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アルバイトの話

 おれが働いているのは都内の高級イタリアン……
なんてことはなく、実際は駅近くの、頑張ったらどこの街にも1つは存在していそうなスカしたイタリアンだ。

 そこで大学1年生の頃からバイトをしていて、かれこれ3年目になる。当時のおれは上京したばかりで、高校もバイト禁止だったものだから初めてのアルバイト探しに明け暮れていた。何故だかバイトの面接に落ち続け 5戦0勝5敗という驚異の戦績を叩き出し、ヤケクソになって駅までの通り道にあった飲食店のバイト募集の張り紙の電話番号に電話をかけた。

 そこで拾ってもらったのが今のイタリアンというわけだ。価格帯が高いおかげか客層がよく、ミスをしても理不尽に怒られることはない。当たりのバイト先だ。とすら思った。あと賄いも出る。

 ところが、1年もすると不満は出てくる。まずは勤怠が15分おきにしか打てない。これは立派な労働基準法違反である。おれが大学卒業とともにこのバ先を辞めるとき、ついでに告発してやろうと思っていた(なお、今は改善されている)。

 そして店長。別にテメーは嫌いである。これは悪口だが、自分に優しく他人に厳しい。人に教える態度も気に食わない。
「この料理の仕込みでは○○をします。なぜでしょう?」
問題形式で答えさせるのをやめてほしい。分かるはずのないことなんだから、最初から結論だけ教えてくれ。こっちに「間違える」というステップを踏ませないでほしい。

 そして自分のことを、「きちんとアルバイトのことを考えれる店長」だと思っていそうなところも鼻についた。おれはテメーに心を許したことはないからだ。

 そんな店長が辞めるらしい。実際、おれを拾ってくれたのは店長だし、骨折したときには色々優しくしてもらったし、感謝はしている。最後くらいちゃんと送り出すのが礼儀だと思って、送別会という名の深夜焼肉→カラオケのfuckin' partyにも顔を出した。

 今年の4〜6月は、バイト先を辞めてやろうかと強烈に思っていた時期だった。店長とバイト先の環境への不満が大爆発した形だった。営業おわりに一回店長に今までの不満を全て出し切るために話し合いを持ちかけようかと思っていた。営業終わりに、「不満があるのでやめます」と言うつもりだった。これは結局、人に怒る勇気もなくてやめてしまったけど。

 今はそんなことないけど、なんでおれはそんなに怒っていたんだろう?冷静になった瞬間があった。

 バイトを辞めたいということを伝えることで、自分の不満を伝えたかった。脅迫じみた行動で、情けない。店長への態度が冷たかったのも、「あなたはおれを理解していない」ということを伝えたかったんだ。つまり、おれという人間を理解してほしい。それを言いたかった。

 結局、どこかでおれが勇気を出して話せば済む話だったのかもしれない。今までの不満も、自分の性格のことも伝えていたら、少しは働きやすかったのかもしれないし、冷たい態度を取ることもなかったかもしれない。

 店長は人と関わるのを楽しそうにしていて、接客にもそれが如実に表れていたと思う。反対におれは誰彼構わず人と関わるのはキライだ。店長は、おれに「もっとお客さんに話しかけたらいいんだよ、お客さんの居心地にも、オーダーにも繋がるし」ということをよく言っていたが、納得できなかった。おれは、カフェやレストランに行って店員が話しかけてきたら嫌だからだ。

 だからあまりお客さんに自分から話しかけるということをしてこなかった。それが店の営業方針だったにも関わらず、2日に1回話しかければいい方だった。それはおれが話しかけることに対して気まずさを覚えていたのもあったけれど、1番は店長に「あなたの言っていることには反対です。おれは話しかけられるのが嫌だから。」と、態度で伝えたかっただけだったんだと思う。

 口で言えずに態度で、それも店にとってマイナスの態度で示そうとするだなんて、ダサいことこの上ない。もうちょっと言葉で人とぶつかり合ってみるべきだな、と思った。

 店長は別に今でも好きではない。交わることはない人種だと思っている。なんなら、バイトを辞めなかったのは店長が辞めると聞いて「それなら環境が変わるかもしれないならまだ耐えるか」と思ったからである。まぁ、ただもうちょっと人に意見を伝えてみる勇気を持つか、ということを思っただけの話。

 なお、サムネイルの写真はバ先とは全く関係のない店のパスタ。イタリアンっぽかったので。

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