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鳥と魚✳︎はじまりの詩Ⅱ

爪あと

宇宙の法則が
良い方向にしか向かわないなら
爪あとも、傷ついた心も
それを
光を含んだエネルギーに
変えるチカラを
生きるもの全てが備えている
ヒトも動物たちも植物も
、、、
意識しようとしまいと
呼吸するたびに
瞬きするたびに
太陽が登るたびに
月が出るたびに
前に進んでいる
だから心配しないで
宇宙に身を任せて


✳︎


魚は時々背中に
とても強い空気を感じる
背中に刺さるような時もあるし
ふわっと温かい何かに
包まれているような時もある
それは決まって
鳥が後ろの席にいる時で
鳥が放つ何かだとわかるので
そんな時は絶対に振り向かない
振り向かないから
余計に強い空気が背中に刺さる
それでも何故か

フリムイタラ マケヨ。。。

と、誰かが言う
勝ち負け、、、、?


✳︎


新しい仲間の
コミュニケーションをはかる目的で
学校を飛び出して新入生全員で
私服で校外学習に出かけるという
予定が発表された
普段グレイの制服に身を包み
無意識のうちに学校モードの
スイッチが入っている
新しい友だちの
普段知らない一面を垣間見る
逆を言えば
垣間見られることになるわけで
、、、
行動計画もそこそこに
何持っていく?
何着ていく?
おやつは何にする?
と、話は甚だしく脱線し
だんだん声が小さくなっていく
当日の行動はグループ単位で
相変わらず
恵、秋、鳥、魚

恵と鳥は
目のカタチが似ていて笑うと半分になる
鳥は
小さなことも
最大限に楽しんでしまう天才で
いつ何処でも無意識のうちに
歌い出しそうで
幸せを運ぶ鳥のようだ
恵は
何か気になることを
素通りせずにはいられない
話し出したら止まらない太陽のよう
2人とも提案好きで
楽しいことに頭を巡らすのが得意で
次々に最大限に楽しむアイデアが飛び出す

秋と魚は和顔で
あまり感情を露わにしないけれど
控えめな感情表現の裏側に
熱い感情を秘めている
確かではないけれど
秋は
すでに誰かに
付き合ってください
と告白されて
ガールフレンドができたのではないかと思れる
魚は秋のその一瞬の仕草に
些細な感情を見つけていた

魚は
鳥や恵のような
屈託のない感情表現に慣れていない
常に2歳違いの弟に
家族の目が注がれていたからか
何かで家族を惹きつけない限り
自分の感情を表す機会もないし
表したところで
感情の強弱が激しくなるような
日常ではなかった
自分の中に感情を納めることが
日常になると
それはそれで楽であると同時に
不思議と感情が伝わる人には
表さなくても伝わることを知り
そんな人を見分けられるようになりかけていた
だから
秋と魚は
どちらかというと
グループ活動は苦手だったけれど
恵と鳥と一緒だと
その空気に自分を
解放したくなるような気になり
心から拍手つきで
それいいねー!!
と大賛成したくなり
話しがまとまるのはとても早い

✴︎


自分にない何かを
補う誰かに出会うと
ヒトは少し変われるような
勇気をもらう
錯覚かもしれないし
ちっとも変わっていない
のかもしれないけれど
そこに
光を見るのは確かだ

✴︎

まだ子供が抜けきらない
これから春を迎える
16歳達が乗るバスは大騒ぎだ
誰かの持ち込んだ機材から聞こえる
音楽に反応するのは鳥
ギターを持って来ればよかったー
と、悔しがっている


ハイキングしながら、珍しく
秋と恵が盛り上がっいる
公式テニス部のコートは
フェンスを隔てて
バレーボールコートに接している
大世帯のテニス部の新入生は
ボールを打つ機会は部活中
数回しか回ってこない
待ち時間も多いし、ボール拾いばかりで
はっきり言って
暇だ
暇となると
ネットの外にはバレー部のコート
今や女子の注目の的になっている
秋と鳥がいる
ついそちらに目が行く
ついそちらに見惚れる
そして
真面目にやれ!と叱られる
というわけで
部活後、反省会までやるはめになる

---俺らのせいか!
---そうよ!


と、意味不明の会話で盛り上がっている
そんな漫才聴きながら
鳥と魚は初めて並んで歩いた
日差しが眩しい春の終わりだった


鳥は
淡い色のダンガリーシャツに
履き慣れたジーンズ
キャプを目深に被り
綺麗な虹色のサスペンダーを
アクセントにしていた
長い足がますます長く見えた

不意に鳥が魚の頭の上から言った

暑いね、帽子持ってこなかったの?

うん、忘れた!

暑いでしょ
これ、被ってていいから 


と、魚の頭に自分のキャプをのせた
いや、そんなことしたら他の女子に殺される、、、
と言おうとしたら
鳥は早足で魚から離れて
前を歩く
恵と秋に割り込むように
秋に何か話しかけていた

次の瞬間、魚は
覚えのある空気を感じて
何か探すかのように
辺りを見まわし
ふわっと香ってくる
匂いに胸の奥が締め付けられた

何だっけこの匂い

それは鳥の帽子からほのかに広がる
少し懐かしい匂いだった


お昼の弁当を食べた後
秋が消えた
自由時間だし
戻ってくるでしょうと思っていたら
少し離れた公園のベンチに
隣のクラスの女の子と2人で座って
仲良く話していた
そういうことね〜
と、見ていないフリをしていたら
すでに女子達の間では
ザワザワと
ちょっとした騒ぎになっていた


そのあと秋が戻ってきて
グループ行動に戻ると
恵は秋の側を離れなかった
魚と一緒に乗るつもりだった
小さな遊園地の二人乗りの乗り物も
秋の隣に真っ先に座り
魚は鳥と乗ることになってしまった
バスの席も鳥は魚と座って
と言って秋の隣に座った

鳥も魚も
恵の気持ちがわかりすぎて
切なくなった


そして
鳥と魚は思いの外
学校の専属カメラマンに
一緒に歩いている姿
一緒に乗り物にのる姿
バスでも隣同士で座る姿
を、証拠写真のごとくたくさん撮られて
数日後
職員室の前の廊下に張り出された
魚が写っていなければ
飛ぶように売れただろうに、、、
しかも鳥の帽子をかぶってる、、、


それまで楽しく過ごすことで
秋と仲良くなりたいと思っていた恵は
秋が隣のクラスの女の子と仲良く話している
姿を目にしてから、少し気が急いていた

鳥と魚は
4人で話す機会がある時は
恵と秋が2人で話す時間を作ろうと
どちらともなく
鳥と魚2人で話すようになった
そんなふうに
示し合わせなくても自然に
2人ともどこか似た様な
行動を取る事を知り
思いの外
鳥と魚の距離は
少しずつ縮まっていった

うまくいくといいね

秋はこの間の隣のクラスの子と、まだ付き合って

いるわけじゃないって言ってた

そっか、良かった!

そんなふうにグループのバランスが
少しずつ変わり始める頃
部活一色の夏休みに突入
秋になればグループも
変わるだろうから
魚は祈る様な気持ちだった
鳥もまた同じ思いでいた

✴︎


ヒトは
切ない思いをすればする程
優しいヒトになる
自分の痛みを優しさに変える
魔法をプレゼントされるから
爪痕を癒す薬は
それでも過ぎゆく時間
時間が
痛みの意味を教えてくれる











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