【脚本】『QOL』③(全8話)|「人が死んで感動する物語なんか、もうたくさんだ」
※脚本①は無料で公開しています。
②以降は各話100円でお楽しみいただけます。
隔日で更新していきます。
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これまでのあらすじ
小説の中で、乳がんを患うアキハのもとに、友人の豊と翠がお見舞いにやってくる。
豊はアキハに想いを伝えようとするが、アキハが恋心を抱いている相手は、主治医の高山だった。
一方、現実の泰子の病室では、幼馴染の圭介や母・セツ子らが入院生活を賑やかにしていた。
そして、入院中に仲良くなった患者・りんから、病院の「イケメン先生」をめぐる新たなネタを聞かされることに――。
登場人物
秋葉 泰子(30)
主人公。「乳がん」と診断された恋愛小説家。
佐月 りん(21)
泰子と同じ病棟の患者。泰子に懐く。
尾野 和雄(55)
泰子と同じ病棟の患者。治療を拒否している。
空知 充(33)
御門病院の外科医。フィギュア製作が趣味。
高峯 誠司(34)
御門病院の外科医。カリスマイケメン医師。
澄川 美礼(29)
御門病院の内科医。尾野の娘。
谷田部(49)
ベテラン看護師。肝っ玉母さんのような存在。
七海(26)
新人看護師。何事にも一生懸命だが、不器用。
栗木 圭介(30)
泰子の幼馴染。泰子に密かな恋心を抱く。
秋葉 セツ子(57)
泰子の母。かなりの自由人。
八雲 定(28)
週刊ウィークエンドの編集者。泰子の担当。
翠(26)
小説の中の登場人物。アキハの友人。
豊(26)
小説の中の登場人物。アキハの友人。
アキハ(26)
小説の主人公。進行性の乳がんを患っている。
【脚本③】
※本作は2013年上演当時の医療状況や情報を参考に制作されたフィクションです。現在の標準治療や医療制度、表現等と異なる部分がありますので、あらかじめご了承ください。
#4 御門病院・屋上庭園
点滴スタンドを引いた患者・尾野和雄(55)、現れる。
尾野 「・・・」
後に続いて現れる、医師・澄川美礼(29)。
澄川 「お父さん」
尾野 「・・・なんだ」
澄川 「また検査から逃げてきたの?」
尾野 「逃げてきたんじゃねぇよ、ボイコットしてきたんだ」
澄川 「ダメでしょ、高峯先生の言うことちゃんと聞かなきゃ」
尾野 「信用できねぇよあんな奴」
澄川 「そんなこと言わないの」
尾野 「美礼、お前だってわかってんだろ、俺はもうダメなんだよ」
澄川 「そんなことない、高峯先生だって大丈夫って言ってくれてるんでしょ」
尾野 「信用できねぇ」
澄川 「子供みたいなこと言ってないで、ちゃんと病気と向き合ってよ、でないと治るものも治らないよ」
尾野 「治らねぇんだよ、前の病院で転移が見つかって、で、もうできることはないって言われたんだ、医者にさじ投げられたら、俺らはどうすりゃいいんだよ」
澄川 「それは前の病院のことでしょ、この病院は違う」
尾野 「ふん、どうかね、手術で身体傷つけられて、抗がん剤でぼろぼろにされて、やることはやりましたってアリバイ作りたいだけなんじゃねぇか」
澄川 「アリバイって、医者だって患者さんのために頑張って治療してるんだよ」
尾野 「どうせやれることがなくなったら、治験だのホスピスだの勧めてくるんだろ、病院の丸儲けじゃねぇか」
澄川 「なんでそういう言い方しかできないの」
尾野 「とにかく、大腸から肝臓に転移しちまった・・・これで一気にステージⅣだ、俺はもう助からねぇ」
澄川 「・・・」
尾野 「・・・まぁ死ぬ前にお前と会えて良かったよ」
澄川 「死ぬとか言わないでよ」
尾野 「医者になったってのは聞いてたが、ここの病院とは思わなかった」
澄川 「・・・私だって、お父さんがここで治療してるとは思ってなかったよ」
尾野 「世間なんて狭いもんだな」
澄川 「・・・」
尾野 「お前には、医者にしてくれるような立派なお義父さんがいる」
澄川 「え?」
尾野 「俺は家庭をダメにした、俺じゃお前をそんなふうに育てられなかった」
澄川 「・・・」
尾野 「俺は父親失格なんだよ、だから、ほっといてくれ」
澄川 「・・・でも、血はつながってる」
尾野 「・・・」
澄川 「お父さんにとって、私は娘じゃないの?」
尾野 「え?」
澄川 「私は娘失格?」
尾野 「いや、そんなことは」
澄川 「そんなことないんだったら、私にとってお父さんはお父さんでしょ」
尾野 「・・・畜生・・・お前とは、もっと違う形で再会したかったよ・・・」
澄川 「・・・」
そこに現れる、高峯。
高峯 「あ、いた」
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