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技術解説:ROSÉ & Bruno Mars 『APT.』 MV

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ALEXA 35 で 2K 撮影?!YouTube 10 億再生超えのヒットを記録した ROSÉ × Bruno Mars『APT.』MV に見られる、レトロでポップな映像表現のしくみを解明していきます。


発行部数:20


1. レトロでポップな世界観

2024年10月に公開され、SNS を通じて瞬く間に世界中に広まった『APT.』は、BLACKPINK のメンバーである、ROSÉBruno Mars によるコラボ楽曲で、Billboard Global 200 のチャートで 9 週連続の首位を獲得し、YouTube 10 億再生を超えるヒット作品となっています。

この作品は、その耳に残るメロディもさることながら、ピンク色の空間、ポップな手書き風アニメーション、VHS っぽいレトロな視覚効果、映像を早送りしたような ROSÉ、Bruno Mars のコミカルな演技が織りなす、MV 映像の レトロでポップな世界観 が、その魅力を際立たせる大きな要素になっている印象があります。

ROSÉ & Bruno Mars - APT.

ということで、まずはそのポップな世界観を作り出す上で、大きな役割を果たしている “美術セット” について、見ていきたいと思います。


2. ホリゾントをピンク色に染める

本作は、ピンク色の壁に囲まれた、すこし特殊な空間で撮影されていますが、壁と床面が、境い目のないホリゾント構造になっていることから、通常は白い空間として利用されている、スタジオの壁や床面をピンク色に 塗装 していると考えられます。

ROSÉ & Bruno Mars - APT.

こうした、カラフルな背景での撮影はよくありますが、背景に色を付けるアプローチには、いろいろな選択肢があります。

まず、撮影スタジオでよくあるのが、ライトで色をつける という方法です。たとえば、フルカラー仕様の LED ライトを使って、ピンク色の光を白い壁に当てると、壁をピンク色に染めることができます。

このアプローチは、暗い空間の中では有効な手法といえますが、光の性質上、光を重ねれば重ねるほど色は薄くなるので、本作のように明るい空間の中では、他のライトの影響により、色が薄くなってしまうという課題があります。

BLACKPINK

また別の手法として、カラフルな背景紙を利用する、というアプローチもあります。背景紙を使用する場合は、紙のヨレや汚れなどに注意をしながら、撮影を進めていくことになりますが、そもそも背景紙の幅には制限があるので、本作のような広い空間の撮影では、使用できないという課題もあります。

Savage #03 Coral Seamless Background Paper

一方、壁や床面を塗装する 場合は、撮影前に塗装をして、撮影後に現状復帰をする、その手間・時間・コストがかかるという点が課題になりますが、事前に塗る色をしっかり検討できれば、美術セットとしてのクオリティは高く、ライティングの自由度も高い状態で、撮影をすることができます。

ROSÉ & Bruno Mars - APT.

続いて、レトロでポップな表現を強調するために、本作で用いられている撮影手法について、見ていきたいと思います。


3. アンダークランク撮影とは?

本作では、まるで映像を早送りしているかのように、人物の動きがコミカルな感じになっていますが、こうした映像表現には、コマ数を落として撮影をする、アンダークランク(Under-Cranking)という撮影手法が用いられています。

MV 映像は、一般的に 24 FPS、30 FPS などを 基準のコマ数(Base Frame Rate)として撮影をしますが、たとえば、そのコマ数を 12 FPS など、基準のコマ数よりも低いコマ数にして撮影することで、早回しのような効果を演出することができます。

ROSÉ & Bruno Mars - APT.

MV 映像でよくある、アンダークランクの手法としては、カメラで設定するコマ数に応じて、撮影現場で流す音楽の再生スピードを遅くして、その スロー再生 した音楽に合わせて歌を歌う、という感じで撮影をおこないます。

ちなみに本作は、音楽の再生スピードを 50% に遅くした状態で、コマ数は 12 FPS で撮影をしているようです。それにより、身体の動きは早回しの状態なのに、口の動きや動作のタイミングは、元の楽曲とシンクロした状態になるという、特殊な視覚効果を得ることができます。

参考までに、アンダークランク撮影は、フィルム撮影の時代からおこなわれている古典的な手法で、その名前もフィルムカメラの機構に由来しています。

映画用のフィルムカメラは、初期のモデルは、クランク(Hand Crank)を手動で回して、フィルムを送るスピードを調整していたので、24 FPS など基準のコマ数よりも、コマ数が落ちた状態をアンダークランクと表現している、という話です。

Keslow Camera

続いて、本作のローファイな質感を作り出すための “ルックの設計” に関して、詳しく見ていきたいと思います。


4. 16mm フィルムを再現するメソッド

本作の映像のルックは、1990 年代を彷彿とさせる、どこか懐かしさのある ローファイな質感 に特徴がありますが、その要素を整理してみると、大きく 3 種類のルックが、組み合わされていることがわかります。

1. フィルムルック
2. 劣化した VHS っぽいルック
3. ハーフトーン

撮影を担当した撮影監督の Todd Banhazl 氏によると、本作は、カメラは ARRI ALEXA 35 で撮影しているようですが、その基本となるフィルムルックに関しては、Kodak Vision 3 250D をベースにした LUT を用いて、16mm フィルムの質感 を再現しているという話です。

ALEXA 35 - ARRI

カラーグレーディングに関しては、米国・LA 拠点の編集スタジオである、Picture Shop 所属の Walter Volpatto 氏が担当しており、DaVinci Resolve で作業をしているようです。

また「LUT を利用している」という撮影監督のコメントもありますが、実際に映像を見ると、ハイライトが赤く滲んでいたり、ディティールが甘くなっているなどの効果も見られるので、本作ではおそらく Filmbox など、何かしらの Film Print Emulation 系のプラグインが使用されていると考えられます。

ROSÉ & Bruno Mars - APT.

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