ブームより“地味に強い”本が勝つ? 「ITエンジニア本大賞」13年分データで見る“推される技術書”の特徴
みなさん、こんにちは。のりあき(@v_avenger)です。
1月15日に第13回「ITエンジニア本大賞 2026」のベスト10(技術書部門は得票同数のため11冊)が発表されました。
なんと!技術書部門ベスト10の一冊に…
拙著『実践サイバーセキュリティ入門講座 現場に残された痕跡からハッカーの攻撃を暴け』(ISBN:4815634254)が選出されました。

㊗️ベスト10入り㊗️
数ある本の中から投票してくださった皆さんのおかげです。心より感謝いたします🙇
13年間の受賞本、意外な真実が…
ここで少し気になる話題を。
【ITエンジニア本大賞】は、「この1年を振り返っておすすめしたい書籍」を選ぶイベントで、11月から12月にかけて1か月間のWeb投票を経て発表されました。
ITエンジニア本大賞 2026の各部門ベスト10が選出!
— ITエンジニア本大賞 (@ITbookaward) January 15, 2026
技術書部門とビジネス書部門で、皆さんからの投票が多かった10冊が選ばれました。
(技術書部門は得票同数のため11冊)
2月19日のプレゼン大会に進出できるのは、各部門の上位3冊。
大賞決定まで、あと1か月と少しです!https://t.co/Qelbk5ktN4
「ベスト10入りして嬉しい!」と浮かれてXを眺めていたところ、ふと目を引く投稿が――
ITエンジニア本大賞の技術書部門ベスト10でプログラミング言語を扱った本が一冊も入ってないのは初めてでは? pic.twitter.com/yicsKuEj60
— miso_taku (@miso_taku0221) January 20, 2026
確かに、2026年選出作にはプログラミング言語を主とした本がありません。そもそも、第1回(2014年)から第13回(2026年)までどんな本が選ばれてきたのでしょうか?
よき機会と思い、これまでのTOP10(技術部門)をすべて調査してみました。
データはNotionにてデータベース形式で、まとめています。本稿が、次に読む技術書を選ぶ際の参考になれば幸いです。

言語本は強いのか!?意外な空白年
調査の結果、言語本が選出されなかったのは実は2026年だけではありませんでした。
言語本が入っていない年は 2014年・2021年・2026年 の3回。
言語別では、Python(9冊)が最多、ついでSQL(5冊)という結果でした。
広く支持される商業出版とは
投票で支持されている技術書のジャンルを分析すると、[開発技法](39冊)、[入門書](25冊)、[機械学習・人工知能](19冊)が上位に位置しています。
なかでも開発技法に関しては、教養・キャリア・思考法・設計といったテーマが注目を集めており、入賞後もロングセラーとして読まれ続けている書籍が多く見られます。
一方で、入門書については、トレンド・即戦力のテーマに注目が集まっています。

出版社の寡占
商業出版において版元(出版社)は企画立案から流通・販売、版権管理までを担う中心的な存在です。
編集者との連携で著者の原稿を市場向けに磨き上げ、ベストセラーを生み出す役割も果たします。
読者にとっても、信頼できるブランドとして選書の基準になることが少なくありません。
そこで、「ITエンジニア本大賞」における版元TOP3を調べてみました。
結果は、技術評論社(31冊)、翔泳社(21冊)、SBクリエイティブ(16冊)。この上位3社で、歴代入賞書籍の50%以上を占めていることがわかりました。

訳書 vs 国産オリジナル書籍のバトル
技術書部門では、初期は『リーダブルコード』『小さなチーム、大きな仕事』など翻訳書の存在感が目立っていました。
近年は日本人著者による国産オリジナル本の比率が明確に高まっています。「ITエンジニア本大賞」は投票で選出されるため、"推し本"を応援したいという動きも背景にあるでしょう。
いずれにせよ、母国語で一次情報に基づく良質な知見が得られる現状は、とても喜ばしいことだと感じます。
版違い入賞の怪物本リストをチェック!
13年分のデータを振り返ると、版を重ねながら複数年にわたってTOP10入りを続けている書籍がいくつかみられます。これらの"怪物本"は、いずれもロングセラーでありながら、リファレンス/教科書的な定番書として定着しています。
単なる"バズ本"ではなく、長期的な支持と口コミに支えられた存在で、「手元に置いておきたい一冊」といえるでしょう。
次は、そうした代表的な書籍です。
ITエンジニアのための機械学習理論入門(2016・2017年)
SCRUM BOOT CAMP THE BOOK(2021・2015・2014年)
ゼロから作るDeep Learning―Pythonで学ぶディープラーニングの理論と実装(2021・2019・2017年)
体系的に学ぶ 安全なWebアプリケーションの作り方(2020・2014年)
達人プログラマー(第2版)熟達に向けたあなたの旅(2022・2017・2014年)
ハッキング・ラボのつくりかた 完全版 仮想環境におけるハッカー体験学習(2026・2025・2020年)
マスタリングTCP/IP 入門編 第6版(2021・2017年)
改訂新版 良いコード/悪いコードで学ぶ設計入門(2026・2023年)
新装版 リファクタリング―既存のコードを安全に改善する―(2015・2014年)
※リストは五十音順。カッコ内は入賞年度を示します。原則として最新版を記載。「ゼロから作るDeep Learning」は①・②・③の各巻が入賞。
「ITエンジニア本大賞2026」では、「ハッキング・ラボ」と「良いコード/悪いコード」の2冊が"怪物本"としてランクイン。さらに得票同数により、計11冊が選出されるという異例の結果となりました。
セキュリティ本の「系統」
「ITエンジニア」と一口にいっても、その担当領域や役割はさまざまです。
私自身はサイバーセキュリティ分野で活動しているため、注目するのはやはりその関連書籍になります。
過去の入賞作品を振り返ると、基礎理論/現場よりハンズオン/社会派と、内容のバランスがよく取れていることが分かります。
1つのジャンル内でカバー範囲が拡がるという潮流は、サイバーセキュリティに限らず、書籍全体の傾向としても見られます。
基礎理論
現場よりハンズオン
社会派
株式会社データハウスは、2025年5月末日をもって出版事業を停止しています。このため、「社会派」カテゴリに分類したこれら2冊の入手は困難になると思われます。
#ITBookAward で一緒に語ろう
出版不況が叫ばれていますが、技術を磨く上で書籍は今なお欠かせない媒体の一つです。
2025年は選出外にも多数の良書が出版されました。購入で、好きな技術書を後押ししていきましょう。
2027年、次の伝説はぜひあなたの手で。
商業出版のハードルが高いなら、現場の熱量を技術同人誌に注ぎましょう。
※「技術書典20」のサークル参加受付がすでにはじまっています「〈申込期間〉〜 2月15日(日) 23時59分」
ここから新たなロングセラーが生まれるかもしれません。
私も、あらたな本との出会いを楽しみにしています。
それでは、素敵な読書ライフを。
あらたにビジネス書部門に関する考察記事を投稿しました。本記事と併せてご覧ください。
