なぜ今、BCPとBCMが企業経営の中心に来ているのか #49
企業の本質的な目的は、社会において価値ある事業を継続し続けることにあります。
しかし現代の経営環境は、かつてないほど不確実性が高まっています。
将来の予測は難しく、前提条件は常に変化し続けています。
このような環境において重要になるのが、BCP(事業継続計画)とBCM(事業継続マネジメント)を含むリスクマネジメントの視点です。
■ リスクとは「危機」ではなく「ズレ」である
リスクというと、多くの人は地震や事故のような突発的な危機を想像します。
しかし本質的には、リスクとは
「想定した通りに物事が進まない可能性」と、
それに伴う影響です。
つまりリスクとは「危機そのもの」ではなく、「計画と現実のズレ」に近い概念です。
このズレを放置した結果として、危機が顕在化します。

■ 見えにくいリスクほど企業を蝕む
企業経営において特に厄介なのは、急激に発生するリスクではなく、ゆっくりと進行するリスクです。
代表例がインフレです。
* 原材料費の上昇
* エネルギーコストの増加
* 人件費の上昇
これらは一度に衝撃として現れるのではなく、徐々に収益構造を圧迫していきます。
さらに注意が必要なのがスタグフレーションです。
景気が停滞する一方で物価だけが上昇する状態では、
* 売上は伸びない
* コストだけが増え続ける
という構造的な悪化が起こります。
このようなリスクの特徴は「気づきにくいこと」です。
気づいたときには、すでに経営体力が削られていることも少なくありません。
だからこそ重要なのは、兆しの段階で物事の本質を鋭く見通して、異変を捉えることです。
■ BCPとBCPの本質
BCPの考え方はシンプルです。
「何かが必ず起きること」を前提にすることです。
日本のように自然災害が多い環境では、
* 地震 * 台風 * 豪雨
といった外部要因は避けることができません。
重要なのは「発生後の対応力」ではなく、「発生しても事業を止めない設計が事前にできているか」です。

この考え方は災害だけでなく、経済環境の変化にもそのまま適用されます。
インフレや需要変動もまた、企業活動を揺さぶる外部要因だからです。
BCPが計画であるのに対し、BCMはそれを実行・改善し続ける経営活動です。
BCMが対象とするリスクは広範です。
* 自然災害
* 労働災害・事故
* 感染症
* 設備障害
* サイバー攻撃
* 経済環境の変化 etc.
これらに共通するのは、「事業を止める可能性がある」という点です。
BCMの本質は、「止まることを前提にしながら、止まり方を最小化する設計」にあります。

■ リスクマネジメントは“守り”ではなく“前提条件”である
リスクマネジメントは守りの戦略と捉えられがちですが、実際には違います。
むしろ、攻めの意思決定を成立させるための前提条件です。
例えばインフレ環境下では、
* 価格転嫁の判断
* 付加価値の再設計
* 事業ポートフォリオの見直し
といった意思決定が求められます。
ここで重要なのは、現状維持が安全ではないという点です。
変化しないこと自体がリスクになり得ます。
意思決定の本質は、情報の解釈と行動にあります。
有名なフレームワークに「空・雨・傘」があります。
* 空:事実(例:西の空に雲がある)
* 雨:解釈(雨が降りそうだ)
* 傘:行動(傘を持つ)
BCMにおけるリスク対応も同様です。
重要なのは「事実を見る力」ではなく、
そこから「どう解釈し、どう備えるか」です。
兆しを見逃さないことが、事業継続力そのものになります。

■ BCPとBCMは企業の生存戦略である
リスクは突然やってくるのではなく、必ず兆しから始まります。
BCPはその備えの設計図であり、
BCMはそれを動かし続ける仕組みです。
そしてリスクマネジメントとは、恐れるためのものではありません。
変化の中で挑戦し続けるための技術です。
「備えよ、常に」
この姿勢を持つ企業だけが、不確実な時代においても持続的に価値を生み出し続けることができます。
