見出し画像

ヤンダ・ヤンダ|開運メモ

姪(4)が暴れ叫んでいる。


彼女の名誉のため補足すると、常に暴れているわけではない。

むしろ、普段は年齢のわりに理路整然と意見を述べ、やりたいことや嫌なこともはっきりと述べるため、我々大人は驚いている。


だがしかし、なにかのきっかけで「いやだーーーー!!!!」と泣き叫ぶ。

それが始まると、小一時間ほど「イヤ」が止まらなくなるのだ。



姪は、声がでかい。

でかいというか、驚くほど声がよく通る。


1年前、お出かけした施設で、走ってどこかに行ってしまって焦ったことがある。

しかし、遠くから「ママーーー!!!パパーーーー!!」という大声が聞こえてきて、その声を頼りに発見できた。


天性のリズム感もあるように思う。
よく曲に合わせて珍妙な踊りを踊っている。

外国のハードなロックを聞きたがり、それに合わせてドラムのおもちゃを叩いている。

本気を出せばMISIAのような歌姫になれるだろう。
いや、マキシマムザホルモンかもしれない。

決して叔母バカではない。


話を戻そう。

そんなよく通る大声で泣き叫ぶものだから、その威力は凄まじい。

まるで、パワーを貯めに貯めたエネルギー玉が破裂したように見える。

大袈裟に言うと、金銀の光線が背後に見えるほどだ。


「イヤイヤイヤイヤ!!!」
「やだーー!いや!!」
「やーーーだーーーー!!!」
「いや!いやなのっ!!」
「いーやー!」
「やだっ!やだっ!やーなーーのーーー!」

「イヤ」のバリエーションは無限大。


隣の県までお出かけした帰りの車内。

隣に乗っていた私は耳が痛くなってしまった。


「ちょっと左耳が痛くなってきたので、できれば小さなアリさんの声で叫んでくれないか」


そうお願いしてみたところ、ヒマラヤほどの「イ・ヤ・ダ!!!」をひとつお見舞いされ、左耳は無事にノイズキャンセリングな状態になった。


いつの間にか、車内では姪の「やだー!」に合わせた絶叫しりとりが始まっていた。

「やだー!」
「だるま!」
「まんとひひ!」
「ひだかや!」
「やだー!」
「だがし!」
「しか!」
「かいしゃ!」
「やだー!!」



私は姪の前だったので、必ず「や」で終わらせなければならず、大変だった。



何が彼女をそんなに叫ばせるのか。

我が家の中で最も遠い存在として観察していると、見えてくることがある。

姪は、今かなりストレスが溜まっているのだ。

・おなかがすいてきた
・眠くなってきた
・遊びの途中で夕方になり帰宅を促された
・食べたいお菓子を「だめ」と言われた
・甘えたい、または走り回りたいが、チャイルドシートに座っていなければならない
・隣にママかパパがいてほしいのに、年に数回だけ出没する頓狂なおばさんが座っている
・何がイヤなのか、複雑すぎて自分でも説明できない
・それなのに「何がイヤなのか言ってごらん」とか言われて混乱している
・イヤ!と言って叫んでしまう自分もイヤ


山を越え、高速道路を降り、実家近くのスーパーに着くまで1時間以上、絶叫タイムは続いた。

こんなに長時間絶叫できるなんて、やはり歌姫か。
いや、パンクかもしれない。


車を降り、振り返ると、パパに抱っこされ満面の笑みをたたえている。


「ずっと抱っこして欲しかったの?」

「うん!!!」


次は子供用のカゴを手に取り、ママと手をつなぎ、意気揚々とアイス売り場に向かっている。



やれやれ……


姪よ。

決して負けずに、そのままでいてくれ。
これからも精一杯、でかい声で叫んでくれ。
楽しいことをたくさんしような。



ヤンダ [形容動詞]
欲しないこと。やりたくないこと。きらいだ。
主に東北地方の方言で、「嫌だ(いやだ)」という意味。

いいなと思ったら応援しよう!

うんちゃん よろしければ応援お願いします!いただいたチップは実験費用に使わせていただきます!