商売の単価は、顧客のどの意思決定を担うかで決まる
商売の根幹について考えています。
なぜ、ある商売は数百円なのに、別の商売は数十万円、数百万円になるのか。
もちろん、原価もあります。
人件費もあります。
ブランド力もあります。
希少性もあります。
ですが、それ以上に大きいのではないかと思っているのが、
「顧客にどれだけ大きな意思決定を求める商売なのか」
という視点です。
たとえばコンビニで150円のお茶を買う。
そこに大きな決断はありません。
少しくらい選択を間違えても、人生にはほとんど影響しません。
気に入らなければ、次は別の商品を買えばいい。
一方で、
住宅を買う。
転職する。
結婚式場を決める。
保険に入る。
企業を買収する。
基幹システムを入れ替える。
数千万円の設備投資をする。
こうした商売になると、顧客が負う意思決定の重さは一気に大きくなります。
失敗したときの金銭的損失も大きい。
時間も失います。
場合によっては、その後の人生や会社の将来まで変わります。
だからこそ、その意思決定を支援する側にも大きな報酬が発生する。
私は最近、
商売の単価は、顧客のどの意思決定を担うかで決まる
のではないかと考えるようになりました。
単価は「作業量」では決まらない
私たちはつい、仕事の値段を「どれくらい大変だったか」で考えてしまいます。
10時間働いたから高い。
30分しか働いていないから安い。
ですが、実際の商売はそう単純ではありません。
何時間もかけて梱包し、発送し、問い合わせ対応をしても、利益が数百円しか残らない仕事があります。
一方で、経営者との30分の会話によって、その会社が数千万円の投資判断を変えることもあります。
作業時間は短くても、その判断によって大きな損失を回避できたのであれば、そこには非常に大きな価値があります。
つまり、
高単価商売とは、たくさん働く商売ではない。
大きな意思決定の近くにいる商売である。
という見方ができるのではないでしょうか。
高単価になる商売には共通点がある
高単価になりやすい商売を眺めてみると、いくつか共通点があります。
まず、意思決定の金額が大きい。
住宅。
不動産。
採用。
M&A。
投資。
事業承継。
システム導入。
次に、やり直しが難しい。
昼食を選び間違えても、明日は別の店に行けばいい。
しかし転職先を間違えたら、数年単位でキャリアに影響するかもしれません。
家を買ってから、
「やっぱり違いました」
と言って簡単に買い直すこともできません。
そしてもう一つ重要なのが、
不確実性が高いこと
です。
未来が完全に予測できるなら、意思決定支援に大きなお金を払う必要はありません。
しかし現実には、
この会社に転職して大丈夫なのか。
この土地を買っていいのか。
この企業を買収すべきか。
このシステムを導入すれば本当に生産性が上がるのか。
正解が分からない。
だから人は、情報、知見、経験、信頼にお金を払います。
乱暴に式にするなら、
単価
=意思決定の大きさ×失敗したときの痛さ×不確実性×必要とされる信頼
なのかもしれません。
低単価商売は「悪い商売」ではない
もちろん、低単価商売が悪いわけではありません。
むしろ大量に買われる商品ほど、一回一回の意思決定は軽くなる傾向があります。
飲料。
日用品。
ゲーム。
動画。
書籍。
コンテンツ。
一件あたりの単価は低くても、流通量が巨大であれば大きな事業になります。
重要なのは、
自分の商売がどの意思決定レイヤーに存在しているのか
を理解することです。
100円の商品を売っているのに、100万円の商品と同じ営業方法を取れば重くなります。
逆に、数千万円の意思決定を支援しているのに、単純作業の料金としてしか請求していなければ、価値の取りこぼしが起きます。
高単価化したいなら、商品を豪華にするより意思決定に近づく
この考え方からすると、単価を上げる方法も変わってきます。
多くの会社は、高単価化しようとすると、
機能を増やす。
資料を豪華にする。
サポート時間を増やす。
サービス内容を増やす。
という方向へ進みます。
もちろん、それも一つの方法です。
しかし、もっと本質的なのは、
顧客の重要な意思決定に近づくこと
ではないでしょうか。
たとえば人材ビジネス。
求人広告を掲載するだけなら、サービスは比較的コモディティ化しやすい。
しかし、
誰を採用するべきか。
そもそも採用すべきなのか。
どのポジションから採るべきなのか。
どんな組織を作るべきなのか。
というところまで入ると、顧客の意思決定にかなり近づきます。
AI支援も同じです。
ChatGPTの操作方法を教えるだけなら、いずれ価格競争になります。
しかし、
会社のどの仕事をAIに任せるのか。
どの業務を消すのか。
人間をどこへ再配置するのか。
組織構造をどう変えるのか。
まで考えるようになると、意思決定の重さが変わります。
メディアも同じです。
ニュースを届けるだけなら、情報はいくらでも無料で手に入ります。
しかし、
このニュースをどう読むのか。
どの数字を見るべきなのか。
何を疑うべきなのか。
どう投資判断にどうつなげるのか。
という「判断力」に近づけば、提供する価値は変わります。
商売は「何を売るか」より「どの意思決定を担うか」
私はこの視点が面白いと思っています。
商売を、
何を売っている会社なのか
で見るのではなく、
顧客のどんな意思決定を支援している会社なのか
で見る。
すると、同じ業界でも全く違って見えます。
不動産会社は家を売っているのではなく、
「どこに住むか」という意思決定を支援している。
人材会社は人を紹介しているのではなく、
「誰と働くか」という意思決定を支援している。
金融機関は金融商品を売っているのではなく、
「お金をどこへ配分するか」という意思決定を支援している。
コンサルティング会社は資料を作っているのではなく、
「会社をどちらへ進めるか」という意思決定を支援している。
こう考えると、
商売の中心にあるのは商品ではなく、
意思決定
なのかもしれません。
入口では、意思決定を小さくする
ただし、ここには一つ面白い逆説があります。
高単価商売ほど大きな意思決定を扱いますが、
顧客との最初の接点では、意思決定を極限まで小さくした方がいい。
いきなり、
100万円の契約をしてください。
では、誰でも身構えます。
しかし、
記事を読む。
SNSをフォローする。
100円の商品を買う。
無料で相談する。
チャットで質問する。
くらいなら、意思決定の負担は非常に小さい。
そこで信頼が積み上がる。
そして、
転職したい。
採用したい。
新規事業を始めたい。
AIを導入したい。
企業と提携したい。
という大きな意思決定が発生したときに、
「あの人に相談してみよう」
となる。
つまり理想的な商売の構造は、
入口は、低意思決定・低単価。
奥に行くほど、高意思決定・高単価。
なのかもしれません。
オーキャリアが担いたいもの
オーキャリアも、この考え方で整理すると非常に面白い取り組みであることが分かります(笑)
記事。
音楽。
SNS。
イベント。
企業紹介。
求人。
移住支援。
人材紹介。
AI支援。
企業同士のマッチング。
一見すると、バラバラに見えます。
しかし、
人や企業の重要な意思決定を、少し良い方向へ動かす
という視点で見ると、一本につながります。
どんな仕事をするのか。
誰を採用するのか。
どの会社と組むのか。
どこに住むのか。
何に投資するのか。
何を学ぶのか。
何をAIに任せるのか。
全部、意思決定です。
そして重要な意思決定ほど、
情報だけでは決められません。
信頼できる人。
過去の経験。
異なる視点。
少し背中を押してくれる存在。
そうしたものが必要になります。
だからオーキャリアは、
何か一つの商品を売る会社というより、
「意思決定の近くにいる会社」
を目指したいなと。
最後に
これから商売を考えるとき、
「何を売れば儲かるか」
だけでなく、
「顧客のどんな意思決定を支援するのか」
という問いを持ってみる。
すると、
単価。
競争優位性。
顧客との関係。
必要な信頼。
営業方法。
いろいろなものが見えてきます。
高単価の商品を作ることが目的なのではありません。
重要なのは、
顧客にとって重要な意思決定のそばにいること。
そして、その意思決定を少し良いものにすること。
商売とは、突き詰めれば、
商品を売ること以上に、
人の意思決定に関わること
なのかもしれません。
そして、真の営業力とは
大きな意思決定を任せてもらえる力なのかもしれません。
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