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「適材適所」だけでは、組織はつくれない #98

企業が存続、発展し続けるには、その目的や目標を達成し続ける必要があります。
そのために、限られた経営資源を有効に活用するのがマネジメントです。
経営資源には、ヒト、モノ、カネ、知識、情報などがありますが、なかでも「ヒト」、つまり人材の重要性はますます高まっています。
企業として、人材をどのように組織の成果につなげるべきかは重要な課題となります。

■ 「ヒト」を活かすマネジメント

人は、それぞれ能力も個性も異なります。
得意なことがあれば、不得意なこともあります。
同じ仕事を与えたとしても、誰もが同じ成果を出せるわけではありません。
だからこそ、個々の能力や特性を見極め、組織の目的や目標の達成につなげるマネジメントが必要になります。

私は、マネジメントとは、異なる形をした経営資源を組み合わせ、枠のない大きなパズルを完成させていくようなものだと考えています。
そのなかでも、人材というピースは一つひとつ形が違います。
だからこそ、その特性を理解して組み合わせることが重要であると捉えています。

■ 「適材適所」という考え方

人材配置について、よく使われる言葉に「適材適所」があります。
適材適所とは、その人材の適性や能力を見極め、それに応じて相応しい職務や役割に就かせることです。

つまり、起点は「人」です。
「この人の能力を、どこで活かすか」という考え方となります。

元々は、家を建てる大工の棟梁が木材の性質を見極め、建物の構造に応じて使い分けるという考え方から来ているとされています。
木には、それぞれ異なる性質があります。
だからこそ、その性質に応じて使う場所を変える。
人材も同じで、一人ひとりの能力や特性を見極め、それを活かせる場所に配置する。
これが「適材適所」です。

■ 組織づくりの優先順位

しかし、組織づくりという観点では、「適材適所」を先行させると歪みが生じる懸念があると考えています。

なぜなら、組織には「必要な役割」があるからです。
「この人をどこに置くか」だけではなく、「組織の目的や目標を達成するために、どのような役割が必要なのか」を先に考える必要があります。

そこで私は、組織を起点とする考え方を、あえて「適所適材」と表現したいと思います。
「適材適所」が「人」から始まるのに対して、「適所適材」は「組織」から始まります。

まず、組織に必要な機能や役割を明確にする。
そして、その「所」に相応しい「材」、つまり人材を配置する。
「この人をどこに置こうか」ではなく、「この組織には何が必要で、そのために誰が必要なのか」という発想です。

これは、ジョブ型雇用にも通じる考え方だと思います。

■ 「適材」がいなければ、つくる

では、必要な「所」を定めても、そこに相応しい「材」が社内にいなければどうするのかです。

一つは「育成」です。
現在の能力だけを見て人材を配置するのではなく、これから必要となる能力を明確にし、それを身につけてもらう。
その代表的な考え方の一つがリスキリングです。

また、社内に必要な人材がいなければ、採用によって社外から求めることも必要になります。
しかし、人材不足が深刻化するなかで、必要な人材をいつでも採用できるとは限りません。
だからこそ、採用だけに依存するのではなく、育成によって「適材」をつくることが重要となっています。

■ これからの人事に求められること

従来の人事は、労務や法務、制度運用、マニュアルなど、オペレーション業務を中心とした「守り」の役割として捉えられることが少なくありませんでした。

もちろん、それらは企業経営に欠かせない重要な機能です。
しかし、それだけでは、これからの人事の役割として十分であると考えています。

企業の目的や目標が変われば、必要な仕事も変わります。
仕事が変われば、必要な能力も変わる。
そして、必要な能力が変われば、採用、育成、配置も変えなければなりません。
だからこそ、人事は経営戦略と切り離して考えることができません。

■  「適材適所」から「適所適材」へ

「適材適所」は、人を活かすために欠かせない考え方です。
一方で、組織を機能させるためには、まず必要な「所」を明確にし、そこに相応しい「材」を配置するという視点も必要です。

適材がいなければ、採用する。育成する。
場合によっては、仕事そのものを見直す。
そして配置した後は、その人が能力を最大限に発揮できるようにマネジメントする。

私は、これからの組織づくりには、「適材適所」だけではなく、「適所適材」という視点が必要になる
と考えています。

人を組織に合わせるだけでもない。
組織を人に合わせるだけでもない。

企業の目的や目標を起点に、「所」と「材」の関係をつくり続ける。
人と組織の関係そのものを最適化する。
そこに、これからの戦略的HRM(人的資源管理)の重要な役割があると考えています。

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