書籍は、組織の学びを蓄積する資産 #202
人は、一人で成せることに限界があります。
だからこそ、より大きなことを成そうとするとき、他者と力を合わせ、共同体を築きます。
しかし、人が集まれば、それだけで一人ではできなかったことが実現できるわけではありません。
人数が増えるほど、「何を目指すのか」「なぜ、それをするのか」「どう行動するのか」について、一人ひとりの解釈に違いが生まれるからです。
単なる人の集まりを、成果を生み出す組織にするためには、共通の目的と、それを共有するためのコミュニケーションが必要になります。
■ 組織には「共通言語」が必要
コミュニケーションにおいて重要なのは、自分が伝えたことと、相手が受け取ったことの差を小さくすることです。
その土台になるのが「言語」です。
文章を読み、内容を理解し、自分の言葉で考え、伝える。
これは組織で仕事をするうえでの基本だと思います。
例えば企業であれば、経営理念やMVV(Mission・Vision・Value)を掲げます。
しかし、言葉を掲げるだけでは、全員が同じ意味で理解するとは限りません。
だからこそ、理念を具体的な行動につなげるための「共通理解」が必要になります。
■ 本を「学びの資産」と考える
私は、毎月、数冊の本を読みます。
すぐに読み終える本もあれば、最後まで読み切らない本もあります。
一方で、1ヶ月以上かけて読み込む本もあります。
読む時間以上に、考えたり、書き込んだりする時間を費やすからです。
「これは自分の仕事にどう活かせるか」
「この考え方を自分ならどう応用するか」
そんなことを考えながら、本に直接メモを書き込んでいきます。
だから私は、紙の本にこだわっています。
本の内容だけでなく、自分が書き込んだメモも含めて、何度も読み返したいからです。
以前は理解できなかったことが、経験を積んだ後に読み返すことで理解できることもあります。
私にとって、本は単なる読み物ではありません。
学びを蓄積する「資産」です。
そして、この価値は個人だけでなく、組織にも活用できると考えています。

■ 書籍を「共通の教材」として活用する
会社として新しい取り組みを始める場合、その方向性や理論をまとめたマニュアルや手引書を作ることがあります。
もちろん、自社で作成することも必要でしょう。
しかし、すべてをゼロから作る必要はありません。
世の中には、研究や実践を重ね、多くの人に読まれている理論や方法論が、すでに書籍として存在しています。
であれば、それらを活用し、自社に合わせて応用する方が効率的な場合もあります。
例えば、私は『鬼速PDCA』を社内共有書籍の一つとして活用しています。
重要なのは、「この本に書いてある通りにやる」ことではありません。
同じ本を読み、同じ考え方を材料にして、自分たちの仕事について考えること。
そこに、組織教育としての書籍の価値があります。

■ 一冊の本ですべてを伝える必要はない
ただし、人によって情報を理解しやすい方法は異なります。
文章が得意な人もいれば、数字、図解、映像、実践を通じて理解しやすい人もいます。
これは優劣ではなく、多様性です。
だからこそ、教育も一つの形式に限定する必要はありません。
例えば、マンガ版のビジネス書も有効です。
文章だけではイメージしにくい内容でも、マンガならストーリーや図を通じて理解しやすくなります。
また、図解の多い書籍や、関連するYouTubeなどの動画を組み合わせても良いと思います。
一つのテーマに対して、複数の教材を用意する。
そうすることで、それぞれの人が理解しやすい入り口をつくることができます。
私は、SCMの推進においても、複数の書籍や動画などを組み合わせて活用しています。

■ 本を「読ませる」のではなく、学びを「共有する」
ここで大切なのは、本を配って終わりにしないことです。
書籍を教育ツールとして活用するなら、
読む → 考える → 対話する → 自分の仕事に置き換える → 実践する
という流れをつくることが重要です。
「この本を読んで何を感じたか」
「自分の仕事ならどう活かせるか」
「今のやり方と何が違うか」
こうした対話が生まれれば、一冊の本が組織の共通言語になります。
そして、その対話や実践を通じて、新たな学びが組織に蓄積されていきます。
■ 多様な人が、同じ方向を向くために
組織には、様々な人がいます。
人格も価値観も、得意なことも、情報を理解する方法も違います。
だからといって、全員を同じ型にはめる必要はありません。
むしろ、その違いこそが組織の強みなのだと思います。
必要なのは、多様性をなくすことではなく、多様な人たちが、それぞれの強みを発揮しながら、同じ方向に進める環境をつくることです。
そのためには、共通する目的と価値観が必要です。
そして、それを共有するための共通言語が必要です。
私は、その共通言語をつくり、個人と組織の学びを蓄積していく手段として、書籍には大きな価値があると考えています。
本は、読むためだけのものではないと思います、
人が学び、考え、対話し、組織として成長するための資産なのだと思います。
