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2025年3月9日 「予告殺人(新訳版)」感想 ネタバレあり


Audibleでアガサ・クリスティの「予告殺人(新訳版)」を聴き終えたので、その感想です。
作品選びに、迷った時のアガサ・クリスティ!
ミス・マープルシリーズであり、クラドック警部の初登場作ということで、
選びました。
様々な人から評価の高い作品であるということも決め手のひとつもなりました。
今回も、ネタバレがある可能性があります。
ネタバレを読みたくないかたは、ここでブラウザバックしてください。
せっかくの読書の楽しみの邪魔になるかもしれませので、
また別の時に、読みにきてくだされば嬉しいです。


登場人物一覧のPDFをつけてください!


何故か、この作品は、
登場人物一覧のPDFがついていませんでした。
これだけで、聞く難易度がぐーっと上がってしまいます。
「こんなの誰も見てないだろう…」とか言って、
決めた編集者がいるのだとしたら、
給料減給されて欲しいです。
登場人物一覧、つけましょう!
仕方がないのでWikipediaを調べて、それをスクリーンショットして、
時折確認していました。
こんなことを読者にさせないで欲しいです…。
Audibleの中で完結してほしいのです。
詳細な説明は要りません。
名前と1行の説明で結構です。
読み手がうまく読み分けていたとしても、名前が外国名だと覚えられません…。
しかもWikipediaに載っているものとは、
訳が違うのか、
「ミス・バンナー」ではなく、「ミス・バナー」と読まれていました。
こういう小さいところが引っかかります。
しかも、今回は名前の呼び間違いも謎に関わってくるのですから、
ちゃんと、登場人物一覧を載せるべきです…。
それとも、ネタバレになると思って載せなかったのでしょうか?
一般に呼ばれてる名前だけは載せてください。
どうぞ、よろしくお願いします。

ドラマチックな殺人


今回は、冒頭から飛ばしています。
週に一度発行される地元紙に「殺人の予告」がなされて、小さな地域の人々が、
いそいそとその様子を見に行こうと決めるところから始まります。
もちろん、地域の人々は本物の殺人を期待しているわけでなく「殺人ゲーム」が余興として行われるのだと思っていくわけです。
以前、「時々、私は考える」という、アメリカ映画を見た時に、アメリカの片田舎で「殺人ゲーム」をしている様子を見たことがありましたので、比較的想像しやすかったです。
数名お友達を招いて、アルコールなどを楽しみながら、あるところで電気を消す、そして、そこで、被害者として指名された人は、被害者になりきるというものでした。
犯人も決められていたのかはよく覚えていません。
ということで、日本には馴染みがないけれど、海外では、お呼ばれの際に、やる可能性があるゲームなのでしょうね。

それぞれの家に届いた朝刊をそれぞれの家で読み上げるところ、よかったです。
家族の構成員が誰で、どんな家庭なのかがわかるような場面になっています。
この場面、舞台にしても素敵ではないでしょうか。
そして、その夜、予告通りの殺人が起こります。
これはこのプロットを考えた段階で大勝利だな、と思いました。
さすが、アガサ・クリスティです。

女性同士の、つながり


このお話には、
生活を支えてくれる男性がおらず、
女性同士、もしくは、女性と子どもで、はたまた、大きなお屋敷に間借りをして、暮らしている人達が、出てきます。
ご夫婦がしっかり揃っているのは、牧師夫妻くらいです。
この作品は、1950年発表なので、第二次世界大戦きら5年後、
戦後の、お話だからでしょうか。
イギリスは戦勝国側ですが、それでも戦争の傷跡と混乱はしっかり描かれていると感じます。
配給証や燃料の話も挟まれますし、
友人の女性同士で、同居とか、
遠縁の若い人たちと高齢の女性たちが同居という背景には、戦争が見え隠れするように感じます。
イチオシペアは、ヒンチクリフとマーガトロイドです。
2人は、鶏や豚を飼育して生活をしているようです。
背が高く男性的なスタイル(コーデュロイのスラックスに軍服の上着、短くカットした髪)のヒンチクリフと太って愛想が良く、すこしぼんやりとしたマーガトロイドのペアのやり取りがとても可愛らしいのです。
三軒の田舎家をぶち抜いて一軒にした個性的な家に、住んでいる2人の「友人同士」の中年女性ですよ。
日本のミステリには出てこないタイプの登場人物ですよね…。
やっぱり、不穏な時代になると、一人暮らしは危険だから、女性同士で、からしていたのでしょうか。
ドーラ・バナーとミス・ブラックロックの友人関係も印象的です。

女性は怖い?いいえ…


様々な年齢、様々なタイプの女性、それも過去がはっきりしていない女性が沢山出てくる作品です。
読み終えた時、
人によっては、「女性は怖い」という感想で終わってしまうかも.と思いました。
しかし、アガサ・クリスティはそんなぬるいことを書いてはいないのです。
犯人の犯行動機の遠因には、家父長制があることをちゃんとクリスティは書いていますし、
ミス・マープルにも、そう言わせています。

親切で臆病な人の恐ろしさ


アガサ・クリスティのすごいところは、「おかしな狂人が犯人だ」という、皆が思い込みたがる結論には持っていかないところです。
ミス・マープルに「親切で臆病な人だからこそ、世の中に恨みを持ってしまった場合はひどく歪むのだ」と言わせています。
これ、なかなか書けないことです。
「親切で臆病」だからこそ、大変そうなことから、逃れようと、大金を得られる道を選んでしまうのですよね…。
私は常々「いい人」と言われる人が「一緒に住むと良い人ではない」ということは、往々にしてあることだ、と思っています。
そして、「やさしい人」たがら、「いい人」とも限らない、と思っています。
誠実で正直であることは、やさしさと相容れないことがありますが、
やさしさと怠惰、そして境界のなさは矛盾なく存在することがあるのです。
このあたり、2025年になっても、まだ、皆、わかっていません。
アガサ・クリスティは75年前に書いてるんですよね…、やっぱりすごい!
そして、「世の中に恨みを持った人は危険」ともミス・マープルに言わせています。
そうなんですよね…。不幸なことがあった人が危険なのではなくて、そこから世の中に恨みを持った人が危険なのです。
こちらも、75年経っても変わらぬ真実です。

ちゃんと張られた伏線を確認する楽しみ


最後まで聴き終えて、気になった章までもどり、再度聞いてみると、
さすがは、アガサ・クリスティ!
矛盾がない文章で、真実が綴られています。
結末まで知って、戻ると、違う意味に感じたり、ここでのこの登場人物の反応は、こういう理由ゆえにか!とハッとさせられます。
一冊で、2度美味しいのです。
しかし、Audible化にするときはかなり迷われた部分もあったでしょうね…。
破綻なく演じられた、読み手の菱田盛之さんにも心からの拍手を送りたいです。

犯人と対比される形でのバンチ


クラドック警部初登場を楽しみに、聴き始めたのですが、
聴き終わってみると、
あまり大きな印象を受けませんでした、
格好良くて、男性らしい雰囲気の警部なんですね、というくらいです。
それよりも、私は、ダイアナ・ハーモン、ハーモン夫人、ハーモン牧師の妻、「バンチ」と呼ばれる、女性の方が印象に残りました。
「バンチ」はミス・マープルを子どもの頃から知っている女性で、どうも牧師の娘ということですから、マープルシリーズの最初に出てくるあの牧師さんの娘さんでしょうか。
「バンチ」の印象的なところは、無遠慮で不器用なのだけれども、率直で、素直で、野生的な勘の良さがあるところです。そして、牧師の妻としてできるだけの仕事をしようとしています。
「辛い時期があったから、その埋め合わせに大金をもらうべきなのは私だ」という犯人の思考とは真逆なキャラクターです。 
ミス・マープルが真実に気づく現場に立ち会っていたり、
妙な勘の良さを発揮したりする場面があるところから、
アガサ・クリスティが「バンチ」を配置したところに、何か意図があるのかも…と思ったりするのです。
殺人についても、滔々と語らせていました。
読み終えると、アガサ・クリスティに、
「取り分とか埋め合わせとかを考えず、自分に出来ることをやりなさい。それが1番、強いのよ!」と言われた気分です。
アガサ・クリスティは、人間観察を沢山した上で、賢さや美しさ以上に、素直さ、率直さの人生における有用性を知っていたのでしょう。
きっと、そうだろうと思います。

次は何を聴こう?


さて、次は何を聴きましょうか。
少し、クリスティから離れるか悩むところです。
どうしようかな…。


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