兵衛:「そろそろ気づくかにゃ? これがぜーんぶ舞台だってことに。」
ポンちゃん:「気づいたらきっと、次の扉が開くよ。あの子、肩があったかいもん。」
ジャック:「……泣くのも、怒るのも、忘れるのも、演技だったにゃ。
でも、ぜんぶ本当だったにゃ。」
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ナレーション(静けさと共に):
この舞台には、誰も知らないカフェがある。
天井裏の奥、光と香りの結界に守られた場所――
そこに集う猫たちは、決して演じない。
ただ、そこにいる。それだけで、舞台が続けられる理由になる。
そして今日もまた、誰かがふと気づく。
**「……あれ、今、肩があったかい」**と。
