未来に希望を抱くことこそが本当に幸せであると言えるのか
だいぶ前の話をしようと思う。とは言え2か月前とかそこら辺の話だけれども。
1人、家に泊まりに来てくれた子がいた。学科は違えど大学の同期の子だ。その子はかなり変わっている。大学の講義はよくサボって来ないし、取得単位数もギリギリで、卒業するにはもう1年留年しなければならない可能性も否定できない。提出物も出したり出さなかったりで、GPAも1.5点にも満たないと言っていた。私はそんなこの子が心配になった。深いお話をしたいなと思って、家に泊まりに来てもらうことになった。誰かの家に泊まるのは中学生ぶり!ととてもはしゃいでいる様子を見て、私は誘ってよかったなと思った。
まずはその子のスペックを話していこうか。背はとても低い。151cmだと言っていたから、たぶん149cmくらいだと思っている。顔はとても可愛いと思う。たまに伊達メガネを付けていて私の癖にぶち刺さる。体型はそういう系統の漫画に出てきそうな感じだ。胸はHカップだと言っていた。たしかにとんでもなく大きい。不覚にも羨ましいと思ってしまう。今はバイトで水商売をしていると言っていた。そして単発のバイトも兼ねてお金を貯め続けていると語っていた。その使い道は後で後々に記しているからぜひ読んでみてね。性格面はかなり気が強く、芯を曲げない生き方をしているように感じた。だがその芯の裏には、非常に脆い自己肯定感が影響しているのだろうと勝手に推測した。結論から言うと、その推測は間違ってはいなかった。私から語れるものはこれくらいかな。
私は手始めにその子の過去を深堀っていった。高校生の頃は不登校児だったらしかった。高校の教員とも生徒とも気が合わず、登校したくなかったらしい。勉強も嫌いだから何をやっても楽しくない。未来に対する希望が何もなかったと語っていた。私はこの未来に対する希望がない、という言葉をさらに深堀っていった。すると返ってきた回答はこうだった。「将来的に私この胸とさよならしなくちゃダメなんだよね。」私はその言葉の意図が知りたくて、さらに質問を重ねていった。どうやら母も祖母も曽祖母も、みんな乳がんになり若い頃に乳房を摘出しているらしい。その年齢が総じて30歳に満たない年齢で摘出していて、そういった家系であることもあって将来を悲観的に見ている、私が誇れるものはこの胸しかないのに、それさえ奪われてしまえばもう生きる意味なんてない。私が今何を頑張ろうが全てが無駄なんだ、お金を貯め続けているのも胸の形成費用のためなんだよ。と語っていた。
私はどう返答しようか非常に頭を悩ませた。おそらく今水商売をやっているのもその胸が失われる前に愛されていたいという裏返しなのだろうし、大学を休みがちなのも未来が見えないからなのだろうと、その全てが繋がった。私は冗談で「えっちする〜?」と聞いてみても別に満更ではない返事が返ってきた。そうか、そういえばこの子も両性ともにいけるタイプなんだと思い出してしまった。私はこの質問が後々の関係に繋がるなんてこの頃の私は思ってもいなかった。
その子は性行為の素晴らしさについて壮大に語り始めた。性行為中の相手は全員私の胸に貪りつく。私は胸だけが取り柄だからそのようにされると自己肯定感が上がる。なんならそれでしか生きる価値を見出だせない。私にはこの胸しかないんだ。でも将来的にはそれさえも奪われてしまう。私から価値という価値が全て失われてしまう。だったら今大学に通ってバイトで真面目に働いて、一体何に繋がると言うのだ。それならば失われていくだけの私の人生を、今でしか満たせない私の価値を大切にしたい。と語っていた。
私は泣いた。その子の前でぐちゃぐちゃに泣いた。その子は遠くを見ながら淡々と話し続けていた。私と目が合ったとしても、その目は既に決意を固めているような眼差しをしていた。もう未熟な私には何も支えてあげることができないのだなと自覚せざるを得なかった。
その子はそう話し終わると、浴びるほどお酒を飲み始めた。5分で3缶を飲み干した。しかもかなり度数が強いものを一気に飲み干してしまった。酔わなければやっていけないんだろうなと思った。私の心はさらに苦しくなった。
そのままその子は酔い潰れた。寝る前にお風呂に入る?と聞いてもまた後で入る〜という返事だったので、いつもは来客を先にお風呂に入らせるのだが、私は先にシャワーを浴びることにした。シャワーを浴びていると、突然その子がお風呂に入ってきた。私はコンタクトレンズを外していたからボヤケて全く見えなかったのだが、背丈から幽霊ではなくその子なんだろうなと思った。私は全てを察して、気にせずに身体を洗い流し続けていた。シャワーをその子に受け渡すと、黙ってそれを受け取ってまずは頭を洗い始めた。私は泡も全て流し終わり、お風呂から上がれる状態となった。しかし私は上がらずに、浴槽の縁に座ってその子に話しかけた。「私今コンタクトしてないから全く何も見えないよ」「いやまじか」と一言だけ返ってきた。やっぱり自身の身体を見てほしかったんだなと思った。本当にその子はその胸だけが頼りなんだなと思ってしまった。私は再び虚しい気持ちに包まれた。そこからはまだ無言の時間が続き、その子がタオルで身体を洗うシャコシャコという音だけがお風呂場の中に響いていた。
その子は突然浴槽の縁に腰掛けて項垂れる私の背中に大きな胸を押し当ててきた。私はそうなる未来は予想できていたので何も驚くことはしなかった。その子は強くそれを押し当てた後、ようやく口を開いた。「ねぇどうして喜んでくれないの?」私は不意に立ち上がり振り向いてその子を強く抱き締めてしまった。身体が勝手に動いてしまった。戸惑うその子にこのように伝えた。「私はあなたの心にこそ真の価値があると思っている。あなたの胸はたしかに素敵だなと思う。魅力的だなと思う。でも、あなたが今抱えて生きている苦しみ、それこそがあなたの真の価値だと私は思っている。私はこれからもあなたを大切にしていきたいと思っている。だからあなたの人生を、未来を、諦めないでほしい。」そう言い終えると私はまた泣き始めてしまった。泣き虫でごめんねって感じ。
抱き締める私に対してその子は抱き締め返すわけでもなく、腕はただ身体の横に垂らされたままだった。私はこんな体勢をしているのでその子の表情を確認することはできなかったが、一体その子はどんな表情をしていたのだろうか。冷静な今になって少しだけ気になるかもしれない。その子からは何も返事がないまま数十秒ほどの時間が流れた。泣きじゃくる私はスッと離れ、シャワーで身体についた泡を流し、先に上がるねと言ってお風呂場を後にした。その子はそこから30分くらいお風呂場から出てくることはなかった。ただ、シャワーの音と静かな嗚咽だけがお風呂場の中から私の部屋まで響き渡ってきた。
その子がお風呂から上がり、私は髪の毛を乾かしてあげた。私は人の髪の毛に触るのが大好きだから、1人で勝手に満たされていた。乾かしていると、その子の髪の毛はかなりパサついていることに気づいた。これも未来への希望のなさから来るものなのかなと思って、私がたまに使っているヘアオイルをつけてからまた乾かしてあげた。その子は喜んでいた。私もそんなその子を見て、なんだか嬉しい気持ちになった。
私たちはそろそろ寝ようとなった。その子はベッドに寝かせ、私は床に寝袋のマットを敷いて横になった。部屋の電気を消し、2人は寝る姿勢に入った。その頃の時刻は夜2時を指していた。
少しばかり時間が過ぎ、その子は隣で寝てほしいと言ってきた。私はしょうがないな〜と言い、狭いシングルベッドに2人が横になった。その子は私を後ろから抱き締めてきた。私は皮肉にも愛おしさを覚えてしまった。私はただその子からの愛を受け止め続けていた。するとその子は私の下着の中に手を突っ込み、お腹や胸を撫で始めた。私はおいおいと思い、その優しく撫で続ける手を服の上から制止させた。その子はそれをも無視してもう片方の手で次は下を触ってきた。私はまずいと思ってくるっと反転して抱きついた。正面から密着するともう私のお腹などは触れないからね。そのまま数分が経ち、その子は静かに口を開いた。「えっちするんじゃないの?」私は驚いた。「私たち付き合ってないでしょ〜?」と言うと、「さっきするって言ったじゃん」と言ってきた。私は過去の発言を思い返し、たしかに言ったやん〜と思った。正直最近はご無沙汰だったので、少しくらいはいいかな…と思ってしまう私もいた。でも、その子の未来を考えたときに、この性欲に負けては絶対にダメだと自分に言い聞かせた。
私はその子に言った。「私はこれからもあなたと仲良くしていきたいと思ってる。だからえっちはしないよ。もっと大切な人にあなたの身体は見せるべきだよ。」そう言い終えると、その子は突然服を脱ぎ始めた。私は全てを諦めた。もうその子が築いてきた生き方というものは、私にはどうしようもできないところまで来ているのだなと思った。その子にとってそんな自分を認めてあげるには、自身の身体を曝け出すことでしか行えないのだ。その子の価値は自身の胸でしか表せないと断言していたように、自身の身体を誇示することでしかその子は満たされないのだなと思った。私は悔しかった。私の力ではどうにもできないのだなと思わざるを得なかった。私も同じように服を脱がされ、その子の思うがままにされた。私は抵抗する気力も湧かなかった。ここで抵抗をした方が、逆にその子を傷つけてしまうとまで思ってしまった。だから私はその子がただ満たされるために行われるこの行為を、ただ受け入れることしかできなかった。
それは朝まで続いた。ひと時も休むことなくそれは続いた。2人ともへろへろになりながら、お互いがお互いを求め合っていた。終わったときには2人ともとても幸せな気持ちに包まれていた。正直私自身もとても幸せな時間だったなと思ってしまった。本当はその子のためにも、私は、私だけは、そのような気持ちに包まれてしまってはいけないはずなのに。
そして昼まで少し仮眠をとって、夜まで家でだらだらと過ごし、その子は終電で家に帰っていった。私の選択はどうだったのだろうと思う。あれが正しかったのかはわからない。現在もその子は大学に来たり来なかったりを繰り返している。講義も休みすぎて1つ飛んだと言っていた。結局私はその子の価値観を直してあげることはできなかった。最近もその子からえっちしよう〜と誘われることがある。私があのとき家に誘ってしまったせいで、もっと沼地の方向に進ませてしまったのではないかと思っている。私は何が正解だったのだろうと今も頭を悩ませている。
私はその子に新しい価値を見出してあげたいと思っている。見出すためにいろんな方法を試していた。過去の言動を褒めてみたり他の容姿を褒めてみたり、ささやかなプレゼントを渡したり少しだけ特別扱いをしてみたり、いろんな方法を試している。でも当初と今を比較しても全くその価値観は変わらない。やっぱり未来に対する諦めがどこかに根付いているのだろうなと思う。私にはもうどうしようもできないとわかっていながらも、その子に少しでも希望を抱いてほしくて、今も陰で努力を続けている。
でも正直思っているんだ。別に今のその子が幸せに思うならこの価値観のままでもいいんじゃないかって。えっちを求められるならそれを受け入れて、随時相手の心を満たしてあげた方がその子は幸せに思うのかもしれない。私には何が正解なのかわからない。わからないからこそ、今も私は頭を抱え続けている。
