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辞める勇気と、続ける覚悟。私は後者を選んだ

今回は、僕が「本気で会社を辞めようとしていた頃」の話を、正直に綴ってみたいと思います。

あのときの僕は、毎朝オフィスに向かうのが本当に苦しかった。
もう無理だ、辞めよう——そう思っていたあの日々のことを、今なら少しだけ冷静に語れそうな気がします。


「辞表は、引き出しの中にある」

僕は営業職としてこの会社に入って10年目。
任される仕事も増えて、後輩の指導にもあたるようになった。
一見、順調そうに見えるけど——実際は、空回りの連続だった。

取引先との信頼関係がうまく築けず、売上目標は未達が続き、上司の目も次第に厳しくなっていった。

ある日、立て続けに2件のクレーム対応が重なった。
一方は新規案件で導入トラブル、もう一方は既存顧客からの「担当が変わってから不満が多い」という声。

その週、僕はほとんど家に帰れなかった。
家に戻っても、娘の寝顔を見るだけ。
妻からの「最近、大丈夫?」という小さな声すら、耳に痛かった。

金曜の夜、クレーム処理の報告書を持って帰社したとき、上司に言われた言葉は今でも忘れられない。

「これだけ時間かかってこのレベル?
お前さ、なんで毎回“言い訳”ばっかりなんだよ」

——言い訳じゃない。ちゃんとやってる。
そう言いたかった。でも、もう言葉が出てこなかった。

その日、終電の中で泣いた。マスクで隠しながら、小さく肩を震わせて。

帰宅してすぐ、パソコンを開いて「退職届」と打った。
翌朝、誰にも言わずに印刷して、出社前にスーツのポケットに入れた。


辞めることも、立派な勇気だと思った

その週末、ひとりで喫茶店に入った。
妻には「会社の資料整理してくる」と嘘をついて。
ノートに、自分の気持ちを箇条書きにしてみた。

  • 今の部署に限界を感じている

  • 評価されていないと感じる

  • 家族との時間がどんどん減っている

  • こんな働き方、あと5年も10年も続けられない

スマホで転職エージェントに登録しようかと画面を開いたとき、ふと画面に映った自分の顔がすごく疲れて見えた。

「これが、やりたかった働き方か?」

そう自問して、またため息が出た。

その時は、「辞める勇気」を持つことが、自分にとっての前進だと本気で思っていた。


転機は、思いがけない言葉だった

週明け、ふとした偶然で社内の先輩とエレベーターで二人きりになった。

その人は総務部のKさん。どこか無骨で、いつも一人でランチをとっているイメージの人だった。
僕が「お疲れさまです」と軽く会釈したその直後、Kさんがぼそっと言った。

「お前、最近…ちょっと顔が怖いぞ。大丈夫か?」

一瞬、何のことか分からなかった。

でもKさんは、続けてこう言った。

「辞めるって決める前にさ、ひとつだけ覚えておけ。
“逃げる”のと“退く”のは違う。でも、続けるってのも結構、覚悟いるぞ。」

……なぜか、その言葉が胸の奥にストンと落ちた。

Kさんはそれ以上何も言わずに、先に降りていったけれど、僕はそのとき初めて思った。

「辞めなくてもいいのかもしれない」


続けるって、覚悟なんだと思った

その夜、妻に初めて打ち明けた。

「正直、今の仕事がきつくて、辞めようかって何度も考えてた」

すると、妻は驚いたように言った。

「……それ、もっと早く言ってよ。
私、ずっと我慢してるのかと思ってた。
でも…あなたが悩んでるなら、私も一緒に悩ませてよ」

……その言葉に、涙がこぼれた。

ずっと、自分ひとりで抱え込んでいた。
家族を守るために、何も言わずに頑張るのが正しいと思っていた。
でも、違った。家族は「味方」だった。

それからは少しずつ、家でも素直に弱音を吐けるようになった。
娘との時間も、ほんの少し意識して取るようにした。
寝かしつけの前に絵本を読むと、毎晩「パパ今日もがんばったね」と言ってくれる。

それだけで、救われた。


あの時、辞めなくて本当によかった

数ヶ月後、異動の話が来た。

新しい部署は、最初のうちは右も左も分からず大変だったけれど、気づけば前よりもやりがいを感じていた。
そして、初めて「ありがとう」と言ってくれる後輩に出会えた。
「先輩みたいになりたいです」と言われたとき、胸の奥がジンと熱くなった。

——あの時、もし辞めていたら、この出会いはなかった。
今では、心からそう思っている。


最後に:一歩踏み出せたのは、"誰か"がいてくれたから

人生には、辞める勇気も、続ける覚悟も、両方が必要です。
どちらかが正解、なんて誰にも決められない。

でも、僕はあの日、**「支えてくれる人の存在」**に気づいたことで、もう一度踏みとどまれた。
そして今日も、同じ会社のデスクに座っている。

だから、今まさに悩んでいる誰かに、こう伝えたい。

「大丈夫。あなただけじゃない。
迷っていい。揺れていい。
でも、信じてほしい。
今日の選択が、未来の自分を支えてくれる日が、きっと来るから。」


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