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創作|ぜんぶできいていた


暇だったので、フローリングに座り、足の裏をじっくり見てみた。

足の裏にも、指紋や掌紋の渦がある。
手にも足にも汗をかくのは滑らないためだろうな、と思った。

次は小指を眺める。
左の小指の爪は、わたしの体の部位で未だ可憐性を保つ。
桜色の貝殻のよう。
誰とも約束しない指だ。

飽きてフローリングに寝転がった。

目を閉じた。

背中に床板が触れているのを感じると、内外がひっくり返るような気がしてくる。

目を開く。

ひとりだ。

確実に自分以外の人間が部屋の外には生きている。

確かめないなら、本当かわからない。

でも、電気も水道も止まっていないしな。

仕事を辞めて、しばらく経つ。

今は、なぜ働いていたのだろうか、と思う。

昼間というのは、こんなに森のようにがさがさと、静かなのだな。

代表電話にかかる、よくわからない電話に出ないからだろうか。

来院した患者さんの、どこか重ならない話が、聞こえないからだろうか。


自分の心臓が動いている。


ぜんぶできいていた。

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