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【本紹介】第3回:「The Art of Spending Money」

「お金を使うことは、サイエンス(科学)というより、アート(芸術)である。」
本文冒頭の「はじめに」に記載されている一節です。著者の前作である「The Psychology of Money」との対比を端的に表した一文で、お金の使い方というものには普遍的な公式やルールがないということを主張しています。「幸せ」と「お金」という誰しもが向き合うテーマに様々な事例を用いてわかりやすく解説し、生きる上で大切な一つの提案をしてくれる。そんな良書だと感じました!

こんにちは。ウラです。ご覧いただきありがとうございます。
本日ご紹介したい作品がモーガン・ハウセルさんが書かれた「The Art of Spending Money」です。


※画像は出版社公式サイトより引用 © モーガン・ハウセル 著/児島 修 訳/ダイヤモンド社



この本を一言で表すと

この本を一言で表すと
『「お金」と「幸せ」の関係を明らかにする本』です。
筆者は冒頭で「お金をステータスや成功の尺度以外で使う方法を知らない人があまりにも多い」と警鐘を鳴らします。お金の使い方は前述の通り「アート」であるので幸せのためのお金の使い方に関する普遍的な公式のようなものは存在しないとしながらも現代人の多くがとらわれている「金持ち=成功、幸せ」という概念に疑問を投げかけます。
古いことわざにある「欲しいものは手に入るのに、必要なものが手に入らないことほど最悪な事態はない」というようにお金を稼ぐことに全てを捧げて手に入れたとしても、本当に必要なもの(人との絆・つながり、健康、生きがいなど)がなければそれは幸せな人生とは呼べるのだろうか?と読者に問うてきます。
次の要約で内容をまとめながら筆者の考えをまとめます。

内容の要約

本書は21章に渡り、「お金と幸せ」というテーマに関して書かれている。
21章もあるが大きく分けると「避けるべき間違ったお金の使い方」と「より良いお金の使い方」の2つについてだ。

・「避けるべき間違ったお金の使い方」

それはお金を「ステータス」として使用すること。
高級車や大豪邸といったものにお金を注ぎ込んで注目を浴びようとするのは、筆者曰く「お金を他人から注目を浴びるためのチケット」として利用しているのだという。またその即効性の高さと高揚感の持続性の短さから「ファストフード的な消費だ」とも呼んでいた。
ただここで大切なのは筆者はブランド品そのものを否定しているのではないということだ。ブランド品を身につけることによるメッセージ性の獲得などについてはむしろ肯定している。大切なのは「自分の内側にある満足感や納得感の基準で判断しているのか」ということだ。
見栄やステータスといった他者に評価基準を置いたままでは一生満足することはないという。理由は世界は広すぎて上には上がいるから。年収で例えてみると「1000万欲しい!」と思ってその額を達成しても他者との比較でしか満足感を得られない人はすぐ年収2000万の人と比べてしまう。筆者はそれを「終わりのないラットレースだ」という。
ストア派の名言にこんなものがある「富を必要としないことは、富そのものよりも価値がある」

・「より良いお金の使い方」

それは「自立」のために投資すること。
これは何も経済的自立だけのことを言うのではない。
「健康的、精神的、経済的に自立し、自分の人生軸の中で生きる。」これを実現するための投資は非常に良いお金の使い方になると筆者はいう。
また、メンタル面で言うと前述の「避けるべき間違ったお金の使い方」との逆で「自分の内側の満足感に目を向けること」が大切だという。
有名投資家のウォーレン・バフェットは「人の行動を左右する大きな問いは、人生の基準を自分の内側に持っているか、外側に持っているかだ。内側の基準で満足できれば、それは大いに価値のあるものになる。」と語る。バフェット自身、年齢を重ねて真に大切なのは築いた富の総量ではなく、”愛して欲しいと思っている人から、実際どれだけ愛されているか”と言う点に気づいたという。
果たして自分にとって何が幸福なのか、どうする事が自分の軸として満足できる事なのかを常に考え、その基準を満たすべくお金を使っていく。
この姿勢こそ、筆者が伝えたかったお金の使い方なのだと感じた。

本書では以上の大きな2つのテーマについて議論されて行きます。
ただ、この本の面白いところはこの2つの話を進めつつ、前作の「The Psychology of Money」同様、「感情とお金の関係」や「子どもの教育とお金の関係」、「お金に関する楽観主義vs悲観主義」など、様々な切り口でお金の使い方について記載されており、本当に読み応えがありました。
色々な角度がありながら、あくまで「お金の使い方は普遍的な公式がないアートである」と言う立場を貫く姿勢がとても良かったです。

個人的な学び3選

・お金について考えすぎていない人ほど幸せになれる

これは冒頭の「本書の貫くメッセージ」というパートの4番目に記載されているものです。ここでは聖職者のウィリアム・ドーソンという人の本の中の「ロンドンに住む都会人の多くが金や成功ばかり追い求めながら惨めな暮らしをしている一方で、田舎で簡素な暮らしをしている人たちの人生には喜びが多い」という言葉を引用していますが、薄々自分としても思っていたことを改めて認識させられました。社会人になって自身の年収や暮らしぶりというのが相対的にどういったものなのかという事がわかってきましたが、自分より稼いでいる会社の上司や「給料が高いから」という理由で就職先を決めた大学時代の友達が皆楽しそうに生きているわけではないというのは実感していました。
お金に対して何も考えないというのは楽観的すぎると思いますが、逆にお金を崇め奉り、金稼ぎこそ正義のような守銭奴にはなりたくないなーと思ってます。

・大切なのは将来の後悔を最小化すること

本書の中盤で論じられる「未来に備えるために倹約する vs 今を楽しむために消費する」という誰しもが迷うテーマについて、とてもいいヒントをくれています。
それは「将来の後悔を最小化するためにお金を使う」という姿勢です。
前作「The Psychology of Money」でも書かれていた事ですが、我々個々人のお金に対する感覚は教育や家庭状況だけでなく、生まれ育った時代の経済状況や社会状況に左右されると言います。簡単にいうとバブリーな時期に生まれ育った人は消費に対して積極的になりやすい反面、不景気の時代に生まれ育った人は消費に対して消極的になりやすいと言います。
今の日本の現役世代の多くが日本の経済力が落ちた時代に生まれ育った、または就職して社会人になった方々だと思います。私自身もそうだったのでお金に対しては正直、悲観的に考える事が多く、消費もあまりしない傾向にありました。
ただ、最近では「今にしかないものに対してしっかりお金をかけていこう」という姿勢に変わりつつあります。複利という言葉はファイナンスの世界で主に長期の株式投資のメリットを説明するときに使われますが、経験や思い出にもそれが当てはまると言います。
「後から懐かしさを感じられるようなことをする。それが人生で何よりも大切なことだ。」本書で引用されている言葉ですが、いつ死ぬかもわからない、誰にも予想できない将来のリスクや不安ばかりに目を向けて今を楽しむ事ができていないのはもったいない事だなと思います。
「倹約と消費」この相反する考えに対して、しっかりと自分を俯瞰で見た上で納得できるバランスを取ること。これが大切なんだと思います。

・バーベル型のアプローチこそ最強

上の「倹約と消費」の考え方に近い部分ではあるのですが、「悲観主義者のように貯蓄し、楽観主義者のように投資する。最悪を予想し、最善を期待する。今日生き、明日に備える。」そういった両方の姿勢を持ったバーベル型のアプローチこそ、お金に対しての考え方として一番良いものなのではないかという考えです。
この事が書いてある章では「小さな支出への向き合い方」という点に注目して話が進みます。
前提ですが、「どこにお金をかけるのかは人それぞれだが、節約できるところを節約することは大切だ」と筆者は言います。作家のケビン・ケリーが残した「小さなことに気を配ろう。登山でも、山の険しさより、靴擦れのために山頂に到達するのを諦める人の方が多い」と言う言葉を引用し、大きい部分にばかり目を向けるのではなく、身近な部分から節約していくということは経済的自立を目指すことにおいて重要になってくると言います。
しかし一方で「人は想像できないことには案外適当に考えてしまう」というパーキンソンの凡俗法則(問題への注目度は、その問題の重要性に反比例するという法則)を紹介し、警鐘を鳴らします。身近な小さい支出ばかりを見ていてもダメ、案外適当に考えているものほど大切なものだったりするのかもしれませんね。

感想

「お金の稼ぎ方」というものに着目した本はかなり多いなーと思っていたのですが、「お金の使い方」に着目して、ここまで様々な角度から書かれた本はとても珍しいのではないかと思います。
読んでいて感じたのは「お金の使い方には本当に正解はないんだな」ということです。筆者がこれを「アートだ」と表現したことも頷けます。生きる時代や育った環境、触れ合ってきた人々など、その人のバックボーンや価値観そのものがお金の使い方には表れてくるものなんだと思いました。
今回は私にとって深く刺さったポイントをまとめてレビューしましたが、本書は「子供とお金」をテーマにした教育に関するパートや「感情とお金」をテーマにした心理学的なパートまで幅広くお金の使い方について分析しています。ですのでどの世代の方に読んでいただいてもためになる一冊だなと思いますし、私自身、例えば10年後に読み直したとき、きっと刺さる部分は変わってくるんだろうなと思ってます。
資本主義社会に生きる我々にとって、切っても切り離せないお金というものとの付き合い方。そのヒントをくれる大切な一冊になること間違いなしですので、ぜひ手に取って読んでみてほしいです!
読み終わりましたら感想をコメントしてくれると嬉しいです。また、この感想文に対する忌憚なきご意見もお待ちしております!

ご覧いただきありがとうございました。



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