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コロナ特需からの逆回転

コロナ特需。非常にありがたかった。

一方でホテルからの賃料入金はない。これもデカい。

珍しく取引銀行から融資の提案があった。当時はコロナで融資が出やすかった。だが売上は上がっている。

——その状況で可能なのか。

担当と話すと、こう言われた。

「今後下がる予測を立てれば問題ありません。社長も、この先は読めないでしょう?」

——まさに、その通りだった。

半年後も一年後も読めない。事業計画を書き、割と高額の融資を受けた。

これでどうにか繋げられる。

この頃Dさんの紹介で社員を1人雇った。あまりにも自分が一人で回すのが辛いのを見ていて、必要な人を紹介してくれたのだ。

正直なところ人を雇うのは嫌だった。入ってどうなるかも分からない。将来的にクビとは言いたくない。

——しかし人は足りない。

この先伸ばすのであれば1人くらいは右腕となる人が必要かもしれない。

決断した。

新たな社員、Sさんが入社した。

これまで手をつけられなかった所を、どんどんクリアしてくれる。非常に心強かった。

これで自分は全体の仕事と不動産に特化できる。

この体制で、数年は進めていった。

——そして、売上が落ち始めた。

底上げされた部分もあるので、落ちるのは織り込み済みだった。

とはいえ2023くらいから、限界を感じていた。

落ちた売上を埋めるために新しい商品開発。売れるか分からない商品を作るので、売れなければ大損。

——しかしやるしかなかった。

途中からは工場も人が減り、さらに苦しい状況へと向かっていった。

ある時気がついた。

——逆回転している。

足掻けば足掻くほどに、深みにハマっていく。増える在庫、倉庫代金、売り捌くには損切り。

——やっている意味があるのか。

ここで、かなり病んでしまった。簡単にはクリアできない。

かなり思い詰めて、昼から酒を飲むこともあった。

税理士さんや不動産仲間に電話しては、オチのない相談をしていた。

——かなり、病んでいた。

仲の良い先輩税理士は、自分の話に付き合ってくれた。だが、それだけじゃなかった。

周りには「アイツは今ヤバい」「変な方向に行かないように止めてやってくれ」と、周知してくれていたようだった。

——恥ずかしい話だが、とてもありがたい仲間だった。

そんな春の日、とある不動産会社の人から電話があった。

「工場を買いたい人が見つかりました」

もう8年くらい前から話していたことだった。いずれは工場を畳む。水面下で購入希望者がいれば声をかけてほしい、と。

——まさか、このタイミングで来るとは。

即断即決。売却だ。

かなり急スピードで話をまとめ、地方の工場へ飛んだ。

買主と面談を終えて、手付金を受け取る。決済までは時間がある。だが工場社員に話さねばならない。

——重たい仕事だった。

決済前日。地方都市に乗り込み、工場へ向かった。

開口一番、伝えた。

「今、会社がまずい」

「今なら、それなりに払って辞められる。今を逃すと、逆にそれはできなくなる」

「俺の能力不足だった。悪いが、理解してくれ」

——頭を下げた。

1人は、同業の別の会社へ就職を斡旋した。もう1人は地元から出たくないと言うので、手厚めの退職金を払った。

——しかし、自分が話した時、彼らの反応は薄かった。

「ふーん」とは言っていない。だが、そんな反応だった。

元々期待されていなかったのか、やる気がなかったのか。とにかく、妙な気持ちになった。

自分なりに頑張ってきたつもりだった。だが、周りには伝わらないものかと。

——それでも、仕方ない。共倒れするのは、お互いに良くない。次に進もう。

そして、翌日の決済を終えて、東京へと帰った。

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