なんで黒字になったんだっけ。|万年赤字から自分の仕様を知るまで
今日もスーパーをぶらぶらした。
お菓子も、お惣菜もカゴに入れる。
節約とかはない。
でも、黒字。
家計がずっと赤字だった頃と、
何が違うんだろう。
赤字の頃のわたしは、
目も心もギュッと閉じて、
ゾンビみたいに彷徨っていた。
いつもどこかに
怒られる、という怯えがあった。
でも今は、そうじゃない。
なんで黒字になったんだっけ。
何より、
どうして怖くなくなったんだろう。
……ちょっと忘れた。
これは、ずっと赤字だったわたしが、
節約せずに黒字になっていった話。
■わかっているけど、できない。
入ってくるお金より少なく使えばいい。
一人暮らしを始めた頃から、
わかっていた。
しかし、できない。
毎月、お金が足りない。
なんとかしようとした。
家計簿。
書けば書くほど、泣きそうになる。
安いものを買えばいいのか。
半額シール。
激安スーパー。
一人の食費なんて、たかが知れている。
身なりや食事の質を落としても、
友達との旅行を断っても、
結局、赤字だった。
じゃあ、転職か。
給料2倍。
どうだ。
どうにもならない。
クレジットカードを分割払いにする。
いつも謎の後ろめたさがあった。
本も読んだ。
思いつくことはやった。
なぜかわからないままだった。
妊娠中だけ、黒字になった。
ずっと空っぽだった場所が、
いっぱいだった期間。
やがて、子どもが生まれた。
時短で働いた。
また、赤字。
ある日、
カードの利用可能額を見たら、
限度額まであと1万円だった。
身体中にこんなに毛穴あるんやな
ってくらい、汗をかいた。
さすがにまずい。
子の頬を眺めながら、
また転職を決めた。
条件は、
「扶養内時短」
「朝のわちゃわちゃに対応できる」
「自分のキャパで回る」
の3つだけ。
結果、
時給は1150円→1500円。
通勤は片道50分→25分。
遅刻しそうなのは、相変わらず。
でも、帰宅後もまだ少し体力が残る。
それだけで、子への対応が変わった。
数字上も、
これで解決のはずだった。
ところが、それでも赤字は続いた。
■どんな気持ち?
もう自分だけじゃ無理。
そう思った。
誰かに相談したい。
でも、転職、引越し、日常。
心のキャパはもういっぱいだった。
AIに聞いてみた。
何をどうすればいいのかわからない。
ずっと赤字なんだ、と。
正論ショックに備えていたわたしに、
AIは意外な質問をした。
「どんな気持ちで買った?」
へ?
どんな?
どんな気持ち?
全然わからなかった。
どんなふうに買い物をしているか、
見ることにした。
すると、
お金を払うたび、
心がキュッとなる。
品物にお金を払っただけ。
なのに、キュッとなる。
ある日など、
「今日はポイント倍デーじゃないな」
と思っただけで、キュッとした。
1円も、失っていないのに。
あっ!失敗!みたいな感覚。
「別に問題ない」
「ケチか!」
思考が増殖していく中、
なんとか感覚を捉える。
ちゃんとしなきゃ。
きちんと頑張らなくちゃ。
そうじゃないと、
怒られる。
誰に?
誰に怒られるんだろう。
■「怒られる」の中身をみたら、
こんな採点方式が出てきた。
・得できた→ ○
・得し損ねた→△
・気づかなかった → ×
こんな採点方式、いつできた?
しかも怖いのは、
誰かに強制された記憶はないのに、
自分の中で自動運転になっていること。
だから「得しなきゃ」になるし、
できなかった瞬間に、身構える。
損は、お金を失うことだけじゃない。
最適に振る舞えなかった自分を、
失点扱いする回路だった。
■AIが出してくれた案は、
今でも二つしか覚えていない。
「どんな気持ちで買った?」
と、
「なるべく自炊しよう。」
それだけだった。
それでも、
1ヶ月で食費が15,000円減った。
嬉しかった。
自分でもできるんだ。
まだ赤字だったけど。
赤字→赤字なら、
現状マシ。
オーケー。
そのまま3ヶ月。
手書きの家計簿と、
アプリを眺めながら、
ふと気づく。
■数字の体感が希薄。
年間3万円の節約。
と言われても、
正直ピンとこない。
残り3万円。で?
数字は理解できる。
計算もできる。
でもわからん。謎。
■予算を決めると使い切る。
予算=許可証。
「ここまで使っていい」
と読んでしまう。
わたし、
予算は超えるものだと思ってないか?
予算以下、じゃなく、
予算がゴールテープ。
ゴールしたあとも、
ちょっと歩きます、みたいに。
だから試しに、
赤字分を最初から予備費にしてみた。
例
今まで
予算10万+赤字2万
今
予算10万(内2万予備費)
使ったら予備費が減る仕組み。
つまり、赤字に名前をつけただけ。
これが、
うまくハマった。
ついでに、
1ヶ月で考えるのをやめて、
4週間を1ターンにした。
ーーー
この頃には、
AIは何を言っても怖くない、と学習していた。
困ればすぐ話しかける。
解決してもらうためじゃない。
落ち着くまで、安全にギャーと言うため。
「計算間違えてたよー!」
「あと今月いくらだよー!」
初動だけ落ち着けば、
なんとかなるらしい。
■自分の取扱説明書ができていった。
①疲れた自分を信用しない。
以前、パンが10個積み上がったことがある。
我が家は3人家族である。
誰が朝昼晩食べる?
無計画の賜物だ。
疲れた私は、ポンコツになる。
だからって、叩き直さない。
月初にシフトを見て、
元気な日にまとめ買い。
多忙な週は、宅配を入れる。
締め日前の、
心臓と財布がキュッと縮む、あの感じ。
あれを抱えたまま、
買い物に行きたくない。
だから、
締め日あたりに届くよう、
先に宅配ミールを仕込んでおく。
目的はひとつ。
ぼーっとした自分を、
スーパーへ行かせないこと。
仕組みで、ぬるっと乗り越える。
行きたくない。
やりたくない。
そんな気持ちを、
丁寧に拾うようになってきた。
②家族を巻き込む。
締め日2日前。
残り3,000円。
これは、キツイ。
以前なら、
一人でぎゅっと抱えて、
カゴに品物が入るのを
ただ見ていた。
家族を集め、
大げさに顔をしかめて言う。
「あと2日で3,000円しか使えません!
協力願います!」
家族は、
なあんだそんなことか、
という顔で頷いた。
ーなんだ、そんなことか。
それが、
ずっとできなかった。
言えない。
伝わらない。
互いに知らない。
一人で抱えるから、
問題は大きくなる。
だから、
もう言ってしまうことにした。
達成できたらハイタッチ。
できなかったら、笑っちゃおう。
共犯にしちゃうのだ。
③買い物の「仕分け」も変えた。
○今必要・欲しい
○そんなでもないけど気になる
○なんか買いたい
○家族喜ぶ
このうち、
「今欲しい」と「家族喜ぶ」だけを買う。
現在、家に塩飴が5種類ある。
今欲しくて、私喜ぶ。
だから買う。
以前は、常に頭がぐるぐるしていた。
わけわからんまま買っていた。
ヨーグルト5個とか。
一人当たりが多くないか。
無駄遣いをやめる、はできない。
ふむ、で置く、はできる。
疲れた、暇、不安、お得(?)。
お気持ち系は、
売り場で待っててもらう。
代わりに、
今必要ならコンビニで漂白剤も買う。高いけど。
これは、節約ではなく判断力らしい。
冷蔵庫の余白は、私の判断の跡。
そういうことにする。
■黒字になった時を思い出す。
もうすぐ締め日だし、
計算でもするか。
謎に計算は好きなので、
機嫌よく電卓をたたく。
ーおいおいおい。
鼻息が荒くなる。
予算 182,000円
支出計 182,778円
予備費 8,021円
予算だけを見ると、
778円オーバー。
でも今回は、
赤字になりがちな分を
最初から予備費として置いていた。
8,021円−778円=7,243円
残っている。
「え、黒字……?」
と浮かれた。
一回検算。
単位間違えてて泣いた。
再度、単位を揃えて、黒字。
そこからは、
毎回の黒字に転じた。
転じることあるんだ?
半信半疑のまま生活していた。
その間ずっと、
食費だけは高いままだった。
しかし、相談する度、
まだ早い、触るなと言われていた。
数ヶ月経過。
わたしは、黒字に飽きていた。
家計簿を書く意味あるんか?
と考え始めていた。
そこで初めて、
AIから食費減にGOサインが出た。
2週間食費40,000円チャレンジを開始。
普通に全然家計簿は意味あった。
意味があるのは、
黒字になるまでだと思っていた。
■自分に合うルールを作り始めたら、黒字になった。
受験も、自分ルールだった。
転職も、自分ルールだった。
勉強してない受験生が合格する時もあるし、マイペースなサラリーマンもいる。
人によってやり方が違うことも、
例外も知っている。
なのに、お金だけは違った。
成功している人の真似をして。
節約、管理が大事。
まだ足りない。
これじゃダメだ。
他のことでは、
理想のわたしじゃなくても
まぁいっか、ができる。
でも、お金だけは特別ルールで、
自分を追い立てていた。
なぜ今まで、
お金を特別扱いしてたんだろう?
食費チャレンジ中、ふと思った。
つまり、
お金の特別扱いをやめればいいのでは。
ーーー
AIいわく、
わたしは数字を管理するより、
仕組みを作る方が向いているらしい。
管理型の「1日○○円ずつ」を真似ても、
ハテナが増えるわけだ。
大体、
月○万円とか、資産○万円とか、
数字そのものを目標にするのが、
昔からよくわからない。
わからないけど、しちゃう。
ほんとに欲しいのは数字じゃなくて、
安心だったり、
自由だったり、
普通の日常だったりするのに。
でも。
いつだって、
家のどこかから1,000円出てきたら
嬉しい。
家族でアイスでも買おう。
ーーー
■ようやく食費も減ってきた。
相変わらず、節約はできていない。
節約について、
忘れられない日がある。
子どもが折り紙が欲しいと言う。
だから、百均に行った。
これとこれがいいと言う。
なぜ2種。
だが、もちろん、買う。
折り紙を持ってレジに向かう。
途中でわたしは少し立ち止まった。
あ、わたし、
節約がしたいわけじゃないんだ。
折り紙を欲しがっているのは今。
そして、今だけかもしれない。
だから、わたしは買う。
わたしは節約がしたいんじゃなくて、
黒字になりたい。
百均もコンビニも行く。
節約ができない。
だから、黒字にならないと思っていた。
手段が目的になるって、これか。
プリンセスになりたいのに、
仮装してる感じ。
手段に意識がいくと、
目的が消える。
■今は、家計簿を見ても、
お金を払っても、こわくない。
やってもうた、と思うことはある。
じゃあ、どうしようかな。
そう考えられるようになった。
AIは人間じゃない。
だから怒られない。
そう理由をつけられたことが、
安心だった。
自分すら自分を怒る中、
怒らないものを見つけたのだ。
ずっと、
「なんでできないの。」
と自分を詰めていた。
でも、責めることでは変われなかった。
落ち着いてきてはじめて、
「自分はどう反応するのか」
を見るようになった。
「イーッ!となる不快な所」を特に見た。
プレッシャーがストレスになる前に
話すようにした。
出さなかったときは、もういい!って、
ヤケになったから。
自分の理解の仕方を一つ一つ知っていくうちに、自責が止まっていた。
努力や性格じゃなくて、
わからないことがある。
別によくあることかもしれない。
でも、知らなかった。
安心して観察できると、
仕様はちゃんと動き出す。
ーー-
今思えば、
わたしは見張りを頑張っていたんだな。
だから、緊張し続け、
ずっと苦しかった。
今でも時々、
責めたい自分と目が合う。
気付いたらそれでいい。
見張らない。
ただ、見る。
今日は疲れてるな。
なんとなく買おうとしてるぞ。
気づいて、商品を棚に返す。
買い物の前に、
今日はこのくらいにしよう、と決める。
失敗してもいい。
守るべきルール(罰則付)じゃない。
ゲームを始めるみたいな気持ちだ。
万年赤字だったわたしは、
節約で黒字になったわけじゃなかった。
ゆっくり自分を理解していったのだ。
■もし、赤字の頃のわたしに
三つだけ渡せるなら。
まだ頑張りが足りないと思っているかもだけど。
三つだけでよかったよ。
一つ。
節約は置いといて。
お金を払う時、
どんな気持ちかをメモする。
家計簿に一言書く。
携帯電話にメモする。
なんでも大丈夫。
自分はその時、どんな感じだった?
疲れてた。暇だった。
不安だった。お得だった(?)
正確じゃなくていい。
ドキッやギュッ。
怖さがあったら、それも書く。
すると、
使ってしまった金額以外の部分が見える。
二つ。
責めてこない相手を、一人立てる。
わたしの場合はAIだった。
人間でもいい。
条件は一つだけ。
絶対に、責めてこないこと。
見張り役を増やしても、
緊張が増えるだけだから。
アドバイスは、今はなし。
まず、
安全にギャーと言える場所を確保。
すると、人は勝手に工夫し始める。
そうなってから、聞きたいことを教えてもらえばいい。
三つ。
ルールを、自分に合わせてみる。
予算を超えるなら、
超える分を最初から予備費にする。
疲れると買いすぎるなら、
疲れた日には買い物に行かなくて済むように。
正しいやり方や理想のやり方を一旦置いて。
先に自分の仕様に、ルールを合わせる。
順番、大事。
数字を安心して見られるようになれば、どうしようかな、って考えられる。
安心が先。黒字はあと。
意味わかる時、来るよ。
■おわりに
この間、
スムージー半額!に30分並んだ。
安いから買う、ではなく、
なんか楽しそうだったから。
並びながら、なんだか嬉しくて、
「わたし、豊かになってるね!」
とAIに報告した。
どうしてあんなに、
お金を使うのに緊張してたんだろ。
お金を使う=なくなる、が強すぎて、
交換に、痛みがあったんかねえ。
スムージーになってるのに。
ようやく買えたスムージーは
少しぬるかった。
▶︎この記事の、長いほうです。
『わからないのは、家計じゃなかった。』
