技術解説:LE SSERAFIM 『CRAZY』MV
ALEXA 35 × KOWA Cine Prominar で描く、ポップでカオスな世界観?!YouTube 1 億再生を突破した LE SSERAFIM『CRAZY』MV の映像表現のしくみを、メイキング映像をもとに紐解いていきます。
発行部数:10
1. ポップでカオスな世界観
自身 8 作目となる YouTube 1 億再生を記録した、LE SSERAFIM『CRAZY』MV は、韓国の注目の女性監督 Yunah Sheep が演出を手がける、アート性が高く、ポップでカオスな表現が印象的な作品となっています。
振り付けに関しては、Madonna の名曲『Vogue』で知られる、ヴォーギング をモチーフとしており、MV 映像には、米国のヴォーギングダンスチーム Iconic House of Juicy Couture が出演をしています。
また本作は、大浴場、水族館、抽象空間と、そのシチュエーションが目まぐるしく変わりますが、撮影は 3 日間 で、銭湯と抽象空間に関しては、撮影スタジオにセットが組まれ、水族館のシーンは、韓国ソウルにある LOTTE WORLD AQUARIUM という、実際の水族館で撮影がおこなわれた、という話です。

2. ALEXA 35 × Cine Prominar
本作のルックは、その線の細い描写と、落ち着いた発色に特徴がありますが、カメラに関しては、ARRI ALEXA 35 が使用されています。
ALEXA 35 は、K-POP をはじめ、数多くの MV 作品で使われる人気のシネマカメラですが、従来の ALEXA とは異なる、4.6K Super 35 規格の CMOS イメージセンサーを搭載しており、そのなめらかなハイライトの諧調と、独特なシャドウ域の渋さに特徴のあるモデルとなっています。

レンズに関しては、本作では、韓国の MV 作品の撮影ではあまり見かけない KOWA Cine Prominar という、オールドレンズが使用されているようです。

Cine Prominar は、創業 70 年を超える日本の老舗企業である、興和オプトロニクス(KOWA)が 1960 年代から製造しているレンズで、水色のリングの付いたものは、レンズのリハウジングで有名な英国企業 True Lens Services が、映画用のシネレンズとして改造した、リハウジングモデルになります。

その特徴としては、ローコントラストながらシャープな描写で、TLS の技術者によると、欧米圏で有名なオールドレンズ Super Balter と似たような質感になっている、という話です。参考までに、この TLS 版の Cine Prominar 20mm T2.6 の質感は、以下のイメージのような感じになります。

また本作では、ところどころにズームアップの効果が見られますが、大浴場の場面では、Angenieux Optimo シリーズのズームレンズも使用されています。Angenieux は、映画用ズームレンズの開発で有名な、創業 90 年のフランスの老舗企業で、Optimo はその看板商品となります。

Angenieux の人気製品としては、ENG スタイルの EZ Series も有名ですが、Behind The Scenes 映像を見ると、クレーンを使用したカットでは、その旧式のモデルとなる、Optimo DP Rouge が使われていることがわかります。

また一部、広めの画角からグッと寄りこむような、レンジが長めのズームアップのカットに関しては、Optimo Ultra 12× など、ズーム倍率の高いモデルが使われていると考えられます。


続いて、本作で使われているジンバル、大型クレーンなど、グリップ機材について見ていきたいと思います。
3. グリップ機材まとめ
本作では、K-POP の MV 撮影によくある、ジンバルを使用したカットが多く見られますが、ジンバルに関しては、日本で人気の DJI Ronin シリーズではなく、Freefly Systems の Movi Pro というモデルが使われています。

本作のカメラ ALEXA 35 は、本体重量が 2.9kg とすこし重めですが、大型のシネマカメラに対応するジンバルとして、Ronin シリーズには、Ronin 2 という耐荷重 13.6kg の大型モデルがあります。
それに対して Movi シリーズには、耐荷重 6.8kg の Mōvi Pro、耐荷重 22.6kg の Mōvi XL という2 種類のモデルがあり、大型のシネマカメラ用のモデルとしては、Ronin よりもややラインナップが充実した感じになっています。

参考までに、ジンバルを背中から吊るしてサポートするサポートリグには、Proaim の Hawk Lite というモデルが、使用されています。

またジンバルとは別に、本作では、EASYRIG を使用した、すこしブレ感のあるラフな手持ちカットも撮影もされています。

EASYRIG に関しては、縦揺れを軽減する Flowcine SERENE という、防振装置を搭載したモデルが使われています。

また EASYRIG は、通常、カメラとの着脱に手間がかかりますが、本作では、Cineworker の Quick Release System という、カラビナで着脱ができる便利なツールが使用されているようです。

クレーンに関しては、韓国の MV 撮影の現場でよく見かける、Stanton Video Service の Jimmy Jib Triangle Pro という、ワンマンオペレートができる、大型のジブアームが使用されています。

カメラを遠隔操作するリモートヘッドは、Triangle Pro の専用ヘッドが使われていますが、撮影カットよっては、カメラをロールさせる 120° Dutch Head を装着している場面も見られます。

またカメラが地を這うような、ローアングルの移動ショットを撮るために、本作では、Movi Pro を搭載した Freefly System の Tero という、ラジコンカー も使用されています。

このラジコンカーは、カメラドリー、クレーンなどでは難しい “高速の動き” を実現しながら、ジンバルだと侵入の難しい狭い場所に入りこめる、ということで本作では、人の輪の中をすり抜けていくような、ローアングルのカットで使用されています。
また、このラジコンカーに搭載されるカメラに関しては、ALEXA 35 ではなく、より小型・軽量な RED KOMODO 6K が使用されているようです。

続いて、本作のライティングに関して、詳しく見ていきたいと思います。
4. 大浴場のライティング設計
本作は、大浴場、青い抽象空間、水族館という、3 つのシーンで構成されており、空間ごとにベースの照明は変わりますが、出演者に対しては、常に ドーム型のソフトボックス の付いたキーライトを正面めから当てるという、K-POP らしいライティング設計になっています。
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