【MTG:Pauper】エルフの歴史
まず初めに、この記事を通して『エルフ』を完全に攻略してやるぜ!弱点を教えな!って方向けの結論を先に展開します。
『エルフ』はパウパー随一の横並びデッキです。そのため、全体除去に弱いです。つまり、いっぱい除去を打ちましょう!終わり!帰りな!!!
※本記事は全文無料ですが、面白かったよ!という方は記事を購入していただけると幸いです。
MTG専門店晴れる屋さんの『晴れトーーク!パウパーエルフ編』に出演してきました角とうふです。
今回は『晴れトーーク』では話しきれないパウパーのエルフの歴史について見ていこうと思います。主にデッキリストの偏位を眺めて適宜解説を挟む形となりますが、これを元に次の世代の『エルフ』の構築に活きるための資料になれば幸いです。
なお、現代パウパー・エルフは知っている方向けに記載しているので、エルフ何もわからん!という方はどのリストでも良いので、一度全体のカードの効果に目を通してもらえると話が分かりやすいかと思います。
■黎明期 『エルフ』 デッキの原型

パウパーの黎明期をいつと考えるか。2008年12月1日に《頭蓋囲い》の禁止制定と共にMTG Onlineに産声を上げたパウパーだが、今回参考にした晴れる屋のデッキ検索では上記のリストが最古の『エルフ』のリストだったので、今回はここから解説を始めたい。
まず土地の枚数だが、12枚あると80%で初手に1枚土地が来る計算のため、《ラノワールのエルフ》や《クウィリーオン・レインジャー》などの①マナのマナクリから動ける『エルフ』ではこの12〜14枚程度の土地の枚数を取るのが基本。序盤に土地を4枚引くとフラッドしたな〜という印象です。
昨今では全く見なくなったカードもあるので、改めてコンボ要素についても見ていこう。

古えの『エルフ』といえば《遠くの旋律》で大量ドロー、大量展開を目的とするデッキでした。昨今の『エルフ』しか知らないプレイヤーからすると驚くかもしれませんが、《遠くの旋律》で引く枚数は7枚程度ではありません。20枚くらい引きます。
そんなに展開できるの!?そんなに引いて手札が溢れないの!?
── いいえ、溢れません。

大量展開の鍵となるのは、意外にもエルフ分のマナの出る《ティタニアの僧侶》ではなく、召喚酔いの影響を受けない通称タップ・アウトレット能力を持つ《樺の知識のレインジャー》です。展開したエルフ2体から即座に①マナを出せるおかげで、②マナあれば①マナのエルフを3体出せます。
そこに《リス・アラナの狩りの達人》がいると、手札のエルフを唱えると1/1のエルフ・トークンを出してくれるおかげで、唱えたエルフとトークンをタップすると再度①マナが出ます。
また、《イラクサの歩哨》がいる場合は、エルフ(緑の呪文)を唱えたのでイラクサがアンタップ、イラクサと唱えたエルフをタップして再度①マナが出るので、樺の知識+(イラクサorリス・アラナ)が揃うと、手札の①マナエルフを全て展開することが可能です。
さらに、イラクサやリス・アラナが複数体いる状況では、マナを払ってクリーチャーを展開したはずが、使えるマナが徐々に増えていくのでもう展開を止めることは出来ませんね。
次のターンで《森林守りのエルフ》や、並べたエルフ達で総攻撃を仕掛けてフィニッシュです。

この頃の構築の特徴としては、《樺の知識のレインジャー》以外に青マナを出せるマナクリがいないため、《森のレインジャー》から《島》をサーチしていたことが挙げられます。昨今では『エルフ・スパイ』などで再活躍させられて嬉しいですね。
◆当時のエルフ対策

また、この頃の特徴は相手の全体除去が弱いこと。
《墓所のネズミ》や《黒死病》は今も変わらず天敵ですが、全体2点の《焦熱の連続砲撃》が出たのが2020年11月で、それまでは《電謀》や《減縮》などの全体1点までしかエルフを咎めるものはありませんでした。

これを耐えるのが全体+0/+1到達付与の《蜘蛛糸の鎧》です。当時猛威を奮っていた『フェアリー』の対策になりつつ、全体火力を無力化するとんでもないカードでしたね。

ちなみに《クラーク族のシャーマン》は?と気になる方がいるかもしれませんが、この頃の『親和』はブリッジランドがないため、縦置きのアーティファクト土地しか採用しておらず、《血の泉》もないため現代のミッドレンジ調の構築より、《エイトグ》を採用したアグロデッキだったため、クラーク族はサイドに1〜2枚入っているかいないか程度の採用でした。
◆フィニッシャーと現代ドローソースの獲得

《エルフの先兵》は2016年6月の「エターナルマスターズ」からのコモン落ちで参加。一気に横並べして殴って勝つエルフにおいて、全体除去に耐えるフィニッシャーを獲得した功績は大きく、長らく《森林守りのエルフ》と《エルフの先兵》の二大フィニッシャーを軸に戦うのが『エルフ』のスタイルとして確立されました。

《暴走の先導》は2017年11月の「アイコニックマスターズ」でコモン落ち、《紆余曲折》は2019年6月の「モダンホライズン」で収録され、《遠くの旋律》1種だった『エルフ』は徐々に安定感を増していきました。
特に緑のドロソが2種8枚になってからは《遠くの旋律》抜きの"緑単"とする構築も現れるようになりました。緑のドロソはクリーチャーしか手札に加えられないため、最高効率でカードを引くためにスペルを減らしてクリーチャーに代替していくのはこの影響が大きいです。
■ヤスペラと虹色のサイドボードの獲得

2021年2月の「カルドハイム」に収録された《ヤスペラの歩哨》は、タップ能力ではあるものの《樺の知識のレインジャー》と同じく好きな色を出すことのできる①マナエルフの2種8枚目。これを獲得したことで《島》と《森のレインジャー》を不採用としつつ、青以外のカラーもタッチすることが可能になりました。
同じく「カルドハイム」から《仮面の蛮人》が採用されるようになりましたが、この時期はサイドに他の置物対策とスプリットするくらいでした。
2021年6月に「モダンホライズン2」で『グリクシス親和』が隆盛し、《クラーク族のシャーマン》を多く見かけるようになってからは、《遠くの旋律》で大量ドローを狙うのは難しくなり、メインは"緑単"、サイド後《青霊破》をタッチする"多色型"となるのが主流となっていきました。(※リス・ストーム期の話は割愛)
■フィニッシャーの交換と蛮人のメイン昇格

ここからは飛ばし気味に行きますが、近年ではいわゆる"名誉エルフ"枠に怒涛の新戦力の追加がありました。
2022年6月「統率者レジェンズ:バルダーズ・ゲートの戦い」から《復讐する狩人》、
2023年6月「指輪物語:中つ国の伝承」から《気前のよいエント》、
2024年6月「モダンホライズン3」から《ニクス生まれのハイドラ》が収録。各カードがそれぞれ現代構築には欠かせない新戦力となりました。

《復讐する狩人》は最速3ターン目に着地し、4ターン目にイニシアチブの「鍛冶場」で+2/+2されて7点、5ターン目に「罠だ!」で5点+7点アタックで19点、隣に1/1のマナエルフがいるはずなので、妨害が無ければ着地から2ターンでライフを削り切る圧倒的クロックです。しかも、イニシアチブは狩人が除去されてもアドバンテージを稼ぎ続けるので、『エルフ』が苦手とする除去コントロール相手に刺さる最強のフィニッシャーです。
《気前のよいエント》は、緑のドロソで拾える土地&マナフラ受けの5/7はサイズが頼もしく、安定度の向上をもたらしてくれました。また、自分から墓地に行けることから《仮面の蛮人》と相性が良く、ブリッジランドを採用する『ジャンド』や『グリクシス親和』を牽制するために《仮面の蛮人》をメインに採用されるのが主流となりました。
最後の《ニクス生まれのハイドラ》は、流石モダホラ産のフィニッシャーと言わざるを得ない性能で、これまでの『エルフ』は《森林守りのエルフ》や《復讐する狩人》などの"見える脅威"に対して除去を要求するデッキでした。しかし、ハイドラは授与で実質速攻のように動けることから、マナクリ放置≒即死を狙えることで、キルターンのギアが一段階上がりました。さらに授与の特性上、授与先とハイドラで除去を2枚要求するのも対コントロールへの耐性を上げました。
ただ、2025年3月末の禁止改訂を迎えるまで、『サディストコンボ』『赤単カルドーサ』『グリクシス親和』の三代勢力には対抗できるほどの力はありませんでした。
■緑単エルフとしてTier1に

執筆時点(2026年9月現在)で、『エルフ』はTier1にまで登り詰めました。これは2025年4月の「タルキール:龍嵐録」で《サグの原生龍》を獲得したことよりも、これまでのデッキの強度が高まりと、他のTier1である『青単テラー』に対して優位に出られる立ち位置の良さも影響しています。

さて、マジック・ザ・ギャザリングにおいて、基本的には色を足した方が強いとされています。一色だけでは補えない弱点、または強みを伸ばす意味合いで色を足すのが通説です。
もちろん、これに逆らう場合もあります。同じくTier1の『青単テラー』や『赤単マッドネス』においては、多色化によるタップイン土地を採用するテンポロスを嫌い、単色化を図っています。
しかし、『エルフ』の場合はどうでしょう。樺の知識、ヤスペラを8枚採用するだけで多色化を図っており、タップイン土地は採用しておりません。前述の通り、樺の知識はエルフの爆発力の鍵にもなっているので、これを採用しないのは不条理のようにも感じないでしょうか?
◆最大の鍵はイニシアチブ

エルフ村の結論が"緑単"になったのは《復讐する狩人》。このカード1枚につきます。メインプランに横並びを必須とする『エルフ』では、イニシアチブが無い頃は除去を打たれ続けるだけで本調子を出せませんでしたが、一度イニシアチブを取れば、相手の反撃を受けるまで攻めのターンが続きます。
これがコントロールに刺さるのは前述の通りですが、『エルフ』が最も苦手な相手としていた『グリクシス親和』にも、序盤アーティファクトを並べている隙に狩人を出せれば、有利不利を覆すほどの優位を築くことができました。
それなら、これを狙っていきたいですよね。
ここからは座学的な話になりますが、この《復讐する狩人》を最速3ターン目に叩きつけるためのルートは主なルートは以下になります。
❶:《ティタニアの僧侶》+ 森2枚 +《クウィリーオン・レインジャー》(後出し可)

《森》から《クウィリーオン・レインジャー》を唱え、《ティタニアの僧侶》から②マナ。クウィリーオンの能力でティタニアをアンタップし、ティタニアと森からもう③マナ出して、合計⑤マナで《復讐する狩人》が出ます。
❷:《ティタニアの僧侶》+《ラノワールのエルフ》+森2枚

❸:《ティタニアの僧侶》+ エルフ(何でも) +森3枚

❹:《ラノワールのエルフ》+《クウィリーオン・レインジャー》+森2枚

❺:《ラノワールのエルフ》+《ラノワールのエルフ》+森3枚

❻:《ヤスペラの歩哨》+ エルフ(何でも) + 《クウィリーオン・レインジャー》+森2枚

ヤスペラの場合はエルフ以外のクリーチャーでも代用可。
森2枚+ヤスペラ&エルフをタップで合計③マナ。クウィリーオンで森を戻してヤスペラをアンタップし、森をプレイ+ヤスペラ&クウィリーオンでさらに②マナ出して、合計⑤マナで《復讐する狩人》が唱えられます。
❼:《ヤスペラの歩哨》+ エルフ(何でも) + 《ラノワールのエルフ》+森3枚

❽:《ヤスペラの歩哨》2枚+ エルフ(何でも)2枚 + 森3枚

ヤスペラの場合はエルフ以外のクリーチャーでも代用可。
◆多色化のデメリット
さて、この主な8つのルートを見ただけで『エルフ』が"緑単"になった理由にピンと来た方は、中々にエルフのセンスがありますよ。
《復讐する狩人》は強力なカードです。それゆえに相手は当然妨害を狙って来ます。単体除去ならいざ知らず、せっかく並べたエルフたちを全体除去で流されるのはこちらも警戒したいです。このとき、《ヤスペラの歩哨》と《樺の知識のレインジャー》は①マナの捻出にもう一体のエルフを要求する分、全体除去の影響をモロに受けやすいのです。

相手の全体除去との1:2交換程度なら《紆余曲折》などのリソース手段で回復するのは容易いですが、1:3以上の交換はドロソでクリーチャーを引ける期待値的にも少々厳しいです。

多色型のメリットとして、サイド後に《青霊破》などを採用でき《クラーク族のシャーマン》や《ブレス攻撃》に対応できる点もありました。しかし、これはヤスペラ系が出せており、かつ手札にドロソで拾えない《青霊破》を素引きしている必要があります。さらに、ヤスペラ系を引けていない場合は《青霊破》だけを引いているときは、無駄札を抱えるリスクもありました。
そこで従来の"多色"型では ヤスペラ系:ラノエル系 が 8:4 で採用されていましたが、最速で《復讐する狩人》を狙いつつ、途中で全体除去を打たれても被害を最小限に抑えるため、ラノエル系の枚数を増量した、現在の 0:8~10 程度のラノエル系のみに絞った緑単型が主流となりました。
◆番外編:色タッチ型

この記事で書きたかったのは、「"緑単"は《復讐する狩人》を出すのに注力した構築なのだ!」って部分だったのですが、歴史を語る上でこういう構築も試してましたよってのも書いておきたかったので番外編。
"多色"型にするにはヤスペラ系を8枚採用するのが常でしたが、《青霊破》のために青一色をタッチするだけなら、他にも方法があります。

《土地譲渡》と《気前のよいエント》は「森・島」である《絡みつく島嶼域》を、

《サグの原生龍》(と一応《復讐する狩人》)で《島》をサーチしようとすると、18枚が青マナにアクセスできるので、これでもしっかりと色が出る構成になっています。
《青霊破》を採用する意図としては、厄介な全体除去である《クラーク族のシャーマン》を始め、新たに現れた一番不利な相手の『赤単マッドネス』に対抗するために組まれました。

特徴としてはほぼほぼラノエルな《東屋のエルフ》を採用していることで、森でもある《絡みつく島嶼域》をタップインから即アンタップできるために4枚採用されていました。
一見《青霊破》を取りつつ、ラノエル系の枚数もいっぱい取っていて"緑単"と"多色"型の良いとこ取りに見える"タッチ"型ですが、《絡みつく島嶼域》のタップインがテンポロスになる点や、意外と"緑単"と比較しても『グリクシス親和』と『赤単マッドネス』への勝率が変わらない点。そして、デメリットとして、《土地譲渡》で手札を公開したときの『青単テラー』への耐性の低下(初手の土地譲渡を打ち消されたら即死)などが原因で、やはり"緑単"が主流になりました。
ちなみに、《稲妻》をサイドに入れるために赤タッチ型もありました。『エルフ』の構築は自由ですね。(今なら《汚損破》をタッチしたって良いですね!)
Testing Elves for trios under @ComboGiorgio's suggestion. pic.twitter.com/QFl0TTD1FN
— Walker735 (@paolo_donfra) December 29, 2025
■エルフの進化は止まらない!

新しい歯が16日おきに生えてくるの。
もっと近くで見てみましょう。」
――ビビアン・リード
Secret Lair × MSCHF「The Zeta Set」にて、レアから衝撃のコモン落ちを迎えた5/10/10の《ギガントサウルス》。これを一番上手く使えるのが『エルフ』なのではないかとエルフ村では現在、日々研究が進んでいます。
採用理由としては、"緑単"ではGGGGGの色拘束が苦にならないこと、トランプルを付与できる《ニクス生まれのハイドラ》を4枚+緑のドロソ8枚で探せる構成を取れていることや、《復讐する狩人》と同じく5マナ域のため、最速3T目に叩きつける土台がしっかりしていることがあります。
また、この記事内で散々もてはやした《復讐する狩人》ですが、イニチアチブの特性上、相手の飛行戦力にイニシアチブを盗られることからハイリスク・ハイリターンなカードでもあります。
しかし、《ギガントサウルス》は確定除去には耐性が無いものの、火力除去には滅法強く、10/10で2回殴ればゲームエンドとローリスク・ハイリターンのカードであるため、出しにくいという局面がありません。意外とイケるんじゃないかと思って、最近使った大会では《ギガントサウルス》が大活躍の上で優勝しました。
MINT GAMES MTG 東京・東日本橋 Top4 パウパーに「ギガントエルフ」で参戦!
— 角とうふ (@TunoTofu) September 13, 2026
エルドラージトロン⭕️⭕️
エスパー親和⭕️⭕️
スゥルタイ・パーティ⭕️⭕️
ID
2nd
T4: 壁スパイ❌⭕️⭕️
F : 赤単マッドネス⭕️❌⭕️
決勝はG1、G3でギガントサウルスを叩きつけて優勝🏆
赤単も親和も克服した最強デッキです🧝♀️ pic.twitter.com/lCMd8fxj6T
『晴れトーーク!パウパーエルフ編』で、筆者は『エルフ』の好きなところに「拡張性が高い」ことを挙げました。毎セットごとにコモンレビューを書いている筆者ですが、『エルフ』に何が入るかは正直わかりません。
振り返ってみれば《復讐する狩人》も、除去の1枚も入っていない『エルフ』に入れるのにすら懐疑的な時期もありました。

赤単対策にゲインカードをサイドボードに取るときは、古今東西のあらゆるカードが試されてきました。これらのカードにはいずれも単純性能だけでは意外と甲乙つけがたく、環境を鑑みて採用枚数が変わっていきました。
色のタッチも可能、ビックマナも可能な『エルフ』において、実質的にどんなカードでも採用することができると思います。
何でも入れられる『エルフ』を極めるには、何でも試してみるのが一番だと思いますが、温故知新としてこの記事がその一助になれば幸いです。
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