(ショートショート)雪うさぎと、少し早めの帰り道
大学の講義を終えると、僕はいつものようにコンビニへと急いだ。
毎日、何かに追われているような気がしてならない。
もっとゆったりとした時間を過ごしたいとは思うけれど、現実は秒針に急かされるような慌ただしい日々の繰り返しだ。
今日は、ネットで注文した品が届く日でもある。
いつマンションに帰れるか分からないから、配達はいつも置き配を頼んでいる。
ドアの前に置かれた箱の中身を想像するだけで、少しだけ足取りが軽くなった。
バイトに入れば、時間はさらに加速する。
ひたすら棚の陳列をこなしていると、背後から店長の声がした。
「今日はここまでにしよう」
その一言が、僕にとっての終業の合図だ。
シフトの長さが店長の機嫌ひとつで決まるのは、この店ではよくあること。
けれど今日に限っては、その気まぐれが最高のプレゼントに思えた。
いつもより早く解放され、僕はウキウキとした気分で夜道を歩き出す。ふと道端に目をやると、誰かが作った小さな雪うさぎが、街灯の光に照らされてちょこんと座っていた。
「溶けずに、残ってたんだな」
昼間の陽射しを耐え抜いたその健気な姿に、心がふんわりと解けるのを感じた。
僕はスマホを取り出し、そっとシャッターを切る。
冷たい夜気さえ心地よい。
僕は写真の中の雪うさぎと一緒に、弾むような気持ちで帰路を急いだ。
Fin。
※この小説はフィクションです。
登場人物は、存在しません。
↑この企画に参加しました。
ありがとうございました。
