正解を降りる〜未完成の人生を選ぶということ〜#2無敵の中学生
中学時代、正直に言うと、
人生ちょろいと思っていた。
中三の体育祭
俺はブロック長になった。
どうすればまとまるか、
どう声をかければ盛り上がるか、
感覚でわかっていた。
自信しかなかった。
ブロック長の中で自分が一番イケている。
結果は優勝
みんなが喜んで、俺の名前を呼ぶ。
あの瞬間、体の奥がじわっと熱くなった。
「やっぱりな」って思った。
努力なんてしてない。
ただ、外さない場所に立つのがうまかった。
合唱コンクールの指揮者もやった。
本当はやらなくてもよかった。
でも担任の先生が言っていた。
ピアノ担当の女の子が
「○○君(俺)が指揮者なら弾く」
と言っているらしい。
その瞬間、少しだけ優越感を感じた。
「あ、俺が鍵なんだ」って。
本番
タクトを振る。
クラス全員の視線が、俺に集まる。
静かな支配感。
クセになりそうだった。
求められて、任されて、ちゃんと応える。
それが俺の“強さ”だった。
中学で一番可愛いと言われていた子と付き合った。
いわゆる、学園のマドンナ。
告白して、付き合って、周りがざわつく。
正直めっちゃ気持ちよかった。
別れたあと
彼女のほうから復縁したいと言われた。
「え、マジで?」
嬉しかった。
普通に、ニヤけた。
誰かに自慢したいくらいだった。
ただ単純に、
「俺、イケてるな」と思っていた。
失敗もほとんどなかった。
本気で、
人生ちょろいと思っていた。
家は、賑やかだけど
少し暗いというか、冷たい感じがしていた。
両親は仲がいいとは言えなかった。
兄二人は部活やらなんやらで家にいないことが多かった。
でも当時の俺は、
それを寂しいとは思っていなかった。
ただ、学校の方が楽しかった。
必要とされている場所のほうが、
気持ちよかった。
嫌われる想像なんて、したことがなかった。
だって、
嫌われない立ち位置を選んでいたから。
任される。
求められる。
勝つ。
それが当たり前だった。
でも警察を辞めたあと、
ある人に言われた。
「寂しかったんだね」
そのとき、初めて、
ああ、そうなのかって思った。
自然と泣いていた。
“居場所を自分で作っていただけ”だったんだ。
必要とされる場所に立つ
外さない道を選ぶ
ちゃんと評価される位置にいる
それは“才能”だと思っていた。
でももしかしたら、
居なくならないための工夫だったのかもしれない。
当時の俺は、
そんなこと、まったく気づいていなかった。
