熟れる交差点
秋が深まる深夜二時、街の交差点は収穫期を迎える。
冷え切ったアスファルトに立つ古びた歩行者用信号機。
赤でも青でもなく、今夜のそれは深い紫色に濡れていた。
誰もが眠る時刻、路肩にひっそりと脚立を立て少女は金属製のフードに手を伸ばす。

「今年も、良い房がついた」
夜霧を吸ってぽってりと膨らんだ発光レンズを指先で静かにもぎ取る。

ぱつんと皮が裂け、交差点の闇に濃密な果汁の香りが弾けた。
口へ運ぶ。
噛み砕いた瞬間、ざらりとしたガラスの冷たさを突き破り、滴るような甘みと、車列が吐き出した微かな鉄の味が舌を支配した。

美味い。
だが、止まらない。
ゴクリと喉を鳴らした瞬間、胸の奥でカチリとリレー回路の音がした。

見上げれば、次の信号がすでに紫に灯り始めている。
今度はどの交差点が熟れるのか。
口元の果汁を拭いもせず少女は次の獲物を求めて夜の帳へと駆け出していた。

画像は猫耳仲間のターニャを使わせてもらいました。
本作は田原にかさんの企画です。
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