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(掌編)祭りのあと 【シロクマ文芸部】

 夜店から漂ってくる香ばしいソースや、綿菓子の甘い匂いが、蒸し暑い夏の熱気と混ざり合って境内に満ちていた。

 まだ遊び足りない息子の手を引いて、僕は家路につく。少しずつ夜店がまばらになっていく参道を抜け、門を曲がるたびに祭りの熱気は薄れていく。代わりに、公園の草むらで鳴くコオロギやアスファルトに転がるセミの死骸が現実の生活に引き戻す。

 涼しげな甚平姿の息子の手には、ヨーヨー。僕の手にはカラフルな袋に詰まった綿菓子。

 マンションのロビーに入ると、ガラスの向こうの熱気が嘘のように、冷えた空気が僕たちを包んだ。

 エレベーターに乗り込むと、息子が七階のボタンと閉じるを続けざまに押す。

 扉が閉まると、かすかに響いていた祭りばやしも聴こえなくなった。

 ふわりとした重力の気配を残して、エレベーターが止まった。

「楽しかったか?」

「うん!」

 晴れやかな顔をした息子と手を取り合い、僕たちは「ただいまー」と玄関の扉を開けた。

(了)



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