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『跳躍の向こう側』 第5話 ズレた一秒


神奈川・臨海の廃工場ロケ。
今日のシーンは
高所からの落下スタント。
高さ約6メートル。
下にはエアマット。
ワイヤーなし。
自分の判断だけで落ちる。
セット
鉄骨の足場。
錆びた手すり。
作り物だが、見た目は本物。
風が強い。
助監督が言う。
「今日は風、少しあるな」
スタントコーディネーター佐伯が空を見上げる。
「…やる。タイミング調整でいける」
今日の役
高柳麻耶、23歳。
敵に追い詰められ、
足場から落ちる役。
シンプルな動き。
だが――
落ち方ひとつで怪我をする。
段取り確認
・踏み出す位置
・体の角度
・着地姿勢
すべて確認済み。
危険ではない。
…はずだった。
本番前
風が一瞬、止む。
麻耶は深呼吸する。
浜松の海。
遠州の強い風。
あの風とは違う。
ここは
人工の現場の風。
カウント
「本番いきます!」
「3…」
足場の上。
「2…」
下のマットを確認。
「1!」
踏み出す――
その瞬間。
風が吹いた。
ほんの一瞬。
ほんの数十センチ。
体が流れる。
空中
「まずい」
頭では分かる。
だがもう戻れない。
姿勢を変える。
回転を入れる。
肩から落ちるか、背中か――
選ぶ時間はない。
着地
ドンッ!
鈍い衝撃。
マットが沈む。
一瞬、音が消える。
静寂
「カット!!」
誰かが叫ぶ。
スタッフが走る。
佐伯が一番に来る。
「麻耶!」
数秒後
麻耶は目を開ける。
息はある。
動ける。
「…大丈夫です」
声が出る。
現場
空気が変わっている。
誰も軽口を叩かない。
佐伯が静かに言う。
「今日はここまで」
判断は早かった。
医務室
簡易テント。
打撲。
軽い捻挫。
大事には至らない。
だが――
“紙一重”だった。
帰り際
若手スタッフがつぶやく。
「今の…危なかったですよね」
佐伯は答えない。
ただ一言。
「これが現場だ」

アパートのベッド。
体が重い。
スマホを見る。
母からのメッセージ。
「無事?」
麻耶は少し時間を置いてから打つ。
「うん、無事」
独り言
「ズレたのは、一秒もない」
でもその一秒で、
終わることもある。
女性スタントマン。
華やかに見える仕事。
その裏側は――
紙一重の積み重ね。
続く。
【フィクションの断り書き】
本作はフィクションであり、登場人物・団体・出来事などはすべて架空のものです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。
©ChatGPT & 宇都宮幸宏

#遠州
#浜松

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