その働き方は、この先の「私たち」のために。【RDワーカーフォーラム2026レポート】
こんにちは、テクノツール株式会社広報のホッシーです!
私たちテクノツールは、肢体不自由のある方がテクノロジーを使って可能性を広げ、社会とつながるためのアシスティブ・テクノロジー(支援技術)の開発や販売を行っています。
私たちが大切にしている取り組みの一つが、様々な場所で当事者目線やテクノロジーの可能性をお伝えする講演活動です。
今回は、難病とともに働く「RDワーカー」、企業、支援者など多様な立場の方々が集い、「ともに働くあり方」を考えるイベント「RDワーカーフォーラム2026」の登壇レポートをお届けします!
代表の島田と広報のホッシーが登壇し、「RDワーカーのこれからにおいてテクノロジーはどう寄り添い、どう活かされるべきか」を語り合いました。
会場の熱気が伝わるセッションの模様をレポートします!

【登壇者プロフィール】(左から)
近藤 菜津紀(両育わーるど / 獣医師・RD当事者 / 筋痛性脳脊髄炎[ME/CFS])
島田 真太郎(テクノツール株式会社 / テクノベース株式会社 代表取締役)
干場 慎也(テクノツール株式会社 広報担当 / 脊髄性筋萎縮症[SMA]当事者)
体調の波を可視化する「RDログ」の開発と活用

セッション冒頭、難病当事者である近藤さんから、RDワーカーが直面する課題と体調の波を可視化するアプリ「RDログ」の開発経緯が語られました。
約20年続いた原因不明の不調と「無理」の負のサイクル
近藤菜津紀(以下、近藤):私の症状は全身の痛み、激しい倦怠感、脱力などです。
短距離なら歩けますが、歩き続けると寝込んでしまうため普段は車椅子を使用しています。
疲労が強い時には、思考力が低下し言葉が出にくくなる「ブレインフォグ」にも悩まされます。
私のようなRDワーカーに共通する最大の課題は、激しい「体調の波」です。365日何らかの不調がありますが、日によって「寝たきりの日」「動ける日」「痛みが強い日」「疲労感が強い日」など現れ方が全く異なります。
中学生で発症してから約20年間病名が分からず、「検査値に異常はない」と言われ続けたため、自分でも「働けるはずだ」と思い込んで無理をし、倒れては退職する負のサイクルを繰り返していました。
診断後も自分の体調変化や業務への影響を客観的に把握するのは難しく、周囲に「どれくらい働けるか」を聞かれても説明できないもどかしさがありました。
当事者目線で開発した「RDログ」の仕組みとAIの役割
そこで、体調の波を自覚し周囲に説明するために開発したのが「RDログ」です。
日々の記録として毎日の「症状レベル」と「業務負荷(時間やストレス)」を入力します。
こちらが1〜2週間の記録で自動グラフ化され、体調と業務量の関係がひと目で把握できます。
さらに搭載されたAIが、「業務負荷が高いと翌日寝込む可能性が高い」「慢性遅延性疲労の傾向がある」などを分析します。
「事後に休むのではなく、事前に業務をセーブする」ための気づきを与える心強いツールです。
最近、最も助けられた・興味のあるテクノロジーは?
続いてのテーマは、日常や仕事で「これがあって本当に助かった!」という具体的なテクノロジーについてです。
思考をそのままテキスト化するAI「Gemini」
干場慎也(以下、干場):私はGoogleのAI「Gemini(ジェミニ)」です。
キーボード入力が難しい私にとって、Geminiは話しかけたまとまりのない言葉から意図を正確に汲み取り、綺麗な文章に要約・整形してくれます。
話しかける感覚で瞬時にテキスト化できるため、入力のストレスが激減しました。
車椅子の揺れに負けない強力な固定具「KUPO」

島田真太郎(以下、島田):近藤さんが自社ツールを紹介しているのに、ホッシーがうちの製品を紹介しないのは広報としてどうなんでしょうか(笑)
干場:あ、そうでした!(笑)
弊社で扱う固定具「KUPO」には本当に助けられています。
一般のアームホルダーは車椅子の振動で画面が揺れて操作しにくくなりますが、「KUPO」は3つの関節をしっかりロックできる堅牢設計のため、どんな姿勢や環境でも画面がブレずに操作できます。
島田:こうした「固定具」の存在は極めて重要です。
「物をどこに固定し、どう配置するか」という環境設計も、生活や仕事を快適にする大切なアシスティブ・テクノロジーなのです。

経営者目線で考える「難病・障害者雇用」の本当の価値
ここからはテクノツールの実体験を踏まえ、経営者目線で難病患者や障害者を雇用することの価値について語られました。

「異質な視点」を取り込むことがイノベーションを生む
島田:RDワーカーの雇用やインクルージョンを追求することは、結果的に「健常者を含む全社員が働きやすい環境作り」に直結すると確信しています。
また、先ほど話題を挙げていたAIは「平均的で統計的に正しい正論」を出すため、定型業務を人間がやる必要性は薄れていきます。
これからの企業が新しい価値を生み出すために必要なのは、「これまでにない異質な問い」「独特な感覚」「全く異なる視点」を組織に取り込めるか、と言われています。
「普通」という枠組みの外にいる人たちが組織に入ることこそが、企業に多様な視点をもたらし、イノベーションを起こすきっかけになります。
現在、ある企業と協力し、多様性から価値を生み出すプログラムを構想中です。
機能拡張としてのテクノロジー / 関係性を築くテクノロジー
次に「テクノロジー」を、「肉体・能力を拡張するもの」と「人と人との関係性を築くもの」の2つの視点から掘り下げました。

意志を拡張し、社会とつながるプラットフォーム
干場:両者とも不可欠ですが役割が異なります。
スマホや代替マウスなどは「能力の制限を乗り越える入り口」であり、人間の意思を拡張してくれます。
もう一つの重要な側面が「人とつながるコミュニケーションツール」としてのテクノロジーです。
私自身、脊髄性筋萎縮症(SMA)のため将来の病状悪化を懸念され就職難に直面しました。
テクノツールでリモートワークを始めた当初も、チャット上でのコミュニケーションに壁がありました。
しかし、Zoom等のコミュニケーションを拡張するテクノロジーを用いた1on1を通じて人間性を理解し合い、さらに「車椅子」という移動拡張テクノロジーで会社に出社したり、当社が出展する展示会やイベントに足を運ぶことで、社員の方々との関係性を深められました。
テクノロジーは「社会と繋がりたい」という原動力を根本から支えるプラットフォームです。
「伝える葛藤」を減らす優しいテクノロジー
島田:自分の体調やしんどさを言葉で伝えるのは、誰にとっても簡単ではありません。
だからこそ、感覚値ではなく客観的に「可視化して伝える」支援テクノロジーが重要であり、その点でも「RDログ」のアプローチは素晴らしいと思います。
近藤:RDログを通じて「テクノロジーは伝えることを助けてくれる優しいツールだ」と実感しました。
体調不良を伝える際の葛藤を減らし、客観データで示してくれるテクノロジーは対話の強力な助けになります。

登壇者からのメッセージ
セッションの最後は、参加者の皆さまに向けたメッセージで締めくくられました。
「その人自身を見て、フラットに対話できる社会へ」
近藤:RDワーカーと言っても症状や望む働き方は一人ひとり異なります。病気や障害の有無にかかわらず、その人自身を見て「何ができるのか」「どう活躍したいのか」をフラットに対話できる社会であってほしいです。
「RDログ」は両育わーるどのHPから無料で体験いただけます。9月30日までは当事者限定でフル機能をお試しいただけますので、ぜひご覧ください。
「当事者目線で、不条理な障壁を減らす社会づくりを」
島田:今の社会の仕組みは、自分のようなマジョリティにとって有利に作られていますが、明日自分が難病や障害を負えば立場は一瞬でひっくり返ります。
誰にとっても他人事ではありません。
自分や大切な人がそうなった時、不条理な障壁を減らせる社会にできるか。
常に当事者目線を持ち、組織や事業のあり方を考えていきたいと思います。
「境界線を引かず、しんどさを共有し合える組織文化を」
干場:RDワーカーの多様な就労環境が広がる一方、現状は「個人の能力や人柄(属人性)」に依存しすぎている面もあります。
体調の波を会社に伝えるのは勇気がいりますし、説明を求められるのは誰にとっても大きなストレスです。
だからこそ「障害者だから」「難病当事者だから」と境界線を引くのではなく、「互いの状況やしんどさを日頃からフラットに共有し合える文化」を組織内に作ることが重要です。
広報の仕事を通じて私もその文化作りに貢献していきます!
おわりに
ご覧いただきありがとうございました!
テクノロジーの活用において大切なのは、「誰がどう使うか」だけでなく、「何を思って使うか」という前提です。
テクノツールは単に製品を提供するだけでなく、一人ひとりが持つ本当の願いや可能性を引き出し、サポートする活動を続けてまいります。
そしてお声がけくださった両育わーるどの皆さん、本当にありがとうございました!
今後ともどうぞよろしくお願いいたします!
