チェロ協奏曲 アザラシヴィリの無言歌
日曜の午後、車を走らせながらラジオを聴いていました。クラシックに詳しいわけではないのですが、日曜はいつもクラシック番組がかかっています。
流れてきたのは、チェリストの遠藤真理さんが演奏する無言歌でした。
まるで歌っているような、チェロの音色です。
家に着いてから、「無言歌」という言葉が気になって調べてみました。
もともとは、19世紀のドイツの作曲家メンデルスゾーンが生み出した様式だそうです。文字通り「言葉のない歌」。歌詞を持たない器楽曲でありながら、歌のように旋律を歌わせる、というのがその発想のようでした。メンデルスゾーンは生涯にわたってこの形式で曲を書き続けました。『無言歌集』としてまとめられた作品は、当時の家庭でもよく弾かれる人気の小品だったといいます。名付け親は、メンデルスゾーン自身ではなく、姉のファニーだったという説もあるそうです。
『無言歌集』の中で最も有名な一曲が「春の歌」だと知って、あっと思いました。調べながら試しに聴いてみると、曲名までは知らなくても、あの軽やかな旋律なら、聴いたことがある気がしました。知らないと思っていた曲は、実はこんなに身近なところにありました。
後の時代には、チャイコフスキーやフォーレといった作曲家たちも、同じ「無言歌」という名前で曲を残しています。ラジオで流れたアザラシヴィリの一曲も、その系譜の先にあるものでした。
作曲したヴァジャ・アザラシヴィリは、ジョージア(グルジア)出身。1936年に生まれ、2024年に世を去っています。日本では、指揮者の山田和樹さんがこの曲を聴いたことをきっかけに指揮者を志した、というエピソードでも知られているそうです。
歌詞がない、という制約は、不自由なようでいて、むしろ聴く側に余白を残してくれるのかもしれません。あの旋律に何も説明がなかったからこそ、自分の中にある名付けようのない何かと、静かに重なった気がしました。
参考(チェロではないですが):アザラシヴィリ「Song without Words(無言歌)」ピアノ・ソロのための(演奏:碓井俊樹/全音楽譜出版社 公式YouTube)

