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ホンダ ICON e:は本当に「新型」なのか 語られなくなったU-GOの系譜

ホンダの電動原付「ICON e:」は、2026年3月に日本で発売された。

価格は22万円。航続距離は81km。バッテリーは車体から外しても、載せたままでも充電できる。シート下には26Lの収納スペースまである。

日本の記事では、「ガソリン原付並みの価格を実現した新しい電動スクーター」として紹介された。

しかし、この車両は本当に、2026年に突然現れた新型なのだろうか。

公開資料を時系列でつなぐと、別の姿が見えてくる。

中国Honda U-GO

EM1 e:

ICON e:

しかもICON e:の構成は、2023年に登場したNew U-GOより、2021年の初代U-GOに近い。

結論から言えば、ICON e:を単純な「U-GOの焼き直し」と呼ぶのは少し乱暴だ。

一方で、U-GO系の既存車体と48Vアーキテクチャを、アジア各国向けの廉価モデルとして再構成した車両、と評価することには十分な根拠がある。

ICON e:とU-GOを結んだ日本語記事は、ひとつだけ見つかった

ICON e:とU-GOの関係を日本語で明確に指摘した記事は、今回調べた範囲で1本だけ確認できた。

2024年10月9日、インドネシアでICON e:が発表された当日に公開された、宮﨑健太郎氏のLAWRENCE記事だ。

いよいよホンダは電動化に本腰を入れる!? 世界3位の巨大市場インドネシアに、電動2輪パーソナルコミューター2機種を投入することを発表しました!!

https://lrnc.cc/_ct/17726156

記事は、ICON e:がEM1 e:をベースとしていることを説明した後、次のように書いている。

「エクステリアを変更したU-GOみたいなものですね?」

さらにU-GOを、EM1 e:の「元ネタ的モデル」と位置づけ、床下に48V・30Ahの着脱式バッテリーを搭載する構成まで紹介している。

疑問形であり、「推察が正しければ」という留保も付く。ホンダの公式説明ではなく、記者による比較と考察だ。

それでも意味は明確だ。

宮﨑氏は2024年の時点で、

U-GO → EM1 e: → ICON e:

という系譜を事実上つないでいた。

「日本語圏では誰もU-GOとの関係を知らなかった」とは言えない。

正確には、気付いて記事にした人はいた。しかし、ほとんど引き継がれなかった、となる。

日本発売時、宮﨑氏の視点は記事から消えた

興味深いのは、その後だ。

日本発売時に宮﨑氏本人が書いたICON e:の記事は、今回確認した範囲では見つからなかった。

宮﨑氏の2024年記事は、同じモーターマガジン社のwebオートバイにも編集転載されている。

webオートバイ「ICON e:」記事一覧

https://www.autoby.jp/_tags/ICON_e%3A

しかし2026年の日本発売時に、同系列媒体が掲載した記事は別の執筆者によるものだった。

webオートバイ「新型電動スクーターホンダ『ICON e:』登場!」、松本正雅、2026年2月20日

https://www.autoby.jp/_ct/17822994

スマートモビリティJP「ホンダが電動原付『ICON e:』を発売」、編集部、2026年2月23日

https://smart-mobility.jp/_ct/17822744

webオートバイ「ホンダ『ICON e:』インプレ」、太田安治、2026年5月13日

https://www.autoby.jp/_ct/17838476

webオートバイ「注目の1台! ホンダ『ICON e:』インプレ」、横田和彦、2026年7月8日

https://www.autoby.jp/_ct/17850250

これらの記事にU-GOは出てこない。

代わりに並ぶのは、「専用バッテリーを新開発」「生活密着型EV」「新世代のコミューター」といった表現だ。

宮﨑氏が見解を変えた証拠はない。日本発売時の記事を宮﨑氏が書いていないためだ。

ただし、同じ媒体グループ内でも、2024年に一度示されたU-GOとの接続が、2026年の発売記事へ継承されなかったことは確認できる。

ホンダ公式資料をつなぐと、系譜は成立する

宮﨑氏の推察だけで系譜を組み立てる必要はない。

U-GOからEM1 e:、EM1 e:からICON e:という二つの関係は、ホンダがそれぞれ公式に説明している。

U-GOからEM1 e:

Honda Storiesは2023年5月29日、EM1 e:の開発者インタビューを公開した。

Honda Stories「交換式バッテリーで走る『EM1 e:』の魅力とは」

https://global.honda/jp/stories/070.html

開発者は、次のように明言している。

「車体は2021年に中国で発売された『U-GO』をベース」

U-GOでは床下にあったバッテリーを、EM1 e:ではシート下へ移したことも説明している。

さらに、

「車体部品を共用化することで、コストダウン」

とも述べている。

EM1 e:は、U-GOと無関係に新規開発された車両ではない。U-GOの車体をベースに、Honda Mobile Power Pack e:へ対応させた派生車である。

Honda Designのデザイナーインタビューでも、EM1 e:について同じ関係が明記されている。

Honda Design「EM1 e: electric scooter wins Red Dot Design Award 2024」

https://global.honda/en/design/interview/202501reddotem1e/

“It is based on a model called U-GO.”

EM1 e:からICON e:

2024年10月9日のホンダ公式発表は、ICON e:についてこう説明している。

ホンダ「電動二輪パーソナルコミューター『CUV e:』『ICON e:』をインドネシアで発表」

https://global.honda/jp/news/2024/2241009.html

「『EM1:e』をベースに、バッテリーを含む主要電動部品を変更」

外装もインドネシア向けに一新したとされている。

この二つをつなげれば、

U-GO → EM1 e: → ICON e:

という系譜は、形状が似ているというだけの推測ではなく、ホンダの公開情報から成立する。

海外では、開発責任者がU-GOの活用を直接認めていた

さらに強い資料がインドネシアに残っている。

ICON e:発表会を取材したdetikOtoは、Honda Motorcycle R&D ChinaのICON e:開発責任者、Makoto Mitsukawa氏の発言を掲載している。日本発売時に登壇した三ツ川誠氏と同一人物である。

detikOto「Honda ICON e: dan CUV e: Dirakit di Indonesia, Berapa Kandungan Lokalnya?」、2024年10月10日

https://oto.detik.com/motor-listrik/d-7581881/honda-icon-e-dan-cuv-e-dirakit-di-indonesia-berapa-kandungan-lokalnya

発言の核心はここだ。

“memanfaatkan development model U-GO yang sudah ada di China”

日本語にすると、「中国に既にあるU-GOの開発モデルをベースとして活用した」という意味になる。

同じ発表会での発言は、別媒体にも記録されている。

Uzone、2024年10月14日

https://uzone.id/dirakit-di-indonesia-berapa-tkdn-honda-icon-e-dan-cuv-e-

Otorider、2024年10月15日

https://otorider.com/motor-listrik/2024/ternyata-baterai-motor-listrik-honda-belum-diproduksi-lokal-tercjhhdkal

同一イベントの取材なので、完全に独立した三つの証言とは数えにくい。

しかし、これは記者が見た目から「U-GOに似ている」と推測した話ではない。ホンダの開発責任者本人による説明だ。

ICON e:とU-GOの直接関係を示す資料として、最も重要な証拠になる。

初代U-GOとICON e:は、どこまで近いのか

初代U-GOの公式諸元は、現在もHonda香港・澳門の旧モデルページで確認できる。

Honda香港・澳門「U-Go(已停售)」

https://www.honda-hk.com/product/u-go

日本仕様ICON e:の諸元と並べると、偶然の類似では片づけにくいほど近い。

初代U-GO/日本仕様ICON e:

全長×全幅×全高
1,790×680×1,080mm/1,795×680×1,085mm

軸距
1,300mm/1,300mm

シート高
740mm/742mm

車両重量
83kg/87kg

前後タイヤ
90/90-12、100/90-10/同一サイズ

ブレーキ
前ディスク・後ドラム・CBS/前ディスク・後ドラム・コンビブレーキ

バッテリー
48V・30Ah/48V・30.6Ah

単純計算の電力量
約1.44kWh/約1.47kWh

搭載位置
フロア下/フロア下

充電
車載・バッテリー単体/車載・バッテリー単体

駆動
後輪ハブモーター/後輪インホイールモーター

ICON e:公式諸元

https://www.honda.co.jp/ICONe/

全幅と軸距は一致する。全長と全高はわずか5mm差。バッテリーはともに48V・約30Ahで、エネルギー容量の差は約2%しかない。

タイヤサイズ、ブレーキ形式、床下バッテリー、二通りの充電方式まで同じだ。

ホンダ開発責任者のU-GO開発モデル活用発言と合わせれば、ICON e:をU-GO系の車体パッケージと見るのは自然である。

ただし、ここから先は慎重に分ける必要がある。

外形寸法や電圧が近いだけでは、フレーム、セル、BMS、PCU、モーターが同じ部品番号であることまでは証明できない。

U-GOはモーター持続出力1,200W。日本仕様ICON e:は法規上の定格出力580W、最高出力1,800Wと表記される。「持続」「定格」「最高」の定義が異なるため、数字だけを並べて同じモーターとは断定できない。

公称航続距離も、初代U-GOが65km、ICON e:が81kmとなるが、試験速度や条件が一致しない。81kmへ単純に性能向上したと扱うこともできない。

New U-GOは、すでに72Vへ進んでいた

初代U-GOの後、中国では2023年にNew U-GOが発売された。

五羊-本田「New U-GO 焕新上市!」、2023年6月16日

https://www.wuyang-honda.com/home/xwzx/zxzx/detail-16603.shtml

五羊-本田「New U-GO」製品ページ

https://www.wuyang-honda.com/home/cpzs/ddj/detail-1372.shtml

五羊-本田はNew U-GOについて、前世代から動力、航続、スマート機能、外観を全面的に向上させたと説明している。

主な変更は次のとおりだ。

・48Vから72Vへ変更
・72V・20AhのBMS付きバッテリー
・持続1,800W、ピーク2,300Wのハブモーター
・EBSエネルギー回収機能
・Honda SMART-Key
・APP+4G通信
・OTA、Bluetooth解錠、車両測位、遠隔操作

注目すべきなのは、バッテリーの単純計算上の電力量だ。

初代U-GO:48V×30Ah=約1.44kWh
New U-GO:72V×20Ah=約1.44kWh
ICON e::48V×30.6Ah=約1.47kWh

容量そのものを大きく増やしたのではなく、New U-GOは同程度のエネルギー量を72V系へ移し、制御、出力、回生、通信機能を更新している。

その後に日本へ来たICON e:は、再び48V・約30Ah、床下電池、インホイールモーターという構成だ。

日本仕様ICON e:の商品ページには回生機能の記載がない。ホンダはコンビブレーキを説明する一方、ブレーキ作動時はモーター出力を停止するとだけ記している。

ホンダ「ICON e: 主な特徴」

https://www.honda.co.jp/ICONe/features01.html

オーナーの実走記でも、スロットルを戻しても速度がほとんど落ちず、エンジンブレーキに相当する減速がないと報告されている。

Photolog「HONDA ICON e: 〜 原付を電動にしました」、2026年6月10日

https://ymgch.exblog.jp/38626705/

New U-GOではEBSエネルギー回収が公式に明記される一方、ICON e:では公式記載も減速挙動も異なる。公開情報からは、ICON e:に回生ブレーキは採用されていないと判断するのが自然だ。

「New U-GOから退化した」とは言い切れない

構成を比較すれば、ICON e:はNew U-GOより初代U-GO側に近い。

これは確認できる。

しかし、「New U-GOから一世代戻した」「新型を退化させた」とまで言い切ると、開発の流れを直線的に考えすぎる。

公開資料には、ICON e:がNew U-GOをベースに機能を削って作られた、という説明はない。

確認できるのは、中国国内向けU-GOがNew U-GOへ進化する一方で、ICON e:はU-GO/EM1 e:系の開発モデルを使い、中国で普及している48V部品を組み合わせた、という別の流れだ。

2026年の日本発表会で三ツ川氏は、低価格化について次のように説明している。

Car Watch「ホンダ、BEV原付バイク『アイコン イー』発表会」、2026年2月19日

https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/2087380.html

「中国市場においてたくさん使われている48Vの電動車部品」

これを選別して使い、さらにアジア向け製品と仕様を共通化することで価格を下げたという。

つまりICON e:は、最新のNew U-GOを日本向けに後退させたというより、U-GO系の既存車体資産と、量産効果のある48V部品を使って作った別枝の廉価モデルと見る方が正確だ。

低コスト化は、ICON e:登場前からホンダの公式目標だった

ICON e:の構成を単独の商品判断として見ると、なぜMobile Power Pack e:を使わず、48Vのプラグイン充電式へ戻ったのかが見えにくい。

しかしホンダは、ICON e:発表の約10カ月前に方向性を公表していた。

ホンダ「2023 Honda 電動二輪事業説明会 説明概要」、2023年11月29日

https://global.honda/jp/news/2023/c231129b.html

ホンダが掲げた基準は、漠然とした「現行EV」ではない。

「2030年には、現在の交換式バッテリー仕様の電動二輪車より、50%の削減を目指します」

完成車コスト半減の手段として、最初に挙げられたのが「プラグイン充電式のバッテリーの採用」だった。ほかにもバッテリーセルの最適化、共通モジュールによる調達、生産効率の向上、専用工場が挙げられている。

ICON e:はHonda Mobile Power Pack e:を採用せず、中国市場で普及する48V部品と、アジア向けに共通化した仕様を使った。これは2023年に示された低コスト化方針と整合する。

ただし、ホンダはICON e:を「50%削減を達成した車両」とは説明していない。目標の基準となる交換式バッテリー車の具体的な車種、完成車コストの金額、ICON e:での削減率も公表されていない。

したがって確認できるのは、ICON e:の設計方針がホンダの電動二輪戦略に沿っていることまでだ。ICON e:の原価がEM1 e:より50%安い、と読むことはできない。

日本の記事は、なぜU-GOまで戻らなかったのか

2024年の国内発表記事は、ほぼ一様にホンダのニュースリリースに沿っている。

Car Watch、2024年10月18日

https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1632522.html

WEBヤングマシン、2024年10月17日

https://young-machine.com/2024/10/17/586204/

バイクのニュース、2024年10月13日

https://bike-news.jp/post/389732

Response.、2024年10月10日

https://response.jp/article/2024/10/10/387155.html

説明されるのは、

・ICON e:はEM1 e:ベース
・バッテリーを含む主要電動部品を変更
・中国で普及する三元系リチウムイオン電池を採用

までだ。

2026年の日本発表会記事は、さらに一歩進んで、

・中国で普及する48V部品を活用
・アジア向け製品と仕様を共通化
・数量を増やして低価格化

まで説明した。

それでもU-GOの名前は出なかった。

U-GO→EM1 e:はHonda Storiesで公開されていた。EM1 e:→ICON e:もホンダのニュースリリースに書かれていた。海外では開発責任者自身がU-GOモデルの活用を話していた。

情報が隠されていたわけではない。

しかし、国内記事はそれぞれの発表を単独で処理し、過去の資料までつなぎ直さなかった。

国沢光宏氏の「22万円」評価は、三カ月で反転した

日本の自動車メディアでICON e:の価格を早い段階から批判的に見たのは、国沢光宏氏だった。

ただし、その評価も最初から一貫していたわけではない。

2026年2月19日――「日本市場なら100点」

国沢光宏「ホンダ電動2輪原付、32万円から22万円に大幅ダウン!」

https://kunisawa.net/car/car_latest-information/%E3%83%9B%E3%83%B3%E3%83%80%E9%9B%BB%E5%8B%952%E8%BC%AA%E5%8E%9F%E4%BB%98%E3%80%8132%E4%B8%87%E5%86%86%E3%81%8B%E3%82%8922%E4%B8%87%E5%86%86%E3%81%AB%E5%A4%A7%E5%B9%85%E3%83%80%E3%82%A6%E3%83%B3/

タイトルは「日本市場なら100点」。本文でも、

「日本市場だと22万円で十分勝負になる」

と評価している。

一方で、MPPを「大失敗」とし、ICON e:がMPPを断念したことを肯定。三元系ではなくLFPを採用すべきだったとも批判している。

重要なのは、この時点ですでに、ベトナムではICON e:が値引き込み約15万円と把握していたことだ。

海外価格を知らずに22万円を絶賛したわけではない。

2026年5月24日――「とりたてて安くない」

国沢光宏「ホンダ、ベトナムで生き残りを賭けたHV戦争を開始!」

https://kunisawa.net/car/car_latest-information/%E3%83%9B%E3%83%B3%E3%83%80%E3%80%81%E3%83%99%E3%83%88%E3%83%8A%E3%83%A0%E3%81%A7%E7%94%9F%E3%81%8D%E6%AE%8B%E3%82%8A%E3%82%92%E8%B3%AD%E3%81%91%E3%81%9Fhy%E6%88%A6%E4%BA%89%E3%81%AA%E3%82%89%E3%81%AC/

三カ月後、評価は変わる。

「日本の22万円、とりたてて安い価格設定ではなく」

ベトナムでの当初価格15万7千円から、12万1千円、さらに9万7千円へ値下げされた状況を踏まえ、日本価格なら十分に利益が出ると論じている。

2026年6月2日――15万7千円では「全く売れず」

国沢光宏「ホンダ、主戦場となるベトナムの2輪販売で勝負に!」

https://kunisawa.net/car/car_latest-information/%E3%83%9B%E3%83%B3%E3%83%80%E3%80%81%E4%B8%BB%E6%88%A6%E5%A0%B4%E3%81%A8%E3%81%AA%E3%82%8B%E3%83%99%E3%83%88%E3%83%8A%E3%83%A0%E3%81%AE2%E8%BC%AA%E8%B2%A9%E5%A3%B2%E3%81%A7%E5%8B%9D%E8%B2%A0%E3%81%AB/

さらに6月の記事では、ベトナムで15万7千円では「全く売れず」、実質8万1千円まで下げたと説明している。

2月と5月の記事を比べれば、国沢氏の日本価格への評価が反転したことは明らかだ。

変化のきっかけを本人は説明していない。

ただ、2月時点でもベトナムの約15万円という価格は知っていた。その後に加わったのは、15万7千円では市場に受け入れられず、短期間で大幅値下げされたという販売実績だ。

つまり、カタログ上の22万円を日本市場だけで評価した段階では「100点」。ベトナム市場で実際の価値が9万円前後まで引き下げられる過程を見た後は、「とりたてて安くない」へ変わった。

国沢氏もU-GOとの系譜には触れていない。しかし、ICON e:の価格を「日本だけの22万円」ではなく、海外市場での実売価値から見直した希少な例ではある。

「焼き直し」は、どこまで言えるのか

最後に表現を整理する。

確認できる事実

・ホンダはEM1 e:をU-GOベースと明言している。
・ホンダはICON e:をEM1 e:ベースと明言している。
・ICON e:開発責任者は、中国に既存のU-GO開発モデルを活用したと説明している。
・ホンダは2023年、現在の交換式バッテリー仕様車に対して、2030年に完成車コストを50%削減する目標を公表している。
・その手段として、プラグイン充電式バッテリー、セル最適化、共通モジュール、生産効率化などを挙げている。
・初代U-GOとICON e:は、車格、軸距、48V・約30Ah、床下電池、充電方式、インホイールモーターなどが近い。
・New U-GOは72V化され、EBSエネルギー回収、スマートキー、通信機能を採用している。
・日本語でICON e:とU-GOを直接つないだ記事は、少なくとも1本存在する。

資料から合理的に導ける考察

・ICON e:はU-GO→EM1 e:の系譜に属する。
・技術構成はNew U-GOより初代U-GO側に近い。
・U-GO系の車体パッケージと、中国で量産される48V部品を組み合わせ、インドネシア、ベトナム、日本などへ展開する廉価モデルとして再構成したと考えるのが自然である。
・MPP非採用と48V普及部品への転換は、ホンダが2023年に示した2030年に向けた完成車コスト削減の方向性と整合する。
・低価格化では、新技術の投入より、既存資産、普及部品、地域共通化による量産効果が優先された。

現時点では断定できないこと

・フレーム、モーター、セル、BMS、PCUが初代U-GOと同じ部品番号であること。
・ICON e:がNew U-GOを直接ベースに、意図的に一世代戻して作られたこと。
・ICON e:単体で、ホンダが目標とする50%の完成車コスト削減を達成したこと。
・48V化や回生非採用が、初代U-GOの同一部品を再使用するためだったこと。
・ICON e:が、外装だけを変更した単純なバッジ替えであること。

ホンダ公式は、ICON e:について「バッテリーを含む主要電動部品を変更」「エクステリアを一新」と説明している。

そのため「U-GOの焼き直し」を、何も変えずに再発売したという意味で使うのは不正確だ。

一方、系譜、車体寸法、48V構成、ホンダ開発責任者の発言を合わせれば、次の表現は公開資料から十分に成立する。

ICON e:は突然生まれた廉価EVではない。中国で開発されたU-GO系の車体と48Vアーキテクチャを、アジア各国向けに再構成した派生車である。

日本発売時に語られたのは、81kmの航続距離、26Lの収納、22万円という価格だった。

語られなかったのは、その車体がどこから来たのか。そして中国では、その先のNew U-GOがすでに72V、回生、通信機能へ進んでいたことだ。

ICON e:を新型と呼ぶこと自体は間違いではない。

ただ、その「新しさ」が何なのかは、U-GOからの系譜を見なければ判断できない。

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主要資料

ホンダ/五羊-本田一次資料

Honda Stories「交換式バッテリーで走る『EM1 e:』の魅力とは」
https://global.honda/jp/stories/070.html

ホンダ「CUV e:/ICON e:をインドネシアで発表」
https://global.honda/jp/news/2024/2241009.html

ホンダ「ICON e:を発売」
https://global.honda/jp/news/2026/2260219-icone.html

ホンダ「2023 Honda 電動二輪事業説明会 説明概要」
https://global.honda/jp/news/2023/c231129b.html

ホンダ ICON e:製品・諸元
https://www.honda.co.jp/ICONe/

Honda香港・澳門 初代U-GO諸元
https://www.honda-hk.com/product/u-go

五羊-本田 初代U-GO発表
https://www.wuyang-honda.com/home/xwzx/zxzx/detail-14249.shtml

五羊-本田 New U-GO発表
https://www.wuyang-honda.com/home/xwzx/zxzx/detail-16603.shtml

五羊-本田 New U-GO製品・諸元
https://www.wuyang-honda.com/home/cpzs/ddj/detail-1372.shtml

日本語記事

LAWRENCE、宮﨑健太郎、2024年10月9日
https://lrnc.cc/_ct/17726156

Car Watch、椿山和雄、2026年2月19日
https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/2087380.html

国沢光宏、2026年2月19日
https://kunisawa.net/car/car_latest-information/%E3%83%9B%E3%83%B3%E3%83%80%E9%9B%BB%E5%8B%952%E8%BC%AA%E5%8E%9F%E4%BB%98%E3%80%8132%E4%B8%87%E5%86%86%E3%81%8B%E3%82%8922%E4%B8%87%E5%86%86%E3%81%AB%E5%A4%A7%E5%B9%85%E3%83%80%E3%82%A6%E3%83%B3/

国沢光宏、2026年5月24日
https://kunisawa.net/car/car_latest-information/%E3%83%9B%E3%83%B3%E3%83%80%E3%80%81%E3%83%99%E3%83%88%E3%83%8A%E3%83%A0%E3%81%A7%E7%94%9F%E3%81%8D%E6%AE%8B%E3%82%8A%E3%82%92%E8%B3%AD%E3%81%91%E3%81%9Fhy%E6%88%A6%E4%BA%89%E3%81%AA%E3%82%89%E3%81%AC/

国沢光宏、2026年6月2日
https://kunisawa.net/car/car_latest-information/%E3%83%9B%E3%83%B3%E3%83%80%E3%80%81%E4%B8%BB%E6%88%A6%E5%A0%B4%E3%81%A8%E3%81%AA%E3%82%8B%E3%83%99%E3%83%88%E3%83%8A%E3%83%A0%E3%81%AE2%E8%BC%AA%E8%B2%A9%E5%A3%B2%E3%81%A7%E5%8B%9D%E8%B2%A0%E3%81%AB/

海外のホンダ関係者発言

detikOto、2024年10月10日
https://oto.detik.com/motor-listrik/d-7581881/honda-icon-e-dan-cuv-e-dirakit-di-indonesia-berapa-kandungan-lokalnya

Uzone、2024年10月14日
https://uzone.id/dirakit-di-indonesia-berapa-tkdn-honda-icon-e-dan-cuv-e-

Otorider、2024年10月15日
https://otorider.com/motor-listrik/2024/ternyata-baterai-motor-listrik-honda-belum-diproduksi-lokal-tercjhhdkal

主な検索語

「ICON e U-GO」「ICON e UGO」「ICON e: U-GO」「アイコンe U-GO」「アイコンe UGO」「EM1 e U-GO」「EM1 e: U-GO」「ICON e U-GO ベース」「ICON e U-GO 派生」「ICON e U-GO 焼き直し」「ICON e U-GO 系譜」「ICON e 中国Honda」「ICON e 48V 部品」「ICON e EM1 e ベース」「ICON e New U-GO」「ニューU-GO ICON e」「宮﨑健太郎 ICON e」「国沢光宏 ICON e」および、同趣旨の英語・インドネシア語・中国語表記を組み合わせて検索した。

※本稿は2026年9月4日時点で公開されているウェブ資料を基にした。削除済みページ、紙媒体、会員限定記事、検索エンジン未収録ページまで含めた不存在を証明するものではない。

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