「だけ弁当」に物申す
「快楽の不可逆性」は、経験した快楽は二度と同じ形で繰り返すことができず、元に戻せないという性質を指す言葉です。快楽を一度経験してしまうと、その経験が私たちの心身に影響を与え、その快楽を得る前の状態には戻れないことを示唆しています。
インフレの最中、再び低価格弁当に注目が集まっています。
マミーマートのディスカウント業態「マミープラス」の「家計にプラス!」と題した定番商品では、「鶏もも醤油唐揚げ弁当」「メンチカツ弁当」を222円(税抜)でラインアップ。鶏唐揚げ3個とポテトサラダにふりかけがかかったごはん200gという内容です。
マミーマートはどうかわかりませんが、私はふりかけがかかっているごはんの入った弁当には手が出ません。
ふりかけがかかっているのはごはんは銘柄米でしょうか、ブレンド米なのでしょうか。新米でしょうか、古古米、古古米、古古古米でしょうか。それとも国産米でなく輸入米の可能性もあります。
ふりかけをかけるのは食味をごまかすためだと推測されやすいのです。
ベルク(埼玉県)が運営するディスカウントモデル「クルベ」には、199円の弁当シリーズがあります。この価格を実現した明確な工夫の一つが、白米に合わせるおかずが「シュウマイだけ」、または「唐揚げだけ」といった具合に、主菜1品に絞り込んだ商品設計です。これなら原価はもとより、製造の手間も簡略化できそうです。
いずれもおかずの違う弁当3食購入して、夫婦2人で食べるなら満足感があるかもしれませんが、一人で一食食べるなら満足感が得られないばかりか、私には罰ゲームのように感じます。
ライフの「だけ弁当シリーズ」は、白米の上に主菜だけを乗せています。弁当というよりは丼です。価格は398円と結構します。「あじフライだけ弁当」「北海道産あまに豚入りコロッケだけ弁当」といった商品のほか、「ポークフランクだけ弁当」「とろ~りたこ焼きだけ弁当」などをラインナップしています。
いずれも重さも300g~400g前後なので成人男性には物足りないかもしれません。
主菜一品のみ弁当は、いわば「一食完結」をめざさない割り切った商品です。これは都心型スーパーマーケットだからこそ可能なものかもしれません。足りない量や栄養素は、同じ店頭にあるほかの商品で補ってもらえば済むからです。
私はこれは危険な思想だと思います。売価を抑えるために、量目を減らす、おかずの品目を減らす、古古米、古古古米をふりかけやおかずを乗せることで食味を誤魔化す…。お客は一瞬でお店に不信感を持つのです。中には冷凍食品のアウトレット商品であるアジフライや唐揚げ、シウマイ、ミニハンバーグ、小切れ塩鯖を使用している例もあります。
あらゆる食材が高騰しています。だからこそ、美味しさとボリュームにこだわるのです。
「究極の海苔べん」が人気です。「海苔弁当」といえば、ハウスマヌカン御用達で、40年前、ほっかほっか亭などの路面弁当店での人気でした。ほかほかのごはんに一口サイズの焼海苔2枚、白身魚フライ、ちくわの磯辺揚げ、桜大根が盛り付けられ確か180円ぐらいでした。私も学生時代、アルバイト代をもらった日は50円プラスして「明太海苔べん」をオーダーしていました。
「究極の海苔べん」は、これとは全く異なり、海苔は2段、おかかの上に海苔を乗せ、刷毛じょうゆをぬったものにメインのおかずに加え、自家製玉子焼き、ちくわ磯辺揚げ、桜大根、キンピラゴボウを盛付けています。銀鱈西京漬け、プレミアム銀鮭塩焼など20種類以上ラインナップしている店もあります。価格帯は599円から999円です。和牛牛めしのせ1,280円までラインナップしている店もあります。
半年後、「だけ弁当」が生き残るのか、「究極の海苔べん」が支持されるのか。いずれにせよ、お客は選択肢が多い方が良いと思います。
