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nakanoemi3
創作|ぜんぶできいていた
暇だったので、フローリングに座り、足の裏をじっくり見てみた。
足の裏にも、指紋や掌紋の渦がある。
手にも足にも汗をかくのは滑らないためだろうな、と思った。
次は小指を眺める。
左の小指の爪は、わたしの体の部位で未だ可憐性を保つ。
桜色の貝殻のよう。
誰とも約束しない指だ。
飽きてフローリングに寝転がった。
目を閉じた。
背中に床板が触れているのを感じると、内外がひっくり返るような気がしてくる。
目を開く。
ひとりだ。
確実に自分以外の人間が部屋の外には生きている。
確かめないなら、本当かわからない。
でも、電気も水道も止まっていないしな。
仕事を辞めて、しばらく経つ。
今は、なぜ働いていたのだろうか、と思う。
昼間というのは、こんなに森のようにがさがさと、静かなのだな。
代表電話にかかる、よくわからない電話に出ないからだろうか。
来院した患者さんの、どこか重ならない話が、聞こえないからだろうか。
自分の心臓が動いている。
ぜんぶできいていた。
