「小さくなっても、灯を絶やさない」 —患者の権利を支える市民活動—
しばらく前のこと、
久しぶりに東京を訪れ、「患者の権利オンブズマン東京」で一緒に活動してきた市民ボランティアの皆さんと、ランチをご一緒しました。
顔を合わせるなり、持ち寄った手土産の交換から始まり、懐かしい顔ぶれとの会話が弾みました。
けれど、話は楽しいことばかりではありませんでした。
話題になったのは、オンブズマン活動をこれからどう続けていくかということでした。
患者の権利オンブズマンは、医療や福祉の中で困ったこと、納得できなかったことなどを抱える患者さんやご家族の声を、市民の立場で聴く活動です。
私がこの活動に参加したのは2008年。
前年、HSP(東京大学医療政策人材養成講座)で、患者の権利オンブズマンで活動されていた大山正夫さんと出会ったことがきっかけでした。
医療福祉専門相談員として相談会に参加する一方、ニュースレターの編集にも携わるようになりました。
やがて大山さんが役員を退かれ、私がニュースレターの編集を一手に引き受けることになりました。
当時の私は、仕事のほかにも、民生・児童委員、地域住民のための健康ミニカフェ「お達者倶楽部」など、いくつもの活動をしていました。
ニュースレターの構成が徹夜になることも、珍しくありませんでした。
それでも、不思議と苦ではありませんでした。
むしろ、やりがいがあり、生活に張りを感じていました。
なぜ、そこまで続けられたのでしょう。
おそらく私は、相談に来られる患者さんやご家族の声を通して、
「医療の中には、市民だからこそできることがある」
と感じていたのだと思います。
医療者と患者・家族。
同じ方向を向いているはずなのに、対話がうまくいかなかったり、立場の違いから思いがすれ違ったりすることがあります。
そして患者さんやご家族が、声を上げにくくなってしまうこともあります。
そんな時、その間に立ち、まず話を聴く人がいる。
それが、オンブズマンという市民活動の大切な役割の一つでした。
しかし、活動を続けてきた市民相談員の高齢化が進み、新しい世代の参加はなかなか増えませんでした。
さらにコロナ禍によって、直接会って相談を受けることも難しくなりました。
私自身も2020年に浜松へ移ったことで、東京での活動を続けることが難しくなりました。
今回、久しぶりに皆さんとお会いして現在の状況を聞き、私は「残念」というより、やるせない気持ちになりました。
医療が進歩しても、医療者と患者・家族の間のすれ違いがなくなったわけではありません。
だからこそ、この活動の役割も、なくなったわけではないと思うのです。
規模が小さくなったとしても、
必要としている人がいる限り、灯を絶やしてほしくない。
そんな思いが込み上げてきました。
そして私は会食の席で、思わずこうお願いしていました。
「相談会がある時には知らせてください。私も浜松から駆けつけますから」
久しぶりに仲間と会ったことで、自分の中にまだこの活動への思いが強く残っていることにも気づきました。
患者さんの権利を守ることは、医療者だけが担うものではありません。
患者さんや家族だけが声を上げ続けるものでもありません。
医療を受ける側、提供する側、そしてその間にいる市民。
それぞれが関わりながら、よりよい医療をつくっていく。
市民が医療を支える。
そんな活動の灯が、これからも小さくとも続いてほしいと願っています。

