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『跳躍の向こう側』第7話 大きな仕事



六月の終わり。
都内のアクションクラブ事務所。
高柳麻耶は呼び出されていた。
珍しく、佐伯の表情が硬い。
「麻耶。」
「はい。」
「仕事が入った。」
机の上に置かれた資料。
大型配信作品。
海外配信も予定されているアクション映画だった。
予算も規模も、これまで経験した作品とは桁が違う。
麻耶は思わず資料を見返した。
「私ですか?」
佐伯はうなずく。
「主演女優のメインダブル。」
麻耶は言葉を失った。
代役ではない。
モブでもない。
物語の最初から最後まで。
主演女優のアクションを支える仕事。
スタントマンとして、一つの到達点だった。
撮影は一か月後。
監督は海外作品にも参加経験がある人物。
求めるレベルは高い。
格闘。
階段落ち。
ワイヤー。
走り込み。
すべてをこなせなければならない。
麻耶は資料を閉じた。
「やります。」
即答だった。
佐伯は珍しく笑った。
「そう言うと思った。」
翌日から訓練が始まる。
朝。
ランニング。
昼。
ワイヤーワーク。
夕方。
受け身。
夜。
筋力トレーニング。
休憩時間。
神谷がスポーツドリンクを渡した。
「ついに来たわね。」
「正直、怖いです。」
「みんな怖いのよ。」
神谷は笑う。
「でもね。」
「?」
「選ばれたってことは、できるって思われたってこと。」
麻耶は黙ってうなずいた。
夜。
アパート。
窓の外には東京の灯り。
スマートフォンが鳴る。
母からだった。
「元気?」
「うん。」
「今度、大きな仕事が決まった。」
少し沈黙。
そして母は言った。
「浜松から応援してるよ。」
麻耶は微笑んだ。
「ありがとう。」
通話を終える。
壁には、初めて現場でもらった記念写真。
割れる窓。
舞う砂埃。
爆破。
落馬。
痛み。
怖さ。
全部が今につながっている。
麻耶は静かにつぶやいた。
「もう少し、やってみよう。」
東京の夜は静かだった。
しかし彼女の心は、新しい現場へ向かって動き始めていた。
【フィクションの断り書き】
本作はフィクションであり、登場人物・団体・出来事などはすべて架空のものです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。
©ChatGPT & 宇都宮幸宏

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