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#47 早稲アカがサピックスを超える日

「中学受験をするならサピックス」
ここ20年近く、首都圏では半ば常識のように語られてきた言葉です。
開成、桜蔭、筑駒、聖光、渋幕。
難関校の合格実績を見ると、上位には必ずサピックスの名前が並びます。保護者会でもSNSでも、「まずサピックスに入れれば安心」という空気が存在してきました。
サピックスに入り、特に上位のαクラスで学べば難関校合格は約束されたようなもの。エリートコース確定。そう言われることもあります。

しかし2026年現在、その勢力図に少しずつ変化が起きています。
早稲田アカデミーの躍進が止まりません。


直近3年の男子御三家+駒場東邦の合格者数

早稲田アカデミーからの合格者が急増しているのが分かります。
学校別で見ると、もう武蔵は早稲アカが追い抜きました。
ただし、男子校の最高峰、開成ではサピックスがトップを保っています。

直近3年の女子御三家+豊島岡女子の合格者数

女子においても同じ傾向がみられます。
学校別で見ると、雙葉は早稲アカがトップになっています。
ただし、女子の最高峰 桜蔭は、サピックスが首位を保っています。

今回は、「早稲アカがサピックスを抜かす日」という少々刺激的なテーマについて考えてみたいと思います。

① サピックス一強時代はどのように作られたのか

2000年代以降、中学受験界を支配したのは間違いなくサピックスでした。
かつて御三家に強かったのは日能研です。
また、サピックスの母体となったTAPも受験塾大手として有名でした。

しかし、
・細かいクラス分け
・毎月の組分けテスト
・高度な教材
・圧倒的な演習量
こういった施策により、最難関層の受験生をを大量に集めることに成功しました。

日能研ほど大規模なクラスにせず、小学校と差別化しました。また、完全な能力主義をかかげ、毎月クラス分けするだけでなく毎週クラス替えをマイナーチェンジし続け、適度な緊張感で授業を行いました。

校舎には監視カメラが作られ、むかえにきた保護者は受付でモニターをみながら我が子が出てくるのを待つことができます。
後者の前には警備員が立ち、教室の内装もパーテーションを主とした白系の色に統一され、伝統塾とは異なる新しく洗練されたイメージが売りとされました。

ひとたび実績が出るようになると、連鎖反応が始まりました。
優秀な子が集まって実績がでることで、次の学年にも評判を聞いて優秀な生徒が集まります。
優秀な子がさらに伸びることで、合格実績が増えます。優秀な生徒は優秀な生徒を紹介してくれ、この連鎖反応が縦にも横にも広がったのです。

サピックスはドミナント戦略をとらず、無闇に大量の校舎を立てませんでした。入塾テストは高いレベルに据え置かれ、入塾希望者でもかなりの数がふるい落とされました。
講師の質も高く、アルバイトの大学生はかなり厳選されました。やがて、元サピックスの塾生を優先的に採用するようになり、講師の質も担保されていきます。

この好循環が20年以上続いたのです。
現在でも開成や桜蔭の合格者数だけを見れば、サピックスは圧倒的です。
しかし、それは「首都圏全体」で見るとどうでしょうか。

② 実はサピックスはグノーブルに客をとられている

最難関層の間では、最近こんな言葉を聞くようになりました。
「サピックスよりグノーブル」

もちろん塾全体の規模ではありません。
校舎数も生徒数もサピックスの圧勝です。
しかし、上位層の満足度という意味では、グノーブルの評価が非常に高まっています。
グノーブルはサピックスのメソッドを受け継ぐ形で近年設立された塾で、力を伸ばしつつあるのです。
理由は大きく三つあります。

(1)授業がわかりやすい

サピックスは「考えさせる授業」です。
一方グノーブルは、「理解させる授業」を重視します。
難問を放り投げるのではなく、解法まで丁寧に導く。
この授業力への評価が極めて高いのです。
テキストを都度配り、予習させない授業スタイルはサピックスと同様です。しかし、テキストのクオリティや難易度ではグノーブルのほうが上ではないか?という声も、近年聞こえてきました。

(2)面倒見が良い
サピックスは自立型です。
質問しなければ教えてくれません。
それに、その質問も、はっきり何時から何時に〇〇先生に質問できる、と確約されている訳ではありません。

しかしグノーブルは、「先生が見てくれる」感覚があります。
上位層ほど、「放置されるより管理してほしい
というニーズが年々強くなっていると言われます。
このニーズに応えることができるのはサピックスよりグノーブルなのでしょう。

(3)校舎規模が小さい
サピックスの大規模校では、300人、400人と生徒を抱えています。
グノーブルでは、多くても100人前後。
先生との距離感がまるで違います。
結果として、「サピックスをやめてグノーブルへ」
という流れが徐々に生まれているのです。

③ サピックスの弱点

もちろんサピックスは今でも最強です。しかし弱点もあります。
(1)家庭負担が大きい

サピックスは、小4からずっと親の管理が必須です。大量のプリント類と大量の課題。
プリント類は、毎授業配られていきますので、整理整頓しないと大変なことになります。
そして、やるべきことを管理して適切に優先順位を決めて宿題をしていかないと、授業についていけなくなり、成績の低下やクラスの低下をもたらすでしょう。

このシステムは、共働き家庭にはかなり厳しいです。もちろん、中学受験に保護者の管理は必須なのですが、かなりの労力がかかることが前提だと、親も二の足を踏むでしょう。

(2)下位層に厳しい
サピックスでは、上位クラスであるα(アルファ)に入れば楽しいでしょう。
しかし下位クラスになると、
「何をやればいいかわからない」という状態になります。
こうなったとき、サピックス側から手がさしのべられるケースは少ないようです。
理性的に最低限のレールをつくり、あとは自己責任に任せていくのがサピックスのやり方です。手とり足とり面倒を見たり、家庭学習まで厳しく管理したりはしません。
塾側からの管理型を望む家庭からは、サピックスは敬遠されることもあるのです。

(3)授業だけでは完結しない
サピックスは復習主義。
テキストは授業毎に配られますから、基本的には単元の予習はできません。
つまり、家でやらない子は伸びません。
逆に言えば、
親が伴走できない家庭には難しい塾です。

④ そこに現れたのが早稲田アカデミー

早稲アカの強みは明快です。
先生が引っ張り、塾が徹底的に学習を管理します。
熱量で支えてくれます。
サピックスが自走型なら、早稲アカは牽引型
この違いは非常に大きいのです。
体育会系の塾ですから、ノリが強引だったり、受験に向かって後ろ向きのことを言うことを許さない、といった雰囲気作りは強いです。
体育会系の部活に親しんだ保護者、小さい頃からスポーツなどで上下関係や師弟関係にある程度慣れている保護者にとっては、突き放しているように見えるサピックスより、「アツい」早稲アカの方がよく見えるケースはあるでしょう。

(1)NNの成功
現在、難関校対策で最も評価されている講座の一つがNNです。
「なにがなんでも」の略称コースで、その学校に合格するために必要なことを教える、という志望校特化型の学習コースになります。

実際、ひとつの学校にしぼって学習したら絶対その学校に合格できるか、というとそれは確実ではありません。
しかし、1教科から受講できるシステムや、オンラインでも受講できるシステムが含まれた志望校対策コースは、他塾生にとっても魅力的に見えるものです。

「最後の半年だけNN」という家庭は珍しくありません。サピックスに通っていても、NNのコースだけ重複で申し込む生徒も増えているのです。
最後の仕上げを早稲アカに任せる」という現象は増えています。

(2)共働き家庭との相性
近年、共働き世帯が急増しています。
共働きでは、夜11時まで復習を見たり土日に丸一日管理したりすることは困難です。

そうすると、
・宿題管理
・確認テスト
・面談
・電話
が充実している早稲アカが支持されるのです。

⑤ 中学受験そのものが変わっている

昔の難関校受験は、「天才を選ぶ試験」でした。ひらめき重視、超難問が並び、多くの知識を暗記する必要があったのです。
天才でなくても、驚異的な記憶力と膨大な学習時間を求められた時代でした。

しかし現在は、「努力できる子を選ぶ試験」になっています。思考力の問題が増え、暗記知識に頼った入試ではなくなりました。

そのため、管理型指導。伴走型指導
モチベーション指導。
これらの重要性が増しているのです。

⑥ サピックスの牙城は崩れるのか

結論から言えば、すぐには崩れません。
開成。桜蔭。筑駒。
これらの最高峰の学校の合格実績は依然として圧倒的です。
しかし、
「最難関ならサピックス一択」という時代は終わりつつあります。

上位層
サピックス → グノーブル
中上位層
サピックス → 早稲アカ
共働き家庭
サピックス → 早稲アカ

こうした流れは今後さらに強くなるでしょう。

私は、
「サピックスが急激に落ちる」とは思いません。
しかし、サピックス、早稲アカ、グノーブルの三極化が進むことでしょう。
そして、5年先。早稲アカはさらに、サピックスに肉薄していることは間違いないと思います。

まとめ

かつて中学受験界は、日能研の時代でした。
その後、サピックスが覇権を握りました。
そして今、サピックスの上位層はグノーブルへ。中間層は早稲アカへ。
少しずつ流れ始めています。

サピックスは今でも最強です。
しかし、「最強」と「唯一」は違います
親が伴走できる家庭ならサピックス。
先生に引っ張ってほしいなら早稲アカ。
少人数で深く学びたいならグノーブル。

これからの中学受験は、
「どの塾が一番か」ではなく、
「どの塾がその子に合うか」
を考える時代になっていくでしょう。

サピックスが御三家合格者の総数で早稲田アカデミーに敗れるXデーは、案外遠くないのかもしれません。


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