何を変えたい?だけじゃ足りない。「残したいもの」まで並べると、選択肢が変わる
「今の会社、もう辞めたい」
そう思いながら求人を見ていたのに、
条件のよさそうな会社を見つけた瞬間、
なぜか今の会社のことが気になり始める。
でも、今くらいの給料はもらえるかな。
一緒に働いている人たちは、
嫌いじゃないんだよな。
有休は取りやすいし。
週2回の在宅勤務も、
なくなると結構きついかも。
さっきまで「辞めたい」と思っていたのに、
今度は「辞めない方がいい理由」が
次々に出てくる。
それで求人サイトを閉じる。
でも翌日、また上司の急な指示に振り回されて、
やっぱり転職したい。
となる。
なんかさ、
気持ちが行ったり来たりして、
全然決められない人みたいに見えますよね。
でも、たぶん優柔不断だからではありません。
今の仕事の中に、
変えたいものと、残したいものが
両方あるからです。
会社を丸ごと「嫌な場所」にできたら、
辞める判断はもっと簡単です。
けれど実際には、
そんなにきれいに分かれていない。
上司の仕事の進め方はしんどい。
でも、同僚とは相談しやすい。
今の役割は責任ばかり増えて納得できない。
でも、仕事内容そのものは嫌いじゃない。
この先の昇給は期待できない。
でも、今の生活を守れる収入はある。
転職を考えるとき、
私たちはつい「今の何が嫌か」を集めます。
もちろん、それも必要です。
ただ、変えたいものだけで次を選ぶと、
今は当たり前すぎて見えていないものまで、
一緒に手放すことがあります。
📖転職先を探し始めると、急に今の会社がよく見える
前の記事では、
上司の急な指示に振り回されている人の
話をしました。
この人が変えたいのは、
単に「急な仕事があること」では
ありませんでした。
変更の理由を知らされないこと。
優先順位が変わった影響を、
自分だけが引き受けること。
一日の段取りを、
ほとんど自分で決められないこと。
ここまで分かると、
次の会社では「裁量がある仕事」を
探したくなります。
そこで見つけたのが、
少人数の会社の求人。
一人ひとりの裁量が大きい。
意思決定が早い。
決められた仕事だけではなく、
幅広い業務に挑戦できる。
今より自由に働けそうです。
でも、読み進めると
在宅勤務については書かれていない。
想定年収は今より少し低い。
業務範囲はかなり広く、
相談できる人がいるかも分からない。
そこで手が止まります。
私が欲しいのって、本当に「大きな裁量」なんだっけ。
昨日までは、
裁量がないことが一番の問題に見えていた。
でも、今の職場には、
困ったときに相談できる同僚がいる。
週2回は在宅で働ける。
毎月の収入も大きくは変わらない。
業務の中には、面白いと思える部分もある。
なくなる可能性が出て、
初めて「これ、残したかったんだ」と気づきます。
たぶんこの人が欲しいのは、
何でも一人で決める自由ではありません。
優先順位はチームで共有したうえで、
自分の段取りは自分で決められること。
困ったときに相談できる人がいて、責任を一人で抱えなくていいこと。
だったのかもしれない。
「変えたいもの」だけを見ていたときより、
望む働き方が細かくなりました。
📖残したいものは、「今の会社に残る理由」とは限らない
ここで、
ちょっと混ざりやすいことがあります。
今の会社に残したいものがあるなら、
転職しない方がいいのか。
いや、そうとは限りません。
たとえば、
今の給料は残したい。
今の同僚との関係も失いたくない。
在宅勤務も続けたい。
と思ったとしても、
それだけで「だから残留」が
答えになるわけではありません。
給料は、
同水準以上の会社を探せるかもしれない。
今の同僚とは、転職後も
個人的な関係を続けられるかもしれない。
在宅勤務ができる会社もあります。
残したいものは、
今の会社にしか存在しないとは
限らないんですよね。
ここで見るのは、
この会社を残したいか。
ではなく、
今の仕事や生活の中にある、
どの条件を次にも持っていきたいか。
です。
今いる場所を守るための理由ではなく、
次の選択へ持っていく条件として見る。
そうすると、
「転職したら全部リセットされる」
という感じが少し薄くなります。
📖当たり前すぎるものは、失うまで条件に入らない
転職先へ求める条件を聞かれると、
給料、仕事内容、勤務地あたりは
比較的出てきます。
でも、今の職場で当たり前になっているものは、
わざわざ条件として書きません。
有休を申請するときに、
理由を細かく聞かれない。
お昼休みを一人で過ごしても気まずくない。
体調が悪い日に、予定を調整しやすい。
分からないことを聞いたとき、
嫌な顔をされない。
仕事が終われば、休日まで連絡は来ない。
服装や髪型に細かい決まりがない。
どれも求人票の一番上には載りにくいものです。
でも、なくなると生活の感触がかなり変わる。
今の会社で特別に感謝したことより、
これがなくなったら、地味にしんどいな。
を探す方が、
残したいものは見つかりやすいかもしれません。
「特に不満がないから、どうでもいい」ではなく、
問題なく満たされているから
意識に上がっていないこともあります。
📖「全部残したい」は、欲張りなんだろうか
変えたいものと残したいものを並べると、
こんな気持ちも出てきます。
給料は下げたくない。
人間関係もよくしたい。
残業は減らしたい。
仕事内容は面白くしたい。
在宅勤務も続けたい。
……そんな会社、ある?
うん。
全部が希望どおりの環境は、
簡単には見つからないかもしれません。
ただ、
最初から「欲張りだから」と消す必要も
ありません。
希望として持つことと、
全部を絶対条件にすることは別です。
まずは、
残したいと思っている自分を
そのまま確認する。
そのあとで、
どうしても失いたくないものと、
条件によっては変えてもいいものが見えてきます。
さっきの人なら、
在宅勤務そのものが絶対なのではなく、
通勤で体力を使い切らず、
平日の夜に自分の時間が残ることが
欲しいのかもしれない。
それなら、
在宅勤務が週2回なくても、
通勤時間が短い会社や、
フレックスタイムが使える会社なら
候補になります。
「在宅勤務を残したい」の
奥にあるものが分かると、
条件を守る方法が一つではなくなります。
在宅勤務そのものが好きなら、
そのまま条件にしていいんです。
何でも深い理由へ
言い換えなければならないわけではありません。
📖「残したい」と「変えるのが怖い」は、同じに見えることがある
もう一つ、
ややこしいところがあります。
今の給料を残したい。
慣れた仕事を残したい。
今の人間関係を残したい。
これは本当に自分が望んでいるのか。
それとも、変わるのが怖いだけなのか。
たぶん、
きっぱり二つには分けられません。
生活を守る収入が必要で、
下がるのが怖い。
両方あって自然です。
慣れた仕事の中に得意な部分があり、
手放したくない。
新しい仕事で通用するか不安でもある。
これも両方ある。
「怖いだけだから手放すべき」とは
言えません。
怖さは、
生活や自分を守るための
現実的な反応でもあります。
ただ、
残したい理由を見ていくと、
扱い方は変わります。
今の年収が、
自分の生活に必要だから残したい。
今の年収を失ったら、
自分の価値まで下がる気がするから残したい。
同じ「年収を下げたくない」でも、
少し違います。
前者なら、
必要な手取りや生活費を計算して、
転職先の最低条件にできます。
後者なら、
年収を条件として持ちながら、
「年収が変わること」と
「自分の価値が変わること」が
本当に同じなのかは、別に見てもいい。
残すか手放すかを今すぐ決めなくても、
何を守ろうとしているのかが分かるだけで、
条件に振り回されにくくなります。
📖変えたいものの横に、残したいものを書いてみる
昨日書いた「変えたい場面」を、
もう一度出してみます。
さっきの人なら、こうでした。
変更の理由が共有されず、遅れの責任だけが自分に残る働き方を変えたい。
自分で段取りを組める時間を増やしたい。
この横に、
今の仕事や生活から
持っていきたいものを書き足します。
相談できる同僚がいることは残したい。
一人で集中して資料を作る仕事は残したい。
今の生活を維持できる収入は残したい。
平日の夜に体力が残る働き方は残したい。
並べてみると、
探しているのは「裁量が大きい仕事」
だけではありません。
優先順位と責任を相談できる人がいて、
その中で自分の段取りを決められる仕事。
生活できる収入と、
平日の自分の時間が残る働き方。
ここまで来ると、
次の会社を見るときに
確認したいことが変わります。
異動で叶う可能性があるのか。
今の会社で仕事の受け方を変えられるのか。
転職するなら、どんな会社を探すのか。
副業で別の仕事を試すなら、
本業に何を残すのか。
まだ、
どれを選ぶかは決めなくて大丈夫です。
まずは、
変えたいものと残したいものが、
同じ紙の上にあること。
どちらか一方を、
本当の気持ちではないことにしなくていい。
「今の会社は嫌。
でも、全部が嫌なわけではない」
その半端に見える言葉の方が、
今の状態を正確に表していることがあります。
そして、
その言葉を持ったままなら、
次の選択肢を「今よりよさそう」
という雰囲気だけで選ばずに済みます。
次は、
転職、残る、異動、副業といった選択肢を、
同じ条件で見比べていきます。
転職ことば研究室では、
誰かの正解を借りる前に、
自分の中にある言葉を研究材料にして、
次の一手を決めるための記事を
届けています。
