“撮ること”は、家族との会話だと思う
——写真に映るのは、“愛情の温度”
「なんでそんなに写真ばっかり撮るの?」
ある日、妻にそう言われたことがありました。
ちょっと照れくさくて、うまく答えられなかったけれど、本当はずっと思っていたんです。
——僕にとって、“撮ること”は会話だって。
言葉じゃ伝えきれない思いを、
写真というカタチにして、そっと手渡す。
それが僕の「ありがとう」や「大好き」の伝え方だったのかもしれません。
◆ シャッターの先に、心がある
子どもが寝返りを打ったとき、
妻が疲れた顔でキッチンに立っているとき、
休日に家族で出かけた帰り道、ふと手をつないで歩いていたとき。
そのすべてが、「話しかけたい瞬間」でした。
「今日もがんばってるね」
「いま、すごくいい顔してるよ」
「その笑い声、ずっと残しておきたいな」
そんな気持ちを、言葉ではなく、カメラを通して伝えていたんだと思います。
だから僕は、写真を撮るとき、その人の“いちばん素”を捉えたくて、いつも静かに待っている。
目線をこっちに向けてくれなくてもいい。
自然な仕草や、ふとした表情の中に、その人らしさが宿っているから。
それは、たぶん「撮る」というより、「感じ取る」に近い。
そして、シャッターを切った瞬間、僕と家族の間にひとつの“会話”が生まれているような気がするんです。
◆ “ちゃんとした写真”じゃなくていい
カメラを始めた頃は、
「ブレずに」「明るく」「構図を整えて」っていう技術ばかりが気になって、
うまく撮れなかった日は落ち込むこともありました。
でもある日、ちょっとピンボケの一枚を見返していて、涙が出そうになったことがあったんです。
そこに映っていたのは、
お昼寝から起きたばかりで、髪がぼさぼさの息子。
ぼーっとした顔で、まだ夢の中にいるような表情。
なんの飾り気もない。
でも、僕だけが知っている「日常の温度」がそこにあって。
「ああ、これはもう、作品なんて言葉じゃなくて、“宝物”なんだな」って、思いました。
カメラは、その瞬間の空気ごと切り取ってくれる道具なんですよね。
上手じゃなくていい。
完璧じゃなくていい。
“そのとき、そこにいた”という事実だけで、
その写真には、言葉以上の愛情が宿る。
◆ 写真があるだけで、夫婦の空気がやわらかくなった
「これ、撮ってくれてたの?いつの間に?」
と、妻が写真を見て笑ってくれることが増えました。
それだけで、なんだか救われるような気持ちになります。
育児の毎日って、余裕がなくて、
イライラしたり、ぶつかったり、すれ違ったりすることもあるけれど、
そういう時間のなかに「ふと立ち止まる瞬間」をくれるのが、写真の力なんだと思います。
ときには、
泣いている子どもを撮って「これはあとで笑えるやつだね」と話す日もあるし、
妻が疲れた顔をしているときこそ、そっと一枚撮ってあとで見せてみると、
「え、私こんな顔してたんだね。でも、頑張ってるよね」って自分を肯定できたりもする。
写真って、過去を残すためのものだけど、
同時に「今を見つめ直すための鏡」にもなるんです。
家族みんなが「がんばってる自分」を受け入れられるようになる、
そんな力が、写真にはあると感じています。
◆ “愛されてた時間”を未来に届けるために
僕はいつか、自分の子どもが大人になったときに、
「お父さんって、こんなふうに僕のこと見てくれてたんだな」って、
写真を通じて感じてくれたらいいなと思っています。
言葉にするのが照れくさくても、
忙しくてゆっくり話す時間がなくても、
写真にはちゃんと残るんです。
そのときの空気、そのときの目線、そのときの愛情が。
カメラを持って、家族に向けてレンズを向けるということは、
「あなたのこと、大切に思ってるよ」と伝え続けることなんだと思う。
そしてそれは、未来の自分自身にも向けたメッセージ。
「お前、あの頃ちゃんと愛してたな」って、
数年後、振り返ったときに思えるように。
◆ 最後に:写真に映るのは、光だけじゃない
カメラは光を捉える道具だと言われます。
でも僕は、写真には“温度”が写ると思っています。
「今日の空、きれいだったな」
「この瞬間、愛おしかったな」
「ちゃんと、家族を見てたな」
そう思える写真が、1枚でも増えていけば、
きっと人生はもっと優しくなる。
“撮ること”は、特別なことじゃなくて、
誰かを大切に想う、その気持ちの延長線にある。
そんな気持ちを忘れないように、
今日も、カメラを手にとって家族に向けてシャッターを切ります。
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