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【コラム】お金が動くとき、見失うもの――結果至上主義がうまくいかない本当の理由

こんにちは、思考のTAKUMIです。今回は、組織や事業がうまくいかなくなる根本的な原因について、私の実務経験の中で特に印象に残った事例を踏まえつつ、皆さんと一緒に考えてみたいと思います。

■ 商学部で最初に学ぶこと

「売上を上げなければならない」「成果を出さなければならない」と焦るあまり、かえって状況が悪化してしまった経験はないでしょうか。

学生時代、法学部だった私にある先輩が語ってくれた言葉があります。 「商学部で最初に学ぶのは、お金儲けを考えてはいけないということだ。商いの本質は、まず相手に喜んでもらうことにある」
当時はどこかきれいごとのようにも思え、あまりピンときていませんでした。しかし、後に身をもってその言葉の重みを知ることになります。

■ 危機の中で見落とされがちな「本質」

かつて、危機に瀕したある宿泊・飲食施設の再建に関わったときのことです。
様々な環境変化から利用客が激減し、このままでは存続すら危ういという極度のプレッシャーの中、現場の誰もが焦っていました。そうした極限状態の会議で、最初に出てきた議論は「客単価を上げる(値上げする)」というものでした。

しかし、足元を冷静に見つめ直すと、客足が遠のいた根本原因は「価格と提供価値(質)のバランス」の崩れにありました。お客様が不満を抱えている状態で単価だけを上げれば、さらに足が遠のくのは目に見えています。

そこで私は、「原価を利益が出る限界までかけてでも、まずはお客様に心から満足していただく」という方針へ大きく舵を切ることにしました。

「本当にこれでやっていけるのか」という強い不安や慎重論もありましたが、現場を説得し、まずは3ヶ月間この方針を貫きました。すると次第にお客様の反応が変わり、ランチタイムには満席の日が出るまでに回復したのです。「お客様は、こちらの姿勢をしっかりと見てくれている」と確信した瞬間でした。

■ なぜ人は、再び「目先の数字」に戻ってしまうのか

しかし、本当の難しさはその後にありました。 次の季節に向けた新企画の検討が始まると、現場からはまたしても「満席になるのだから、値上げをしてさらに売上を伸ばそう」という声が上がってきたのです。

なぜ人は、一度原点に立ち返って成果が出たにもかかわらず、再び「数字や結果」に目を奪われてしまうのでしょうか。

それは、人間にとって「目先の数字(お金)」が最も目に見えやすく、手っ取り早い安心材料になるからです。 「お客様が本当に喜んでくれているか」という本質的な価値は、数字のように瞬時に可視化することが難しく、追求し続けるには地道な工夫と粘り強さが必要です。先が見えない不安の中にいると、私たちはどうしても、そうした見えにくい努力を続けることよりも、手元の数値を動かすという「わかりやすい即効薬」にすがってしまいたくなるのです。

しかし、この構造を見誤ると再び危機が訪れます。お客様の期待を置き去りにした値上げは必ず見透かされ、やがて客足が遠のき、これまでの努力すら水泡に帰してしまいます。

この経験を通じて、私はひとつの確信を得ました。

「お金(成果)は、価値を提供した『結果』として後からついてくるもの。結果そのものを『目的』にした瞬間、目の前にいる人の姿が見えなくなってしまう」

■ 日常や日々の仕事に引き寄せてみる

これはビジネスの現場だけでなく、私たちの日常や職場での協働にも通じる問いではないでしょうか。
「早く結論を出したい」「評価されたい」「ノルマを達成したい」と焦るあまり、私たちが本来最も大切にすべき「相手(同僚、上司、家族、取引先)の満足や安心」を後回しにしてしまってはいないでしょうか。結果ばかりを追うと、相手の表情や小さな違和感が見えなくなってしまいます。

成果を出そうと焦ったときほど、一度立ち止まって「自分は今、誰にどんな価値を届けようとしているのか」という原点に立ち返る勇気を持ちたいものです。

■ 小さな実践

今日進めている仕事について、メールを一通送る前に、相手の状況を想像してみる。
そして一度手を止め、「これを喜んでくれる相手の顔」を一人思い浮かべてみる。

思考のTAKUMI
本稿は、組織運営、人材育成、仕事および人との関わり方に関する一般的な考察です。特定の組織、人物または事案を扱うものではありません。内容は筆者個人の研究・考察であり、所属組織の公式見解ではありません。

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