第8話 経営者に向いている人、向いていない人

「自分は経営者に向いているのだろうか」

これから会社を始めようとする人や、すでに事業を始めた人の多くが、一度はこの疑問を持ちます。

リーダーシップが必要なのか。
話が上手くなければいけないのか。
お金に強くなければいけないのか。
人付き合いが得意でなければいけないのか。

結論から言えば、経営者に向いている人には、特別な性格や才能があるわけではありません。

反対に、今の時点で苦手なことがあるからといって、経営者に向いていないと決まるわけでもありません。

経営者に向いているかどうかは、生まれ持った性格よりも、考え方や行動の習慣によって大きく決まります。

今回は、経営者に向いている人の特徴と、注意が必要な考え方についてお話しします。


1. 経営者に向いている人は「決められる人」

経営者の仕事は、毎日が判断の連続です。

どの仕事を受けるのか。
誰を採用するのか。
車両を買うのか。
取引条件を見直すのか。
社員のミスにどう対応するのか。

すべての判断に、正解が用意されているわけではありません。

情報が不十分な状態でも、期限までに決めなければならないことがあります。

もちろん、慎重に考えることは大切です。
しかし、いつまでも決断できないと、機会を失ったり、問題を大きくしたりします。

経営者に向いている人は、完璧な答えを待つのではなく、

  • 今ある情報で考える

  • 必要な人に相談する

  • 期限を決める

  • 決めたあとに修正する

という行動ができます。

最初から正しい判断をすることよりも、間違いに気づいたときに修正できることのほうが重要です。


2. 経営者に向いている人は「学び続けられる人」

経営を始めると、これまで経験したことのない問題が次々に起きます。

税金、労務、契約、資金繰り、採用、営業、事故対応。
自分が現場の仕事に詳しくても、経営に必要な知識をすべて持っている人はほとんどいません。

だからこそ、分からないことをそのままにしない姿勢が必要です。

分からないことが出てきたときに、

「自分には無理だ」
「誰かが何とかしてくれる」
「今まで通りで大丈夫だろう」

と考える人は、経営上のリスクを抱えやすくなります。

一方で、経営者に向いている人は、

  • 本を読む

  • 専門家に相談する

  • 他社の事例を調べる

  • 経験者の話を聞く

  • 失敗から原因を考える

といった行動を続けます。

経営者に必要なのは、最初から何でも知っていることではありません。

知らないことを認め、必要な知識を身につける素直さです。


3. 経営者に向いている人は「数字から逃げない人」

経営において、数字は会社の状態を表す重要な情報です。

売上が増えているか。
利益が残っているか。
資金は足りているか。
借入を返済できるか。
人件費が適正か。
どの仕事が儲かっているか。

数字を見ることが苦手でも、経営者になることはできます。

しかし、数字を見ることから逃げると、会社の問題に気づくのが遅れてしまいます。

「売上があるから大丈夫」
「忙しいから儲かっている」
「口座にお金があるから問題ない」

このような感覚だけの判断は危険です。

売上が増えていても、経費や人件費がそれ以上に増えていれば利益は減ります。

利益が出ていても、入金より支払いが先であれば、資金が不足することがあります。

数字が得意である必要はありません。
毎月確認する項目を決め、分からない数字があれば専門家に聞けばよいのです。

大切なのは、会社の現実を数字で確認する姿勢です。


4. 経営者に向いている人は「人の話を聞ける人」

経営者になると、指示を出す場面が増えます。

しかし、会社を成長させるためには、指示する力だけでなく、話を聞く力も必要です。

社員が何に困っているのか。
なぜミスが起きたのか。
仕事を続けるうえで不安なことは何か。
お客様はどのような改善を求めているのか。

これらは、現場の声を聞かなければ分かりません。

経営者が自分の考えだけで判断していると、現場との間に少しずつ距離が生まれます。

社員から意見が出なくなったとき、「問題がない」のではなく、「言っても無駄だと思われている」可能性があります。

話を聞くことは、相手の言うことをすべて受け入れることではありません。

まず事実を確認し、相手の考えを理解したうえで、会社として判断することが大切です。


5. 経営者に向いている人は「嫌われる覚悟がある人」

経営者は、すべての人に好かれることはできません。

会社を守るためには、ときに厳しい判断が必要になります。

  • 利益の出ない仕事を断る

  • ルールを守らない社員を注意する

  • 無理な要求をする取引先と交渉する

  • 赤字の原因を見直す

  • 採用や配置を変更する

  • 会社に合わない人との契約を終了する

このような判断をすると、相手から不満を持たれることがあります。

誰からも嫌われたくないと考えると、必要な注意や交渉ができなくなります。

ただし、威圧的に振る舞うことと、嫌われる覚悟を持つことは違います。

感情的に怒鳴るのではなく、会社のルールや数字、事実に基づいて説明する。
相手を否定するのではなく、改善してほしい行動を具体的に伝える。

経営者に必要なのは、好かれることではありません。

会社と社員を守るために、必要なことを伝えられる責任感です。


6. 向いていない人に共通する考え方

ここまで経営者に向いている人の特徴を紹介しました。

反対に、次のような考え方が強い場合は注意が必要です。

何でも人のせいにする

売上が悪いのは社員のせい。
採用できないのは景気のせい。
資金が足りないのは取引先のせい。

もちろん、自分ではコントロールできない問題もあります。

しかし、経営者がすべての原因を他人や環境のせいにしてしまうと、改善策が見つかりません。

「自分にできることは何か」と考える姿勢が必要です。

目先の売上だけを追いかける

売上が増えると、会社が成長しているように感じます。

しかし、利益が残らない仕事を増やせば、忙しさだけが増えていきます。

売上、利益、資金、社員の負担。
これらを全体で考える必要があります。

約束や期限を軽く考える

経営では、信用が大きな資産になります。

支払いの約束を守る。
社員への説明を後回しにしない。
取引先への返事を放置しない。

小さな約束を守ることが、長期的な信用につながります。

自分だけが頑張ればよいと考える

社長が一番働けば、短期的には会社が回るかもしれません。

しかし、社長一人の頑張りに依存する会社は、社長が倒れた瞬間に止まります。

人に任せる。
教える。
仕組みをつくる。

この考え方に切り替えられるかどうかが重要です。


7. 経営者に向いているかは後から変えられる

「自分は人付き合いが苦手だから、経営者には向いていない」

このように考える人もいます。

しかし、経営者に必要な能力の多くは、後から身につけることができます。

話すことが苦手なら、事前に伝える内容を整理する。
数字が苦手なら、毎月見る項目を限定する。
決断が苦手なら、判断の期限を決める。
人に任せるのが苦手なら、小さな仕事から任せる。

最初から完璧である必要はありません。

重要なのは、自分の弱点を認め、それを補う方法を考えることです。

経営者に向いている人とは、すべてが得意な人ではありません。

自分の苦手な部分から逃げず、必要な仕組みや人の力を借りながら、会社を前に進められる人です。


ここから先の有料パートでは

有料パートでは、経営者として自分の適性を判断するための具体的なチェック項目を紹介します。

さらに、

  • 経営者に向いていると思っていた人が失敗する理由

  • 「人が良い社長」が会社を苦しくするケース

  • 決断できない社長が身につけるべき判断方法

  • 社員に好かれることと、信頼されることの違い

  • 経営者に向いていないと感じたときの対処法

  • 自分一人で経営しないために頼るべき人

  • 経営者として成長するための毎日の習慣

について、より具体的に解説します。

経営者に向いているかどうかは、今の性格だけで決まるものではありません。

日々の考え方と行動を変えることで、経営者としての力は少しずつ身につけていくことができます。

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