御神木の栗の木は、今日も切られない
朝から夫はやる気満々でした。今日は我が家の御神木、栗の木を剪定するというのです。
けれど結局、この木は今日も選定されませんでした。
始まらない剪定
御神木の栗の木を剪定しよう—
そう言って朝から張り切っている夫。
段取り八分と言いながら、
木にハシゴをかけ、
チェーンソーのエンジンも
確認する。
しっかり服も着替えている。
準備は万端。
……のはずだった。
しかし、始めるのは4時間後。
なぜなら、今日は
Shohei Ohtani 選手の試合放送があるから。
試合は見事に勝った。
夫はすっかりいい気分で、
いよいよ始まるのかと思えば—
なんと、つっかけのままハシゴを上っている。
台所の窓から見ていた嫁は思わず叫ぶ。
「何してんの?」
すると夫は、
「いやぁ、どんなふうな感じになってるか、
ちょっと上に上がってみてる」
と返してきた。
「お父さん危ないからさぁ。
せめてしっかりした靴履いてきてよ。
ヘルメットもあったらそのほうがいいし、
木にロープを巻きつけて自分の体と……」
ここで剪定歴5年の嫁は、
さもよく知っているように言う。
すると夫はひと言。
「わかっているよ。うるさいわ。」
でも、何かおかしい。
ハシゴから降りてくる夫の足が、
少しおぼつかないのである。
高いところだからねぇ……
そう思いながら、
昼ご飯のカレーメシを持って
夫の指導をしに外へ出た嫁の脳裏に、
ふと、あの日のことが蘇った。
思い出した、あの日の夫
それはまだ子どもたちが
小さかった頃。
もう今は閉園してしまった
Space World
へ行った時のこと。
もともと絶叫系の乗り物が
嫌いな夫。
それでも子どもに無理やり引っ張られ、
タイタンという
とてつもないジェットコースターに乗ってしまった。
私は長女と2人で見学していた。
ものすごい高さまで上がっていくコースター。
子どもたちは楽しそうに
こちらへ手を振る。
しかし夫には
その余裕が全くない。
頂点に達して、
これから落ちようという瞬間—
「ウォーッ!」
という夫の声が聞こえた。
……ような気がした。
降りてきた子どもたちは
「もう一回行こう」と大はしゃぎ。
けれど夫は
無言のまま首を振った。
そう、
この夫は高所恐怖症なのである。
御神木は今日も無事
我が家の御神木は
かれこれ10メートル近くの高さがある。
その上のほうに登って
チェーンソーで切れというのだから、無理な話である。
木に登ることそのものが
怖いのだから。
カレーメシを口に運びながら、
「もっと右!
左足はそっち!
こうして合わせて!」
と降りる指示をする嫁。
すると夫は、
「うるさい。今日はここまで」
——段取り八分は何だったの?
やる気十分も、
Shohei Ohtani 選手の勝利も、
彼の高所恐怖症には勝てなかった。
この木はやはり御神木として、
これからも我が家に君臨するのであろう。
それでも季節は待ってくれません。
栗の木の剪定問題は、どうやらまだまだ続きそうです。断捨離はこんなところにもあるのです。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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