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行間を訓む vol.53 ~ 天音かなた 「 片羽(カタハ) 」 編 ~

プロローグ


 『ヘイ!こんかなた~! キャッチコピーは握力50kg〜!ぎゅっ、ぎゅっ!握りつぶしゃうぞ☆ ホロライブ4期生、かなたんこと天音かなたです!』――― 天界学園生徒会書記の天使、彼女の低音から高音までカバーする魔法のような歌声は沢山のファンを魅了してきました。そして、いつか"さいたまスーパーアリーナ"でLIVEを開催することを目標に活動している正真正銘、アイドルVtuberさんです。
 かなたんは2019年12月27日にホロライブ4期生、またの名を「ホロふぉーす」のトップバッターとしてデビューし、ファンネームは挨拶に因んだ「へい民」さん。今ではチャンネル登録者173万人を数え、名だたるメンバーが所属するホロライブのビッグネームと言っても過言ではないでしょう。また、2025年8月13日には夢見ていた1stソロライブ Amane Kanata 1st Solo Live "LOCK ON" を有明アリーナで開催。歌にかける情熱は大きなうねりとなって、ファンを楽しませてくれました。特徴的な声と特技のロングトーンボイスは圧倒的な支持を得て、今日までの活動を歩んで来られました。
 そんな彼女は親しい人の前では元気なものの、人が増えると静かになってしまう通称"陰キャ"らしく、某マリンメイドの風格すら思わせる不憫さも兼ね備えています。アルバイトの経験も多種多様で、その時に身につけた握力は冒頭の挨拶にある50kgを優に超え、2025年12月16日のツイートでは59.9kgに達したことが報告される等、「この世のものは弱すぎる」という名言よろしく、最早ゴリラの域にあるというバラエティ豊かな一面も併せ持ちます。




―――さて、早速ですが去る2025年12月2日。
彼女の突然の発表にV界隈に激震が走りました。




――― そう。我々V推しが最も恐れる形のお知らせ。
そして、配信で告げられたのは残酷な現実でした。





 なんたることでしょうか。あまりにも突然の発表で、その通知を見た当時仕事中の私も思わず目を疑いました。ホロライブ4期生は桐生ココ会長の卒業で4人となった今、更に人数が減るという非常に悲しい現実を眼前にし、胸が締め付けられる思いでした。更に「転生の予定無しの完全引退」という追い打ちのような断言。私はわためぇ推しのわためいとでありますから、わためぇとしても同期の卒業を一度経験しているとはいえ今回の件も穏やかで無い心中であることには変わりは無いはず。
 この件は秘匿性の高さ故にホロメンにすら事前に知らされていなかった為、発表当日から卒業までに残された時間の少なさと大切な仲間との別れを告げられたその衝撃は余波を生み、今月ホロメンと行われたコラボ配信等はスケジュールのかみ合った限られた人数での惜別となりました。ホロライブメンバーも今や海外勢含め数十人に及ぶ大手Vtuber事務所であるが故に様々なことが重なった結果今に至るのでしょうが、様々な憶測があるためここで触れることは野暮と思いますので割愛します。
 個人的に悲しかったのは、ホロライブ4期生はそれぞれ個性と才能の塊であるが故になかなか4期生全員での同時コラボの機会に恵まれなかったと言う部分です。かたや語学、かたや歌、かたや企画力、かたや配信時間…。どの個性を取っても特筆すべき持ち味があって、叶えたい目標やブランディングがある。それぞれ多忙なタレント全員を旗振りして束ねることは難しいものがあることは想像に難くありません。
 わためぇとかなたん・トワ様はそれぞれ歌の才能からソロライブを敢行した歌手としての強者。それぞれが持ち味を活かして活動をし続けてそこに焦点を当てて活動をしていれば、自然の流れなのかもしれません。「同期」という強い絆で結ばれていることは、ココ会長の卒業時にかなたんが創ってくれた「キセキ結び」で示してくれていたのではないかとは思いつつも、かなたんとわためぇのやりとりが少なかったという後ろ髪的な心残りはどうしても私の中にはあります。(わためぇの周年が迫っていたのでタイミングの問題もありましたが)




 ――― いつも通り前置きが長いことは何卒ご容赦くださいませ。話せば色々零れてしまうので、話を本題に戻そうと思います。
 今回「行間をむ」の企画にて題材とさせて頂く曲については急遽かなたんのオリジナル曲にさせて頂きましたが、中でも意味深そうに私の耳に残った楽曲が「片羽(カタハ)」でした。天使のかなたんには背中に羽根がありますが、もちろん飛ぶためですから片方のみではないですよね。


未だ聴いたことが無い方は下記からどうぞ ▼


 ――― いかがだったでしょうか。かなたんの特徴的な歌声が、はじまりの囁くような歌声から、サビの力ある歌声までの幅の広さも盛り込まれていてすごくインパクトのある楽曲だったように私は思います。
 MV内では独自の物語も展開されていて、実際のかなたんの心中のようなものに重なっているような部分も見て取れました。早速次の章から歌詞の内容に注目して見ていこうと思います。


 注)セクション分けや歌詞の内容の考察ついてはあくまで筆者の個人的主観です。私自身は専門家でも何でもありません。もしかすると表現や言葉使い等に間違いもあるかもしれませんし、解釈違いが起こることは否めませんので万一の場合はご容赦ください。



歌詞訓み(§1)


 ――― かなたんが静かに語り、うっすらと灰色がかる空を映し出しながら物語はスタートします。


とおいとおい むかしばなし
それはきっと あすのはなし

遥か遠くの知らない街で語り継がれる、昔話。
それはきっと、明日から語り継がれるものになるかもしれない。




片羽を失って落ちていく夢
醒めるとそこは白い部屋―――

“もう 飛べやしないさ”

落ち続ける夜から醒めた 白い部屋の片隅で
彷徨ってる 自由をなくして
塞ぐ 倒れ込んだまま

 夢見が悪く、目を覚ますといつもの白い部屋に横たえた自分。自由に飛べるはずだった翼の片方をくして、途方に暮れ倒れ込んだまま眠っていたらしい。でも、変わらずまだそこにある"飛べない"という現実は私を見逃してくれないらしい。



ああ 細い片翼が ああ ないんだ
叫んだ 心が止まらなくて

 細くて今にも折れそうだった、あの片翼。私にとっては唯一の希望だったのに。今の私の手にはそれが無いということがどれだけ辛いことか。叫んだってどうしようもないのに、心のダムが決壊したかのようにただただ、受け入れがたい現実を少しでも遠ざけたかった。



機械みたいに きしむ僕を
現実が笑った
その時 誰かが囁いたんだ

 潤滑油を切らしてもなお動き続ける機械から聞こえる悲鳴のような大きなきしみ。まるで今の自分のように見えて仕方がなかった。それをあざ笑うように現実は時を刻みながらこちらを見るようにと仕向けてくる。その時聞こえたのは、ほんとうに微かな囁きだった。



君に託そう。

「あなたに あげた つばさ」
「わたしの ゆめみた せかい」

「わたしが夢見た世界を見てくれるんでしょう」
「さあ、私が託した翼があるでしょう」



託された思い。

羽ばたきたい 大空へ
嗚呼 風が啼く
止まらないで 高く高くへ
幾度夢願い 祈った雲の果て

『羽ばたきたい』と願い、祈ったあの空へ。
風が体をかすめ、音を立てながら、天高くへと。
ぐんぐんと高みを目指して進む。
あの雲の果てにある、その先の世界をこの目で見てやるんだ。



終わりを越えて 高く高くへ
(とべるよ)
かけがえのない ガラクタの羽で

水平線のその先が終わりじゃ無いことを証明しよう。
きっと私なら飛べる。
ガラクタの寄せ集めの羽かもしれないけど、私にとっては夢の翼だから。



( 間奏 )

容態が急変。
呼応するように壊れる片羽。



歌詞訓み(§2)


思い出とからっぽの現実。衣装も堕天ver.へ。
よくよく見ると、代名詞や代表曲の数々。

“星を見失った”

(まだ あきらめられないのに)

紛れ住む 人間のセカイ
一つの羽じゃ飛べない もう飛びたくない

 "目指すべき星を見失ってしまった"という現実を突き付けられてもなお、諦めきれない自分が居る。でも、それがまたやるせなくて。普通の人として紛れ込むしかない。また飛びたいと思っても、片羽だけではどうしても飛べないし、それが分かっているから尚更飛びたくなくなってくるんだ。



色彩の 半分だけで
底を這うこともできなかった

「わたしには もう いらないの」
「かわりに ひかりは きみがみてよ」

片羽がない。他から見ればそれだけかもしれないけれど。
あれだけ鮮やかに見えた世界の色彩ですら半減して見えた。最早地面を這いつくばる気力すら失せてしまう程だった。
「今の私にはもう必要ないものだから」
と言い聞かせ、
「私の代わりにあなたがフルカラーの世界を見て来れば良い」
と突き放してしまう。



苛立つほどに青かった エデンで泣いてた
その時 掴んでくれた 誰かの手 嗚呼

 苛立ってしまう程に青く透き通った、皮肉にも「楽園」と云われたエデンこの世界で私は人知れず泣くしかなかった。そんな私に手を差し伸べ、手を掴んでくれる人がいた―――





あなたがくれた 希望で
約束の羽で今 飛ばなくちゃ

 「あなたには空が似合う」と言ってくれたその手にあったのは、手作りで不格好な片方の翼だった。でも、藁にもすがる思いだった私には希望に見えて仕方がなかった。だからその約束の羽で今、飛ばねばならない。



ああ 共に往く ああ 地平の先へ
壊れるまで 高く高くへ
今の僕は 片翼でいい

地平線の先にある景色を、君からもらった羽と共に見に行こう。
高みを目指して、壊れるまで全力で。
たとえ片翼だろうと、信じるものを貫いて。



飛べるよ 信じて 飛べるよ その先へ
飛べるよ 楽園 永遠の 彼方まで

きっと不完全でも
(ああ ああ)

遥か 彼方まで

私は飛べる。信じよう。その先にある栄光を掴み取るため。
永遠に続く世界の彼方にあるであろう楽園オアシスを目指して。
不完全な姿かもしれないけれど、必死に目標を見据えて力強く羽ばたこう。



エピローグ


 ――― 力強く最後まで走り続けたかなたん。彼女がVtuberとして、アイドルとして駆け抜けた6年という長いようで短く感じた歳月は、我々にかけがえのない思い出と確かな足跡そくせきを遺し、彼方へ羽ばたいていきました。


 27日の卒業ライブでもこの「片羽(カタハ)」は歌われました。沢山リリースされたオリジナル曲をなぞるようなメドレーのなかで、『あなたがくれた希望で』から歌い出してくれたことは、かなたんを支えてくれたファンにとって意義深いものがあるのではないでしょうか。


5人で4期生だ。

 ――― そして何と言っても、最後に自身が作曲を手がけた「キセキ結び」の歌唱。ここで涙腺が崩壊した方が大多数でしょう。ココ会長の卒業に間に合わせようと必死にかなたんが創り上げたキセキの一端をこのような形で再度目にし、このような形で彼女を見送ることになろうとは誰が想像したでしょうか。
 『誰にも言えずに描いた夢が たとえ叶わないとしても』『約束しよう いつかここで「また会おう」』――― 端々に散りばめられた思いが歌詞に重みを持たせ、此処にアイドルVtuber天音かなたのとしての大切な歴史を刻むことになりました。彼方の大空へ向けて飛び立った後には、ぽっかりと空いた穴のような喪失感が残りますが、かなたんの選択は我々リスナーは受け入れるしかない残酷な現実。彼女の往かんとする道にどうか幸多かれと願いを捧げ、無限に続く大空へ切なる願いを託すのです。湊あくあと云うVtuberが残したように「語られなくなったらそれは死と同じ」。我々はこの奇跡の物語を語り継ぐことが使命と言っても良いでしょう。



 ――― さて話は逸れますが、私はこの記事を書いているとき(12月30日でした)にふと背後にある壁掛けの時計に何の気なしに目をやりました。すると、秒針が微かに振動しているものの、時間が1時間以上ずれてしまっていることに気がつきました。いつもは傍らにあるデジタル時計に目をやる機会が多いためあまり気に留めていなかったからだと思います。
 「こいつとは付き合いが長い気がするが愈々寿命か…?」と思いつつ時計を外して裏を見るとカバー無しではめられた単3電池一本とそれを替えた日付が近くの平面にテープで貼られており、2019年の文字が横線で消された下に2022年の日付が書いてありました。おおよそ3年周期で電池を替え続けていたことが判ったのです。長く使う物には母がこのようなことをしているマメなひとなので、気づくことが出来ました。単3電池たったの1本で約三年の月日を時計という形で刻んできたということに驚かされつつ、新たな電池を交換して日付を書き直したのでした。

 ――― かなたんの背中にある羽も大きくはなかったものの、天使としての存在感を示すには十分なものでした。実は彼女は病気により彼女の片方の耳が聞こえなくなってしまったというエピソードもあり、そこに今回題材とさせて頂いた「片羽」の物語にも重なるものがある気がします。一度は諦めたものの、ファンの声援を受けて必死に自分が抱く夢に向かって藻掻き続けた。きっかけや原動力は小さなものやふとした些細なきっかけかもしれない。翼を構成するのはさらに小さな羽かもしれない。でも、たとえ大事な物を失ったとしても折れないで芯を強く持って活動して来たというかなたんの強さがあって、その功績を裏付けるかのように沢山のファンやホロメン、引いては他のVtuberさんから惜しみの声が聞かれました。身長149cmの小さな天使は力強く、新たな道を歩み始めたのです。下を向くような暗いニュースだったかもしれませんが、彼女がそうだったように我々もしっかり上を向いて歩いて行かなければと思わされる、そんな年の瀬となりました。


かなたん、
ホロライブ4期生として生まれてくれて、
本当にありがとう。
沢山の楽しい思い出をありがとう。
貴方のキセキを見届けられて良かった。

願わくばいつか
5人で集って歌われる「キセキ結び」を夢見て ―――



かなたんのチャンネルとXは下記になります ▼

天音かなた X (旧 Twitter):https://x.com/amanekanatach


それではまた次回の「行間をむ」でお会い致しましょう!
彼方の空へ、惜別の思いを込めて ―――
2025.12.31. つなな


ご挨拶

 本年も私つななの記事を見て下さり誠にありがとうございました。正直ネタに困ることも多々あり、本年後半は毎月の締め切りと自分の気力と闘いながらの更新となってしまい、お見苦しい自語り記事でお茶を濁すこともありました。月一の更新記録はなんとか途絶えさせずにここまで来ており、来年にはいよいよ月一投稿開始から満4年を迎えようとしております。来年も変わらぬご愛顧を賜ることができますよう、一層精進努力させて頂きます。末筆となりますが、皆様も良いお年をお迎え下さい。それでは。👋

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