「自分の動作データ」と「相手の動作データ」は、見方が180度違う
いまやジュニアスポーツの現場でも、スマホで動画を撮るのが当たり前になりましたよね。
子どものバッティングやシュートフォームをスローで確認したり、次の対戦相手の試合動画をコマ送りで見直したり。熱心な親御さんや指導者の方ほど、スマホのストレージが動画でパンパンになっているんじゃないかと思います。
でも、少しだけ立ち止まって振り返ってみてほしいんです。
「自分のチーム(子ども)の動画」と「対戦相手の動画」、同じような目線で漠然と眺めてしまっていませんか?
どちらに対しても「ここが綺麗だな」「ここが崩れてるな」と、同じフォームチェックのノリで見てしまう。実はこれ、せっかく撮影した動画や動作データの価値を半分も使い切れていない状態なんです。
断言しますが、自分のデータと相手のデータでは、見る目的がまったく違います。
自分を見るのは「鏡」、相手を見るのは「レンズ」 私が考えるデータの役割は、驚くほどシンプルです。 自分の動作データは、いまの「現在地」をありのままに知るための『鏡』。 相手の動作データは、曖昧な印象を数値化して僅かな隙を見つける『レンズ』。 この2つを明確に分けること。そして、お互いの現在地から「距離感」を測り、相手の物理的な隙をどう突くかを考えること。つまり、「自分たちの今の実力で、相手のこの隙を突くには何が必要か」という差分を埋める作業です。これこそが、データを現場の戦術に落とし込む本当の面白さなんですよね。
それぞれどういうことか、少し具体的に掘り下げてみます。
自分のデータは「良し悪しで裁く」ためじゃない
子どもの動作データを解析するとき、いちばんやってしまいがちなのが「プロと比べてここがダメ」「形が崩れているから直せ」と、良し悪しのジャッジに使ってしまうことです。
でも、本当に大事なのはそこではありません。
子ども自身の「こう動かしているつもり(主観の感覚)」と、「実際にどう動いているか(客観の数値)」のズレを埋めること。つまり、今の自分の「現在地」をただ正確に知るための鏡として使うんです。
「もっと肘を上げろ!」と何度言葉で怒鳴っても、子ども本人は「上げているつもり」だったりします。そこで客観的な骨格データを見せて、「ほら、感覚よりあと5度だけ下がってるよね」と事実を共有する。自分を責めるためではなく、スタート地点を確認するために自分のデータを使います。
相手のデータは「指導者の勘」を攻略の武器に変える
一方で、相手の動作データを見る目的はまったく異なります。相手のフォームを綺麗に直してあげる必要なんてどこにもないからです。
見るべきは、「相手の物理的な隙」です。
現場の指導者って、長年の経験から「なんかあの子、試合後半になるとインコースの対応が遅れるな」「シュートのとき、右にドライブした直後は少し身体が流れるな」といった鋭い“勘(定性的な印象)”を持っていますよね。あれ、本当に素晴らしい感覚なんです。
でも、「なんか苦手そう」という曖昧な印象のままだと、子どもたちには確信を持って伝えられません。
そこで相手の動作データの出番です。 「ほら、疲れてくると膝の沈み込みが浅くなって、バットの出が遅れてる。だから後半は内角勝負でいけるぞ」
指導者の勘という曖昧な印象を、動作データというレンズを通して数値化・可視化する。そうすると、子どもたちにとっても「狙うべき理由」がはっきりと見え、チーム全員で僅かな隙を突く明確な戦術が作れるようになります。 もし勘だけに頼って戦略を立ててしまうと、それが外れた時に「なぜ外れたのか」を再び勘で探らなくてはならず、迷走してしまうリスクがあります。 しかし、相手の動作データに基づいた戦略であれば、結果がどうあれ「データ上のどこにズレがあったのか」を客観的に分析し、次の一手を再構築できます。また、根拠が数値化されているため、指導者の意図を言葉にしてチーム全員で共有するのも容易になります。
「現在地の距離感」がわかると、スポーツはもっと面白くなる
自分たちの確かな現在地(鏡)を知り、相手の曖昧な印象を数値化して隙(レンズ)を見つける。
この両者の距離感を測れるようになると、ジュニアスポーツの駆け引きは一気に面白くなります。「相手がこう動くなら、今の自分たちの武器ならここを突けるよね」と、子どもたち自身が頭を使ってプレーを楽しめるようになるからです。
指導者の勘や経験を否定したいわけじゃありません。むしろ逆で、現場の熱い感覚を、客観的なデータで裏付けしてあげたい。
言葉だけの指導で子どもとすれ違うもどかしさを、テクノロジーで少しでも解消したいんです。
その第一歩として、まずは大掛かりな機材を使わず、スマホひとつで「子どもの動作の現在地」を知ることから試してみてほしいと思っています。
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