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子どもの道具と親の想い

4月になると、毎年恒例の行事が始まります。

「2」に線を付け足して、不格好な「3」にしたり。初めてもらった教科書がうれしくて、精一杯の字で自分で名前を書いてしまったり。
一年でこれほど名前と向き合う月もないのではと思います。

特に思い入れがあるのが、算数セット。おはじき一つ一つ。麻雀パイのような謎の道具や、キューブブロックのようなもの、細長いH字を組み合わせるもの。これら一つ一つに子どもの名前を書く、夜な夜な「名入れタイム」が始まります。

ちなみに、2年生になると九九カードすべてに名入れする必要があります。途中から「お名前スタンプ」なる便利グッズの存在を知り、大いに助けられました。とにかく、我が子の名前を押しまくる。

でも、それは決して面倒くささなどのネガティブな想いが先行するようなものではなく、ポジティブなものでした。


その訳は、忘れられない思い出にあります。当時、小学校高学年だったわたしは知育玩具が好きすぎて、学校のキットで自分なりに工夫した遊び方をするのが好きでした。

そんなある日、ふと遊んでいる手が止まった瞬間がありました。それは、算数セットの一つ一つの部品や1本ずつの色鉛筆に、自分の名前が貼ってあるシールに気づいたときです。

シングルマザーの家庭であるとか、両親がメチャメチャ苦労したとかではないほうだと思います。ですが、常に目の前にあった「名前シール」の存在に改めて注目し、一つ一つ母親が手で書いてくれたんだと思うと、胸がいっぱいになってわたしは泣いていました。

そんなわたしも、今は自分の子どもたちの算数セットに、子どもたちの名前をひたすらスタンプしています。当たり前ですが、私たちが想いを込めた名前です。押し続ける行為は、「記名する」以上の意味を持っていました。

そうした想いをいつか子どもたちにも感じてもらえたらと願っています。
そして、今日もわたしはスタンプのサイズやレイアウトとにらめっこしながら、愛する名前を押し続けています。

了(830文字)


前回の『月刊tote』3月号に続き、三條さんの”4月×暮らしのエッセイ”企画に参加させていただきました!


3月号に掲載いただいたページ

プロフィール

灯火(ともしび)
 適応障害から復職したベンチャー会社員&パラレルワーカー。メンタルヘルスやアート分野を発信中。

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花邑 灯火 @リ・キュレーター 自主企画コンテスト「灯火杯」の賞金や企画、書籍・美術館など“次のnote”の糧にさせていただきます🖋