不倫だった。でも、あれは「快楽」じゃなくて、「愛」だった。
最初は、ただ身体を求め合っていただけだった。
でも、
彼と過ごした時間が、私の孤独を癒やし、心を動かし、愛の形を変えた。
『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜』を観た日、私は“自分の恋”を思い出して、泣いた。
【1】午後2時47分、カーテンの隙間から光が射した日
37歳、独身、ひとり暮らし。メーカーの営業サポート職。
目立った不満もないけれど、満たされているわけでもない
そんな毎日だった。
あの午後も、仕事をテキトーに切り上げて、洗濯機を回しながらテレビをつけた。
何気なく流れていたドラマの再放送。
タイトルは『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜』
「また不倫モノか…」と思ったはずなのに、
気づいたらリモコンを握る手が止まっていた。
主人公・紗和の不安そうな目、ほんの少し頬を染める横顔、
そこに、私は“自分”を見た。
そのとき、もう一人の誰かが私の心の奥で、静かに目を覚ました。
【2】あの夜、彼と初めてキスをした
彼と出会ったのは、仕事の電話だった。
取引先の担当。年齢は39歳。
声が落ち着いていて、少し笑うときの間がやわらかい人だった。
3ヶ月ほどのやり取りの末、初めて会ったのは仕事帰りの打ち合わせの席。
その帰り道、「資料、今度直接届けに行きますよ」と笑った彼に、
私はうなずいていた。
次に会ったとき、彼の手がワイングラス越しに私の指に触れた。
それが偶然だったのか、確信だったのかは、今でもわからない。
でもそのあと、彼の部屋に向かったときにはもう、私は“選んでいた”。
【3】身体が先で、心は後からついてきた
彼の手が私のワンピースをゆっくり下ろすとき、
私はなにも言わなかった。
言葉にするには、すでに欲望が先に走っていた。
キスは、ゆっくりで長かった。
唇から首へ、そして胸元へと降りていく間、
私は目を閉じながら、ずっと心臓の音を聞いていた。
下着を脱がされたとき、恥ずかしさよりも、
“生きてる”という感覚が強かった。
誰かに触れられたいと思っていた。
ただの性欲ではない、もっと深い孤独のようなものだった。
ベッドの上、彼は何度も私の名前を呼んだ。
その声が、耳ではなく“心”に届いていた。

【4】罪悪感と快楽が、交互に押し寄せた
それから3度、彼と会った。
仕事の合間、平日の午後。
ちょうど“昼顔妻”たちが動き出す、あの時間。
私には夫も子どももいない。
でも、“不倫する側”であることに、変わりはなかった。
罪悪感は、夜になると決まってやってきた。
ひとりでシャワーを浴びているとき、
LINEの既読がつかないとき、
彼の奥さんの顔を勝手に想像してしまうとき。
でもその罪を、次に彼の肌に触れたときに、私は忘れた。
彼の熱を受け取ることで、“許されているような気”になっていた。
【5】昼顔のラストで、私は泣いた
ある日、彼から連絡が途絶えた。
1日経ち、2日経ち、ようやく届いた短いLINE。
「スマホ見られたかもしれない。しばらく距離置こう」
それを見たとき、涙は出なかった。
ただ、部屋の空気が急に冷たく感じた。
“そうなる気がしてた”と心のどこかでわかっていたから。
その日の夜、私はもう一度『昼顔』を観た。
最終回、2人が引き裂かれる場面。
「忘れないでください」
そう言った紗和の声に、私は涙が止まらなかった。
「忘れたくても、忘れられないんです」
それは、私の声でもあった。

【6】不倫だった。でも、ただの関係じゃなかった
誰にも言えない。
でも、なかったことにはしたくない。
彼がくれた体温も、笑った顔も、
私の髪をとかしてくれたあの夜も。
全部が“都合のいい女”だったなんて、私には思えなかった。
むしろ、あの数ヶ月間だけは、私は誰かにとっての“居場所”だった。
身体を重ねたその奥に、確かに“心”があった。
快楽なんかじゃなく、静かな“想い”が存在していた。
【7】愛していた。たとえ、それが許されない愛でも
今、彼とは一切連絡を取っていない。
ブロックされたわけでも、削除されたわけでもない。
ただ、お互いに“戻らない”と決めただけ。
でも私は、今でも午後3時になると、
あのときの香水の匂いや、彼の声を思い出す。
恋は終わった。
でも、愛した記憶は、終わらない。
『昼顔』は、不倫を美化したドラマだと言う人もいる。
でも、あれは“本気で人を愛してしまった人間”の物語だった。
そして、それは私の物語でもあった。
不倫だった。
でも、それはただの逃避じゃなかった。
私が女として、生きていた時間だった。
そして、愛してしまった時間だった。
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