🌱なおはる note 第543話 ケニチさんの旅をなぞる妄想旅
これは、実際に僕が旅に出た話ではない。
ケニチさんの動画を見て、頭の中で追体験した
空想の旅である。
僕には5匹の猫がいる。だから現実には、
何日も家を空けて旅に出ることは簡単ではない。
それでも、もし信頼できる友人に猫たちを
預けることができるなら、こんな旅をして
みたいなと思う動画を見つけた。
ケニチさんのYouTube動画の多くは、
大阪のあちこちにある魅力的な居酒屋を巡り、
美味しい酒や料理を楽しむものだ。
数ある動画の中で、僕が
「もし自分が旅に出るなら」と思ったのは、
青春18きっぷで大阪から東京まで向かう、
各駅停車のはしご酒の旅だった。
有名な観光地巡りを目的とせず、
その土地その土地で美味しいものを食べ、
美味しい酒を飲む。
そして、また電車に揺られて次の町へ向かう。
そんな旅に、僕は魅力を感じた。
青春18切符の旅だから、どこででも
途中下車できる。
猫たちを友人に預け、僕もこの動画の行程を
なぞる旅に出発だ。
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1日目 大阪から浜松へ
午前7時40分、大阪駅。
新梅田食道街「塩屋」の暖簾をくぐる。
生ビール中に、お造り、小鉢、揚げ物まで
ついた「よりみちセット」が1,300円。
まずは生ビールを一杯。30分ほどで店を出る。
8時40分、新快速に乗る。車内販売はないから、
乗る前にホームの売店で柿の葉寿司と、
缶のアサヒスーパードライを2本、
鞄に入れておいた。
窓の外を淀川が流れていく。プシュ、
と缶を開ける音が、静かな車内に小さく響く。
9時07分、京都。駅前ビル4階
の「天空の立ち呑み とさか」。
獺祭や田酒、飛騨誉といった日本酒の札が
ずらりと並ぶ。名物のコロッケが130円、
串揚げも1本160円から。
大瓶ビールとコロッケ、〆て1,300円ほど。
じんわり顔が赤くなる。
30分ほどで腰を上げる。
10時15分、在来線で東へ。大垣へ向かう車内で、
窓に映る自分の顔が少し赤らんでいることに
気づく。
もっとも、家で晩酌をすれば一升瓶を軽く
空けてしまう身からすると、大瓶ビール一本
など序の口だ。座席にもたれているうちに、
頬の熱もすっと引いていく。
11時00分、大垣。駅前のパン屋で、
生クリームとイチゴのサンドを一つ。
甘いもので、酔いの合間に一息つく。
20分ほどで、また駅へ。
11時50分、岐阜。「菊」でマグロの刺身。
刺身が330円、冷たい日本酒が380円、
お通しに110円。
合わせても1,000円に満たない。
ぬる燗ではなく、あえて冷やのまま、
ちびりとやる。一合ほどでは、
酔いを感じることもない。
30分ほどで店を出る。
移動中、窓の外を眺めているうちに、
酔いはまたすっかり冷める。
13時20分、名古屋。立ち飲み屋で
味噌串カツを4本、生ビールを一杯。
35分ほどで席を立つ。
軽く顔が赤らむが一杯分の酔いでしかない。
まだ日は高い。こんな時間にホテルに入るには、
あまりにもったいない。
もう少し、進めるところまで進んでみる。
14時25分、名古屋発。ボックス席で足を
伸ばして少し、うとうと。
15時40分、豊橋。駅構内の「壺屋」で、
稲荷寿司とビール。もう腹はかなり満たされて
いるのだが、旅の勢いでもう一杯。
25分ほどで切り上げる。
16時20分、豊橋発。
17時10分、高塚駅。「炭焼きレストラン さわやか」で、名物のげんこつハンバーグ。
わさびを添えて、というのが定番らしい。
ちなみにケニチさんは、このわさびの添え方が
尋常ではない。
動画の中の彼は、わさびをどっさりと乗せて、
目を白黒させながら
「うまーい」とやる。あの食べっぷりは、
もう一種の才能だと思う。
わさびの味しかしないんじゃないのかと、
いつも心配する。
僕はというと、そこまでの勇気はない。
ハンバーグの端にほんの少し、味変程度に
添える。しかも、かならず醤油とか、
ハンバーグであれば、
ソースに溶かし込んでから使う。
それでも十分にツンとくる。
プレミアムモルツを一杯。焼き上がりを待つ分、
40分ほどの滞在になる。
18時20分、高塚駅発。
18時40分、浜松着。駅からホテルまで歩いて
15分ほど。
18時55分、浜松駅前のビジネスホテルに
チェックイン。
夜の7時、部屋に荷物を運び込んだところで、
今日はもう十分に歩いて、十分に飲んだ。
シャワーを浴びて、部屋着に着替える。
19時30分頃、小腹が空いてきたので、
1階の自動販売機で缶チューハイを一本。
買っておいたコンビニのつまみと一緒に、
ベッドに腰掛けてゆっくりやる。これも、
旅先での「もう一杯」のいつもの儀式だ。
21時頃、眠りに落ちる。
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2日目 浜松から静岡、三島、熱海、
そして横浜、川崎、赤羽へ
朝8時、ホテルをチェックアウト。
8時25分、浜松駅発。
9時20分、静岡。
静岡といえばわさび。調べてみると、
静岡はわさび栽培発祥の地だという。
だからケニチさんが静岡でわさびに夢中なのは
よくわかる。動画の中の彼は、丼一杯の白飯に、
すりおろしたてのわさびをこれでもかと乗せて、
気にする様子もなく頬張っていた。
けれど、僕にはそんな食べ方はできない。
わさび丼というメニュー自体、相当な、
わさび好きのための一皿であって、僕のような
小心者向けではないと思う。
だから僕が頼むのは、刺身の盛り合わせ。
刺身に添えられた本わさびを、醤油にちょんと
溶かして、静かにいただく。
それで充分鼻にぬける。30分ほどで店を出る。
10時20分、静岡発。
11時20分、三島。「源氏」で三島コロッケを
つまみに、生ビールのついたちょい飲みセット。
コロッケにわさびを添える?
そんな食べ方無理。
ケニチさんの動画で初めて見た食べ方だった。
彼はここでも遠慮がない。たっぷりと乗せて、
一口で頬張る。
僕はコロッケの端にほんの少し。
目視では見えないが、ルーペなら見える
ぐらいのサイズ、それでも十分ツンとくる。
ケニチさんの舌なのか鼻なのかは、一体
どうなっているのだろう。生ビールで喉を潤す。
30分ほどで切り上げる。
12時20分、三島発。
13時10分、熱海。商店街を少し歩いて、
「小沢の湯」へ。温泉卵を自分で茹でながら、
海の方を眺めて1時間20分ほどぼんやり過ごす。
ここは飲まずに、酔いを一段階抜く。
目的地へ早く着くことだけが旅ではない。
途中の町で立ち止まり、その場所の空気を味わう。それもまた旅の楽しみだ。
15時00分、熱海発。
16時20分、石川町。中華街の「崎陽軒 シウマイBAR」で、タケノコをつまみにシウマイとビール。30分ほどで店を出る。
17時前。体力も、酔いも、問題ない。
だったらこのまま、京浜東北線でもうひと駆けて、東京の下町まで足を伸ばしてみる。
17時20分、石川町発。
17時55分、川崎。川崎駅前の立ち飲みホルモン店「おさやん」。串焼きスタイルの牛ホルモンを、
一本ずつ炙ってくれる。塩でシンプルに数本、
ビールを2杯ほど。
大阪の景気のいい賑やかさに対して、
川崎はもう少し無骨で、仕事帰りの人が黙々と
一杯やっている感じ。40分ほど腰を据える。
19時05分、川崎発。
19時35分、赤羽。ちょうど夜の飲み時、
駅前はすでに賑わっている。「立ち飲みいこい」か、「丸健水産」あたりの暖簾をくぐる。
煮込みと、日本酒を一合。せんべろ価格で、
庶民的などんちゃん騒ぎの空気が心地いい。
35分ほどで一軒目を切り上げる。
大阪の立ち飲み、川崎のホルモン、
そして赤羽のせんべろ。
一気に三種類の飲み方を渡り歩いた。
もう少し飲みたい気もして、近くの二軒目に
はしごする。煮込みをもう一皿、日本酒を二合。
40分ほど、じっくり味わう。
21時10分、腰を上げる。旅の最後の一杯
として、ちょうどいい店だった。
21時20分、赤羽駅前のホテルにチェックイン。
夜の9時過ぎ、二日間、飲んで食べて歩き通した
体は、もうかなり満ち足りている。
それでも、部屋に入って荷物を下ろすと、
やっぱり1階の自動販売機に足が向いてしまう。
習慣というのは恐ろしい。これだけ飲んだ後でも、缶ビールを一本買わずにはいられない。
ただし、今日はさすがに全部は飲み切れなかった。半分ほど口をつけたところで、気づけば横に
なっていた。
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3日目 赤羽から大阪へ、在来線で
翌朝、ホテルをチェックアウトする。
青春18きっぷは、2024年冬からルールが
変わっています。今は「連続3日間用」か
「連続5日間用」しか売っていない。
1日単位でバラバラに使うことはできない。
この旅では「連続3日間用」を1枚買った。
だから、帰りも新幹線ではなく、在来線で帰る。
赤羽で二晩目、しかも二軒はしごまでしたのは、
この3日目があったからだ。
もし3日間きっぷでなければ、あそこまで飲まず、
さっさと切り上げて新幹線で帰っていた。
昨夜の酒がまだ少し残っているような、
心地よい気だるさの中、朝早くの各駅停車に
乗り込む。帰りは寄り道をしない。
ただ黙々と乗り継ぐ。
乗り換えの時間にホームで時折、缶ビールを
調達。車内で、その缶ビールを開ける。
プシュ、という音とともに、三日間の旅が
静かに終わっていく。
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面白いのは、旅の途中の、酔って、冷ましての
繰り返しだ。一杯ごとに顔が赤らんでも、
電車に揺られて一時間も経てば元に戻る。
満腹になっても、また腹が減る。その繰り返し。
「なおはる版・ケニチさんの旅」楽しかった。
こんな空想ができるのも、ケニチさんの動画の
おかげだ。彼の旅を見ながら、一駅一駅、
自分の身に置き換えて思い描いてみた。
いつか本当に、猫たちを友人に託して、
こんな旅に出られたら、きっと楽しい。
けれど今は、こうして目を閉じて、
まだ行ったことのない駅や町を想像する。
それも十分に楽しい時間だった。
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※この文章は、YouTubeチャンネル「ケニチ kenichi」さんの動画『大阪→東京はしご酒
【青春18きっぷ】2024年』から着想を得て、
「僕もこんな旅がしたいな」という形で書いた
空想の旅です。
また、動画公開から既に2年が経っています。
電車の時刻表や運行状況、店舗の営業内容などは
変わっている可能性があります。
そのため、この記事では、動画の行程や雰囲気を
参考にするに留め、現実の時刻や乗り継ぎなどの
詳細を一つ一つ確認し、完全に再現したものでは
ありません。その点ご了承ください。
