心の傷を思い出してしまうから
「はじめまして!あたし、ポチっていうの!」
ポチは、しっぽをぶんぶん振りながら
ぼくの目の前に立っていた。
近い・・・
とても・・・近いっ!!!
思わず、
一歩後ずさりしてしまった。

「ねえねえ、どこから来たの?」
「仲良し村には来たばかり?」
「好きな食べ物は?」
ポチは、次々と話しかけてくる。
悪い子じゃないのは分かる。
むしろ、
明るくて、元気で、無邪気で・・・
ぼくには無いものばかりだ。
羨ましい気持ちとは裏腹に
ぼくの口は、
なかなか開いてくれない。
(なんて答えればいいんだろう。)
(変なことを言っちゃったら、どうしよう。)
(嫌われないかな。)
頭の中で、いろんな声が回り始める。
答えようとするたびに、
言葉が喉のあたりで止まってしまう。
「……えっと…名前は、ペンちゃん..だよ。」
やっと、それだけ言えた。
「ペンちゃん!かわいいお名前!」
ポチは、ぱっと顔を輝かせた。
(良かった..。変な風には思われてなさそう。)
ぼくのことを気遣ってくれたのか
ポチが友達を呼んでくると
広場へ走っていった。
ひとりになったぼくは
そのまま、石の上に座り込んだ。
(いきなり大勢と話すのは怖いな…)
本当はポチと話してみたかった。
ポチのことを、もっと知りたいと思った。
だけど、
何から聞けばいいのか分からなくて
何も聞けなかった。
どうして、
人と距離を置いてしまうんだろう・・・
考えていたら、なんとなくこう思った。
きっと、怖いんだ。
距離を縮めて、傷つくのが。
仲良くなろうとして、また外側に立ってしまうのが。
「ここにいていいよ」って思えたのに、
「やっぱり違った」ってなるのが。
だから、近づく前に、
自分から距離を置いてしまう。
それは、ぼくの心を守るための、
バリアみたいなのかもしれないと思った。
「ペンちゃーん!」
ポチが走りながら戻ってくる。
「お友達、今日は忙しいから
また今度ねって!」
「……そっか、大丈夫だよ。」
ぼくは内心ほっとした。
今は、少しだけポチと話せたら
それでいいと思ってたから。
「..あのねっ…!
本当は、もう少しだけ
君と話してみたいと思ってるんだ。」
ぼくは少しだけ
勇気を振り絞って伝えてみた。
「うん!いいよ!お話しよっ♪」
ポチは、ぱっと笑って
ぼくの隣にそっと座ってくれた。

距離を縮めるのは、まだ怖い。
でも、ポチはどうしてこんなに明るいのか
もっと聞いてみたかったんだ。
── 第5話へ続く ──
人と距離を置いてしまうのは、 弱いからじゃない。
それだけ、傷ついてきたということ。
でも、
怖いまま一歩踏み出そうとするその姿は
とても勇敢で、とても勇気のいることだと思う。
このお話を読んで、どんな気持ちになりましたか?
人と距離を置いてしまうこと、ありますか?
よかったら、コメントで教えてくださいね。
次のお話は、 「なぜ理由のない選択が不安になるのか」です。
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