筍が、ない
熊の出没が、ニュースを賑わせている。悲惨な事件に心が痛む。人間にとっても、熊にとっても。
8代目の夫婦の田舎では、熊もさることながら、他の動物との攻防が繰り広げられている。
毎年春の味覚の楽しみは、筍だ。
先日の義弟一家の帰郷の前にも、
「筍があれば欲しい。米ぬかでアク抜きしたものがいい」
と連絡があったほどだ。
春には我が家には沢山の筍がある、みんなそう思っていた。
山菜は取ってきてからの始末が大変だ。筍一つにしても、美味しいと口に入るまでには、沢山の工程がある。
山に取りに行く
↓
窯を据える
↓
火を起こす
↓
中に米ぬかと筍を入れて煮る
↓
皮を剥く
↓
食べられるように再度味をつけて煮る
こうした完璧な工程を経ないと、美味しい筍の煮物はできない。
我が家では、義父が筍取りに行く。窯を据えて筍をゆがくのは義母。美味しくいただくために、義母に煮てもらう。
つまり夫婦は食べるだけなのだから、偉そうなことは言えない。
毎年、もう十分というほど、
筍の煮物を食べていた。
しまいには、顔に吹き出物が出るほどに。
ところが、今年は少し状況が違った。筍がほとんど食べられないのだ。
近所の方に聞いても、
今年は取れないと言う。
理由は、鹿と猪だ。
例年になく、この動物たちに、筍を悉く食べられているらしい。一歩違いで人間の敗戦。
朝行くと、齧られた後の筍に、蝿がたかっているとも聞いた。
こうなるとどうしても食べたくなるのが我が家の者たち。
ある情報を近所の方が教えてくれた。
それは夕方に筍を取りに行くこと。そうすると日中生えた筍に出会える可能性が高い。日中は鹿や猪が出ないから、食べられていないそうだ。
それを義父に伝えると、
やはり93歳。
「夕方はめんどくさい」と言う。
全く。食べたいだけなのに、筍を。
と言うわけで、今年は近所からお裾分けしていただいた筍を、細々と分け合って食べた。
自分で取りに行けっていうだけの話だけれど。
熊だけでない。あらゆる動物がこの地球の変動で、生態系を変えざるを得なくなってきている。
私たち人間はどうするべきか?
筍を食べたい話から壮大な話へとスライドする。
みなさん、今年は筍を食べられましたか?
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